043 無邪気の言葉
「ふぅ、これでひと通りは潰せたかな」
撃つのを止めてカラカラカラと銃身が回転しているガトリングガンを構えつつ、ルッタがそう口にした。
血脈路に突入した突撃部隊を待ち構えていたキリングビーの大群は、その多くをブルーバレットのガトリングガンの餌食となって葬られていた。
その性能にはラインたちも驚きを隠せずにいて、そばにいたイシカワも「やっべー」と口にしている。
『いやー。動いてんの初めて見たが、すごい殲滅力だな。ソレ』
「まあねえ。でも素材がボロボロになるから狩りの時は使い辛いんだよ」
ビッグジョーのアルカンシェルフェザーなどのように飛獣の素材は傷付けると買取額が減額してしまうものは多く、また取り回しの悪さから低ランク相手でもないと効果的に殲滅が難しい武器でもある。狩りとして考えるなら過剰な火力だし、雑魚か的の大きい大物以外では扱い辛いのがガトリングガンの欠点であった。
『それで残弾数はどんぐらいだ?』
「200ってところだね」
その言葉にイシカワが眉をひそめる。
『思ったより残ってんな?』
「うん。最初は密集していたのを崩すのにブッパしたけど、あとは指切り撃ちだよ? そうしないとすぐ弾切れしちゃうし」
『そりゃ、まあ確かにそうだな』
ルッタは地球のガトリングガンがそうであるように、約一秒十連射程度で収まる形で小出しにトリガーを引いての運用を行なっていた。それでも一度に数体は吹き飛ばしているので結果は出ている。大体初手で200発ぶち込んで仕留めたのが約80体、10連射を60回繰り返したとして計300体程度は仕留めているだろう。相手が密集していたからこそ出来た戦果ではあるが、恐るべき殲滅力であった。
(次に同じ規模で来られたら弾切れするなぁ。まあガトリングが使えなくなってもこのメンツならなんとかなるけど)
そう言えるだけの、信頼できるだけの戦力がこの場には揃っている。フレーヌのスペックが落ちていることに関しても、乗っているのがリリである以上、それほど問題ではないとルッタは考えていた。とはいえ、数も度が過ぎれば脅威だ。
「ねえラインさん、この先も今みたいのが繰り返し来ると思う?」
『どうだろうな。数で押すなら小出しにせずに押し切って来るだろうし、アレで打ち止めだろうとは思う……が。うん?』
ラインがそう返しながらも、何かに気付いてスッとシトロニエの盾を前に出した。直後にギンッという金属音と共に盾に当たった何かが弾かれる。
『!?』
『ライン様が撃たれた? まさかアーマーダイバーがいる?』
『いいや、違うぞアベル。こいつらは』
突撃部隊が散開し、血脈路の奥に視線を向けると、ブブブという音と共に人の形に近いシルエットをした何かが複数近づいてくるのが見えた。
「なんだ、こいつらは!?」
それは人の形をしていた。
全長5メートルほどでアーマーダイバーと同サイズだが、アーマーダイバーであれば足首から生えているはずのフライフェザーがなく、代わりに背中から四枚の蟲の翅を生やしていた。また全身には黒と黄色の甲殻を鎧のように纏わせていて、腹部が変形したものであろう図太い砲身が股間部より正面に伸びている。
そして蜂の頭そのものである頭部を見れば、その正体が何なのかは一目瞭然だった。
『まさか、これは『アーマーダイバーを模した』人型の飛じゅ』
「うわ、でっかいチ◼︎チ◼︎付いてる」
『『『『『『!?』』』』』』
緊張感を伴ったラインの説明はルッタの見た印象ままの言葉によって上書きされてしまう。そして無数のチ◼︎チ◼︎ロボが縦横無尽に飛び回り、ルッタたちへとニードルバレットを撃ち放ちながら仕掛けてきたのである。
ルッタくんは純粋な子供だからね。仕方ないね。
腹部は最初、右腕にサイコーなガン風につける予定だったのですが、蜂の構造的に無茶過ぎて諦めました。
外見イメージは先◼︎者ではなく、黄色と黒の重機カラーをしたオービタル◼︎レームっぽい感じだから、普通にカッコいいと思います。コックなピットに当たる部分がちょいデカめだけど。それにメスなんだ、アイツら。