013 ジャイアントキルウェポン
「へぇ。ねえ、これって魔導剣としても使えるの?」
ルッタのその問いにはコーシローだけではなくアマナイも頷いた。
「こちらでも確認はしたけど、ガッチリロックはかかってるから耐久性も問題はないよ。簡易魔力刃発生装置が付いてるから魔導剣としても普通に使えるはず」
アマナイがそこまで言ってから「ただねぇ」と口にした。
「ぶっちゃけ実用性を考慮するならチェーンソーなんてゲテモノ作るよりはこの素材で強力な魔導剣の数を揃えた方が良かったとは思うけどね」
「んー、その強力な魔導剣でワールドイーターをぶった斬れるならそれも考えるけど、そうじゃないからねぇ。特に量産機だとさ」
そのルッタの返しにアマナイが目を見開き、それからコーシローに視線を向けると、対してコーシローも愉快そうな顔をして頷いた。
「そういうことですよセンパイ。倒す獲物を考えた結果として、ウチのドラゴンスレイヤーは現状で考え得るもっとも攻撃力の高い得物をご所望になったのさ」
「なるほどねえ。ジャイアントキルウェポン……だからこんな浪漫設計なのか。完全に理解したよ」
はっきり言えばオーバーキルに過ぎるシロモノだ。普通に考えるなら、この双剣を作った素材で高出力魔導剣が十本以上は造れるだろう。けれども目的がワールドイータークラスを相手にすることを前提にしているのであれば、確かに……とアマナイも納得した。
「じゃいあんときる?」
「大物狙いの化け物武装のことさルッタ。ランクAクランエイブラムの雲海船を改造した機人砲や、鉄人カダモンの爆砕鎚とかがそうだな。先輩、見積もりはこれで問題ないですね」
「大丈夫だよ。じゃあ未来のワールドイーターキラーのために組み立てに入るかな。とは言っても可変機構を組み入れる以外はあらかた出来上がってるからそんなにはかからないだろうけどね」
「ねえアマナイさん。その組み立て、俺も手伝っても良い?」
「手伝うって……ジンナイくん?」
困った顔をしたアマナイの視線にコーシローは「問題ないですよ」と返した。
「そこにいるルッタ少年は整備士でもあるんです。そんで腕は俺と同じかそれ以上だって保証します」
「本当に? いや、だとしてもウチだとこの子を預かっても守ることができないんだけど」
ドラゴンスレイヤーとなった今ではルッタ・レゾンという少年の価値は計り知れない。強引にさらって契約させるなんてことも十分に起こり得る。無論ランクBクラン相手にそんな真似をする馬鹿は普通いないが、それでも馬鹿は侮れない。後先考えずに愚かな選択を行うから馬鹿なのだから。そうした相手からルッタを守る力は自分にはないとアマナイは言うが、コーシローは笑ってルッタの後ろにいるシルフに視線を向けた。
「そこにいるタレットドローンのシルフはオリジンダイバーの武装のひとつで、今回はルッタの護衛をやってます。低ランクのアーマーダイバー相手でもそれなりに立ち回れますよ」
その言葉の通り、シルフはアーマーダイバー相手であっても独力で対抗できるほどの性能を有している。
そんなコーシローの説明にアマナイは驚きつつも、であればとルッタの手伝いを了承した。アマナイはアマナイでコーシローと同等の技量だというルッタの腕前には興味があったし、ルッタとしてもこれまでの既製品の兵器ではないチェーンソーを今後扱う事を踏まえて内部構造や整備の手順についても早々に覚えておきたかったので許可が降りたことにホッと安堵の息をついていた。
「それじゃあジンナイくんはどうする。君も一緒にやってくかい?」
「悪いけどパスでお願いします。僕は僕でブルーバレット、ルッタの愛機の整備と改修があるんですよ。なので今日のところは戻らせてもらいます」
「改修?」
「ええ、まあ改修って言ってもこの牙剣とは別の、新しい装備用のもんですけどね。パーツもちょうど売ってたし、とっとと組み上げたくて」
ブルーバレットの改修。それは遺跡で手に入れたガトリングガンを機体に組み入れるためのものだ。
突如として手に入ったあの武器をより効率的に運用すべくコーシローはルッタと相談をして、ブルーバレットの構成を少し変更してガトリングガンを組み込むことになっていた。
そして、それが双剣と組み合わさる事でブルーバレットの新しいスタイルが生まれることになるのだが、そのことにルッタが気づくにはまだ少しばかりの時間を必要としていた。