表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

129/257

014 遥か遠く届かぬ異世界

「へぇ、異邦人って別の世界から来た人たちのことなんだね」


 チェーンソーの組み立てをしながらアマナイと話をしていたルッタだが、ふたりの共通の話題といえば当然コーシローのことであり、アマナイはコーシローの現在を、ルッタはコーシローとアマナイの故郷について尋ね、そこでアマナイが口にしたのがふたりは異邦人……つまりは異世界人であるという内容であった。


(いやー、コーシローさんは十中八九地球の人だとは思ってたけど、異世界人って結構いるんだなぁ)


 異邦人。その存在については以前よりルッタも知ってはいた。ただルッタはそれを言葉通りに遠いところから来た人間だと理解していたのだが、実際には別の世界から来た人間のことを指すのだとルッタはここで知ることとなった。また異世界から人間がこちらに来ることがそれほど珍しいことではないという話もアマナイに聞かされてさらにルッタは驚きをあらわにしていた。


「そうそう。私とジンナイくんはアース2ってところから来たんだけどね。突然ポイってこっちに飛ばされちゃってさー。天導核を通じて排出されるから無人島に飛ばされたりすると大変なんだって。そんでその受け皿のひとつがアキハバラオー最強レアロボ武器商店なんだよねえ」


 つまりはアマナイもジンナイもアース2よりこちらの世界に流されて、このアキハバラオー最強レアロボ武器商店に拾われた……ということらしかった。


「てことは、この店は異世界人の救援組織のようなところってこと?」

「そういう側面もあるけど、それだけってわけじゃないかなぁ。例えば、このチェーンソーの構造も私らアース2の技術だけじゃなくて機械融合体の住むガンズバロウっていう世界の技術も組み込まれてるんだよ。アキハバラオー最強レアロボ武器商店は、他世界の技術や文化なんかを取り入れて発展している商会で、だからそれっぽいのを引き取ってはアイディアを絞り出させてるわけ」


 ルッタが「へぇ」とこぼした。

 前世の記憶があるから地球がどこかに存在しているだろうとはルッタも思ってはいた。けれども地球以外の異世界も存在するとは思ってもみなかった。


(アース2、てことは1もあるってこと? それに機械融合体の世界? もうワケわっかんないや)


 混乱するルッタをアマナイが微笑ましく見ながら苦笑する。


「ま、急にそんな話されてもすぐに理解はできないよね。何でもこの大陸ってのは別世界の人やものが流れやすい構造をしてるらしいんだよね。ただ基本的に一方通行であっちに戻れるわけじゃないんだけど」

「ええと。それはつまり、アマナイさんたちは元の世界には帰れないってこと?」


 ルッタのその問いにアマナイは少し考えてから首を横に振った。


「一応、こことは別の大陸経由からなら次元を越える手段があって、そこから戻ることはできるらしいよ。ただこのアーマン大陸を出ると竜雲海がないからアーマーダイバーも雲海船も使えないし普通の船で海を移動することになるんだけどね。この大陸周辺の海の魔獣は強力で、他大陸ともほとんど流通が途絶してるくらいには海越えは命懸けなんだって。私もどうにか戻れないかって調べたんだけど……相当厳しいんだよねぇ。いや厳しいというか理論上は可能だけど実質無理っていうか」


 そう口にしたアマナイが乾いた笑いを浮かべる。


「今じゃあこっちの暮らしだって悪くはないとは思えてるし、店を任されたこともあって心の整理もついた。だからここに骨を埋めるつもりにはなったんだよ。心残りだった実家への連絡も、手紙を送ったし」

「手紙、送れるの? 異世界に?」


 目を丸くするルッタにアマナイは「うん、送れるんだよねえ」と返す。


「100グラム、100万円相当の超高額便。宇宙に送るコストの十倍の送料って……とんでもない額だったから無事に届けばいいんだけど」


 アマナイがとほほという顔をしてそうボヤいた。ちなみに現代では宇宙に1キログラムの物資を運ぶのに100万円かかると言われている。その様子にルッタも渇いた笑いを浮かべながら地球に戻るということの難しさを感じていた。


(まあ、俺の中に風見一樹の記憶はあるけど、俺は俺だしなぁ。葬式もやっただろうし、今更あっちの母さんたちに手紙ってのもおかしいか。というか死んだ息子からの手紙が届いたってただのホラーだよね)


 ルッタは前世の記憶があっても、己がルッタ・レゾンというこの世界の住人だと自認している。ルッタと風見一樹はイコールではないのだ。そういう点でアマナイやコーシローとは世界に対しての線引きが違っていると言えた。


(ま、あっちに遊びに行けるなら行ってみたい……ぐらいの気持ちはあるんだけどね)


 己の中の風見一樹の記憶にある秋葉原を思い出しながら、ルッタはそんなことを少しだけ考えていた。

 アマナイが手紙を頼んだのはアキレア店経由の配達で、このアーマン大陸から海獣の楽園である大海を越えてお隣のフィロン大陸まで渡り、そこから大陸の内陸部にある次元を貫く超巨大ダンジョンまで長い旅を経て辿り着き、さらにダンジョンの最深部まで攻略することでその先にある某合衆国へと到着。そこからは国際便で日本に送られます。そんな感じで道中が険し過ぎて送料が馬鹿高くなってるわけです。

 送るのが荷物ではなく普通の人間だった場合はまあ海渡ってる途中で大体死にますし、大陸旅してる途中でも野盗や魔獣に襲われて結構死にますし、ダンジョン潜ってる途中でも色々な理由で普通に死にます。そんなほとんど不可能に近い道のりですが、それでも無事たどり着けてしまった化け物は当然某合衆国の監視対象、もしくは監視することも困難な人の枠組みから外れた存在に成り果てているため、どうあれ元の生活に戻るのは難しかったりします。

 他のルートもあるにはありますが、知らないことにはどうしようもないしなぁ……という感じで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まのわの大陸とババアの大陸の間にあるのかな? ダンジョン攻略もだいぶ進んだんですねー
[一言] まのわにいたポッポさんなら高速配送できるんだろうか 人運ぶのは無理だろうけど
[一言] あー、結構オープンな感じなんだなあ異世界人とかの素性 ルッタが前世の記憶持ちって明かしてもそこまで驚かれなさそうですねえ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ