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013 ゴールデンボールクラッシュアウト

 異世界でもコンプライアンスは大切なのだと知ったイシカワはジョークジョークと咄嗟に返したものの時すでに遅く、その場にいる女性全員にドン引きされて警戒されることとなるのであった。

 そしてイシカワは弁明する間も無く話を聞きたいというラニーに連行され、その間に船内の女性陣内に話が伝わっていったことで彼の評価は地の底に落ちていった。南無。


「……ハァ」


 イシカワが連行された後、ルッタはひとり甲板に上がって黄昏ていた。それはイシカワの存在がルッタの中の悪夢のひとつを思い出させていたためである。


(なるほど、そりゃあ『見覚えがある』わけだ)


 ルッタは時折二種類の悪夢を見ることがある。ひとつは暴食竜ドラクルによって両親を失った時の夢だ。最近は見ることもなかったのだが、ジアード天領で再び見たことでドラクルへの荒ぶる気持ちが大きくなっていた。

 もうひとつの悪夢は風見一樹が死んだ大会の夢であった。そしてあのカイゼル石川という男はその大会で一緒に壇上に上がっていた人物でもあったのだ。


(あの時、雷が落ちてナインテイルの像が倒れて、それに巻き込まれて風見一樹は死んだ。コーシローさんもその大会に観客としていたらしいし、イシカワさんは横に並んでいるひとりだった。ふたりは違う時期にこちらに飛ばされたみたいだけどそれが偶然ってあり得るのかな?)


 飛ばされた時期も違うようだし、非常にふんわりとはした共通性だが、何かしらの因果関係を感じずにはいられない。


(まあ(ルッタ・レゾン)にとってはどうでも良い話ではあるんだけれど)


 結局のところ前世の出来事はルッタにとって他人の出来事だ。そこまでの思い入れはなく、結論としてはそうなる。もしかすると同じように大会参加者が転生か転移してきている可能性もあるが、友人と呼べるほどの相手は大会に参加していなかったのでそこまで気にかける者もいなかった。

 そしてルッタがひとり頷いていると後ろから誰かが近づいてくる気配を感じた。


「よお少年」

「イシカワさん。お話は終わったの?」

「ああ、ギア艦長にはリリちゃんに手を出したら死ぬって言われたよ」


 近づいてきたのはラニーに連行されたイシカワであった。どうやらリリに関して警告を受け取ったようだが、正しく警告として伝わっていないように感じたのでルッタは補足をした。


「それは昔リリ姉を襲った相手が殺されこそしなかったものの男としては死んじゃったから……まあ忠告だねえ」

「……男として」

「殺気はなかったから()らなかったらしいけど、急所を自分で出したら潰されるよね」


 イシカワは自分の股間をギュッと掴んで震えた。

 リリは生身であっても戦闘能力は抜きんでており、このタイフーン号内でも最も強力な白兵戦力であった。そして容赦をする性格でもない。ルッタの話の人物は殺意がなかったためにリリも命は取らなかったそうだが、自分を害するモノ自体は的確に処分していたのである。


「うん、気をつけよう。まあ他の話については艦長さんから聞いてくれ。多分この後すぐに連絡がいくと思うしな」

「今伝えられなくて、後で艦長から話がいく……面倒ごとの臭いしかしないね」

「そうだなぁ。かなり厄介な案件ではあるが……」


 そう言ってからイシカワがルッタを見た。


「それにしても子供が竜殺しって噂を聞いてどんな盛られ方してるんだとは思ったが、さっきの青い機体に乗ってたんだろ? 強いな少年」

「どうも。けど、俺って最後にちょちょいと片付けただけだったよね? 強さが分かるほど動きを見せたつもりはなかったけど」

「おいおい。そんなの立ち回りを少し見れば分かるだろう」


 そう言って、イシカワが目を細めてこう口にした。


「俺たちならさ。なあカザミー?」


 カザミー。それはルッタの前世、風見一樹のプレイヤーネームであった。

豆知識:アサルトセルトップ勢の中を近接戦オンリーで戦ってきたカイゼル石川は異常なほどの高い観察眼を有しており、一度戦ったことがある相手ならば即座に見抜くことが可能である。

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― 新着の感想 ―
[一言] 鋭い観察眼のロリコン?お巡りさんヤバイですよ!
[一言] おおー、看破されるとは思ってなかった 眼がいいですねえ
[良い点] ルッタも既視感を得てたし、まあお互い様ってやつか。 でも馬鹿ほど気づきやすいやつかなこれは。
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