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026 竜殺しの参戦

 暴れるガトリングガンの反動を押さえつけながら一点集中でガルダスティングレーの緑雷のシールドを貫いて本体へとダメージを与えたソレが戦場に降り立った。

 竜の戦士の如きフォルムと青と黒のカラーリングをしたその機体の名はブルーバレット。乗っているのは当然ルッタ・レゾンその人である。


「あっぶな。いや、ホントギリギリだったな。機体内の反応見る限りは生存してるはずだけど」


 そう漏らすルッタは水晶眼を通して冷や汗をかいていた。

 飛獣の増援の食い止めをクラン『ラムダッシュ』に任せて領都へと入ったルッタの目に映ったのは、領主のものであろう高出力型の機体が弾丸のようにガルダスティングレーに向かっていったものの返り討ちに遭ってトドメを刺されそうになっている姿だった。

 それを見たルッタが慌てて横槍を入れてガルダスティングレーを止めることには成功したが、後一歩遅ければ領主のものであろう機体は木っ端微塵であっただろう。本当にギリギリの状況だった。


「フゥ。ガトリングガンの残弾はゼロか。ま、頑張ってくれたよ」


 ルッタはそう言いながらガトリングガンとバケツマガジンを機体からパージすると、ガトリングガンを手放したタクティカルアームを操作して腰部に接続していた魔導散弾銃を引き抜いた。

 白と黒の牙剣の二刀流に第三の腕による魔導散弾銃の射撃、それがここに来るまでにルッタが考え抜いて出した新たなブルーバレットの戦闘スタイルの答えであった。


(さて、チェーンソー用の魔鋼砲弾も二発は構築できた。ガトリングガンのおかげでコストに余裕ができたのはやっぱり大きいな)


 重量こそあるものの魔力コストを考える必要がないガトリングガンは、消費魔力の軽減にも大いに役立っていた。ガルダスティングレーに対しては最後の弾が切れるまで撃ち続けたが、基本は指切り約一秒十連射として百回撃っていたようなもので、それで一回一回でフライリザードなら数体は倒せていたのだから撃破率もかなり良く、結果として現在のブルーバレットはほとんど損耗せずにここまで来れている。


(ここまでは順当。領主様も多分無事で万々歳。後は)


 ルッタの視線が、警戒して距離をとっているガルダスティングレーに向けられる。


「こいつを美味しくいただくだけだよなぁ」


 ゾクリと何かを感じたガルダスティングレーが咄嗟に雷撃を放ち、ルッタは天領軍の機体が集まっている場所から離れるように移動しながらソレを避けていく。


「ふーん。命中率は高くないけど、距離が近いだけでもダメージが通るのか。面倒だね」


 避けたはずなのに機体に負荷が発生したことをフィードバックで受け取ったルッタがそう口にする。そしてダメージを喰らわぬ距離を測りながら雷撃を避けつつ、その場にいるアーマーダイバーへと声をかけた。


「こちら、クラン『風の機師団』のルッタ・レゾンです。ハンターギルドからガルダスティングレー討伐と領主護衛の依頼を受けてきましたが、オルベイン様はご無事ですか?」

『ああ、私がオルベインだ。助かったぞルッタ・レゾン。しかし、そなたひとりなのか?』


 オルベインからは感謝の言葉と共に、そんな問いが返ってきた。

 助けられたことは事実だとしても、現実の戦力としては量産機が一機追加されただけなのだからその問いかけはもっともなものであった。とはいえルッタとしてもそれには「はい」としか答えられない。ない袖は振れないのだ。


「俺の仲間は別の飛獣の群れを相手に戦っています。それとハンターギルドが寄越した他の戦力とも先ほど接触しましたが現在はあのガルダの眷属の足止めをしているところです」

『それはつまり増援はそなたのみということ……だな』


 すでに騎士団も半壊している現状、外からさらに飛獣が追加されては確実に騎士団は壊滅する。またルッタが来なければ領主は間違いなく死んでいた。それらは確かだ。

 けれども、それでもたった一機の救援では寿命がわずかに伸びただけでは……と彼らの表情が険しくなるのも無理からぬことだった。


『それではこれ以上は……』


 諦めの声が天領軍内で漏れる。トドメを刺せる可能性があったオルベインの機体がすでに中破し、もはや今度こそ撤退の二文字が頭にちらついたその時、オルベインはルッタの機体を見てあることに気が付いた。


『待て。その方、まさかドラゴンスレイヤーか』


 その言葉に天領軍がざわめく。


「はい。そうですよっと」


 ルッタが雷撃を回避し続けながら言葉を返す。


『そうであれば増援としてはありがたいのですが……それでも一機では』

『ジグマール。あの胸部の竜頭に飾られているのは竜殺金章だ。単独でドラゴンスレイヤーを為したもの。すなわちランクA飛獣を単騎で打倒したものの証だぞ』

『量産機がですか!?』


 ドラゴンスレイヤーの称号は二種類ある。それはクランなどで協力して複数人で討伐したドラゴンスレイヤーと、たったひとりで討伐することに成功したソロドラゴンスレイヤーだ。

 前者は竜殺銀章と呼ばれる銀の勲章を全員が与えられ、後者は銀章よりもひと回り大きい黄金色の勲章が与えられるという。

 それはつまり、竜殺金章を付けたアーマーダイバーはランクAの飛獣を一機で討伐したということであった。


「ご理解いただけて助かります。そういうことなんでこいつは俺ひとりでやらせてもらっていいですかね?」

『やれるというのであれば是非に。ドラゴンスレイヤーの力、見せてもらいたい』

「はい。それじゃあやらせてもらいますよ!」


 そして了承を得たルッタは尾の針と雷撃を避けつつ周囲を飛び回っていたブルーバレットを突如としてガルダスティングレーへと突撃させた。

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― 新着の感想 ―
[一言] たった一人の援軍なのに全く頼りなくないっていう不思議 見る人が見れば分かるもんなんだなあ
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