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003 アーマーダイバーとオリジンダイバー

「いやー、ルッタ君がいると仕事が捗るなぁ」

「そうですか。そう思ってもらえるなら嬉しいですね」


 ブルーバレットの整備を終えた後、ルッタは他の整備士たちと集まって話をしていた。


(転移のこと聞けなかったけど……ま、別に知ったところでと言うのもあるし、俺の方の事情を教える必要性もないしなぁ)


 異世界転移の疑いのあるコーシローに対してルッタは結局問うことはなかった。聞けば自分の転生のことを話す必要が生じるかもしれないし、あちらの世界のことを聞きたい好奇心はあるが、踏み込むほどの必要性を感じなかった。


(ま、人に過去ありだ。仲間だからって全部知らなきゃいけないわけでもないし)


 ルッタがそう心の中で切り替える。

 なお、現在ルッタがいるのはタイフーン号のアーマーダイバー用ガレージの一角でそこにはイロンデルタイプであるブルーバレット、レッドアラーム、フォーコンタイプのツェットと、奥にはオリジンダイバーのフレーヌが置かれていた。

 そしてルッタたちの話はアーマーダイバーの整備についてだ。基本的にそうしたことについてテオや、テオの友人の老人連中としか話したことがないルッタにとって、それぞれの整備をしている者たちとの会話は新鮮だった。


「いいなぁ。シーリスさんはそういうのは全然だし」

「ジェットの旦那はそうでもないが、自分でやれるとこだけだな。流石に整備はできん」

「そりゃあ普通の乗り手とテオ班長に鍛えられたルッタとを比べるのは難しいわな」


 ブルーバレットの専属整備士であるコーシロー、レッドアラームの専属整備士ラウラ、ツェットの専属整備士にして整備班班長オーエン、それに他の整備班の面々がそんなことを言い合う。


「オーエン班長はテオ爺のこと知ってるんですよね?」

「おうよ。俺の師匠で元整備班の班長だ。だから俺から見ればルッタ坊は弟弟子ってところになるな」


 なるほど……とルッタが頷く。


「テメェらもルッタの整備をよく見とけよ。整備の神様が四年間、鍛え上げた秘蔵っ子だ。俺が見た感じ、その技量はコーシローと変わらねえぞ」

「ちょ、班長。マジっすか!?」


 驚く整備班の面々だが、実際のルッタの実力を見ているコーシローは納得という顔だった。一方でルッタは首を傾げていた。


「そうなんですか? 俺って、他の整備士の人の仕事とかそんなに見たことがなくて。テオ爺にはまだまだだっていっつも言われてるし、テオ爺の知り合いも俺よりも全然上の人ばかりでよく分かんないんすよね」

「そりゃあ比較がテオ班長やその付き合いってんじゃあそう思うわな。あの人、こんな子供にスパルタ過ぎるだろ。今のルッタ坊ならウチで専属を任せてもいいぐらいだぞ」

「俺、一応乗り手なんですけど」


 オーエンの言葉に苦笑しながらルッタがそう返す。


「機体のことを熟知している乗り手は強ぇ。お前の強さはそういうところにもあるのかもな。ま、もうちっと身体は鍛えたほうがいいが」

「ですね。頑張ります」


 ルッタにとってフィジカルは今一番の、早急な改善箇所だ。アーマーダイバー用のダイバースーツさえあればある程度は改善されるだろうが、根本的な解決を図るためには自身を鍛える必要がある。


「ところでオーエン班長。オリジンダイバーの整備士って誰なんです? 俺まだ会ってないと思うんですけど」


 ルッタの視線がリリの愛機であるフレーヌに向けられる。

 流線形のフォルムをした白き機体。それは遺跡より発掘される、アーマーダイバーの原型であるとも言われるオリジンダイバーの一体だ。


(アレに俺が乗れるこたぁ、ないんだろうなぁ)


 アーマーダイバーに乗るには魔術適性という素養が必要だ。平民であるルッタの魔術適性は高くなく、乗れるのは量産機のみ。専用機などの高出力型は扱えないし、オリジンダイバーはそもそも普通の人間では操縦できるものではなく、扱えるリリやラガスが特殊なのだ。そんなことをルッタが考えていると、オーエンが予想もしなかったことを口にした。


「ああ、オリジンダイバーにゃぁ人間の整備士はいねえんだよ」

「人間の……いない?」

「ほれ、あいつだ。今動いてるぞ」


 訝しげな顔をするルッタに対してオーエンが視線をフレーヌへと向ける。

 すると良く見ればカシャカシャと八本の足で動く円盤がいくつも張り付いて何かをしているのに気付いた。それはリリの乗っていたタレットドローンの小型版のようだった。


「なんです、あれ?」

「整備ドローンだ。オリジンはアレを自ら造って整備させるのさ。オリジンダイバーってのはアーマーダイバーとは根本的に違う遺跡兵器だ。修復や整備は全部アレがやるし、パーツも魔力から生成して修理しちまう。究極的にいえばアーマーダイバーの機導核にあたる機神核さえ残ってりゃあそのうち完全再生できるらしい」

「ハァ、そりゃあ凄いですね」


 修復機能付きとは……とルッタが呆れたような顔をする。


「そうだな。整備士いらずってのは気に食わねえが、連中の動きを観察して学べることも少なからずある。アーマーダイバーはオリジンダイバーを元に造られたもんだ。この年になって学べることがまだあるってのはいいことさ」


 そう言ってオーエンが笑った。

 対してルッタは……といえば


(すごいけど、そこまで行くとスーパーロボット系だよなぁ。なんでもありは好きじゃないし俺はリアルロボット系の方が好みだわ)


 などと考えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど確かにスーパー系な機体ですなw パイロットの精神状態に合わせて覚醒とかもしかねないなあ
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