011 アキハバラオー最強レアロボ武器商店
「なんか……変わったお店……だねぇ」
ルッタの記憶の中にある秋葉原でもここまで露骨なアキハバーラな感じの店の記憶はなかった。それは世代や時代の問題だったりもする。
「ここは僕の同郷がやっている商会でね。昔は僕もこの系列店に勤めていて、そこから風の機師団にスカウトされた口なんだ」
「へえ、そうなんだ」
異世界転移者って隠す気どころか、普通に溶け込んでるんだなーとここで知ったルッタであった。そしてルッタがコーシローと一緒に店の中に入ると様々な武器が壁に並べられていた。中でも目を引くのがギザギザした巨大な鉄板のようなものだった。
「???」
それを見たルッタが首を傾げる横で「様式美でね」とコーシローが言う。
「そいつはドラゴンおろしって言うんだ。故郷でもこれが飾ってあって、まあこの系列の店には必ず置かれてるもんなんだよ」
「アレが……」
それはおろし金と言うにはあまりにも巨大過ぎた……でおなじみのヤツだ。桜島大根をすり下ろせるほどの大きさと重さ・耐久力とOROSHITIKARAを持たせて造り上げたものであり、ドラゴンの名前が冠されている理由は行方不明であった。今後明かされることもないだろう。
ちなみにルッタがジャッキーに貰って今も腰に下げているガンソードもそういうのがお好きなんでしょうとばかりに何本も飾られていた。
そうしてルッタとコーシローが店の中に飾られている武器をボーッと眺めていると奥から人の気配がして、ルッタがそちらに視線を向けると眼鏡をかけた二十代後半と見られる女性が扉を開けて入ってきたのが見えた。
「やあ、いらっしゃい。と、そっちの人はもしかして同郷の……おやジンナイくんじゃないか」
「え、アマナイ先輩?」
コーシローが目を丸くしてアマナイと呼んだ女性を見ていた。どうやらふたりは知り合いのようである。
「コーシローさん、お知り合い?」
「ああ、この天領じゃないがアキレア店(※ アキハバラオー最強レアロボ武器商店の略称)の店員だったことがあるって言っただろ。そんでこの人は俺の先輩だった人なんだよ。それにしても先輩、お店持ったんですね」
「ははは、まあね。君は確かハンタークランに拾われたとは聞いてたけど……もしかして朝の依頼の風の機師団って君のところかい?」
アマナイの言葉にコーシローが「そうです」と強く頷いた。
「それでそっちは……その、お子さん?」
「そんな年じゃないですよ僕は」
コーシローが苦笑いをしながらそう返す。
そもそもコーシローが店を離れて風の機師団に入った時期を考えれば、ルッタほどの子供がいるはずもないのだからそれはアマナイの冗談である。
それにアマナイにはルッタの正体に心当たりがあった。それはこの片田舎の天領にも届くほどの偉業を達成した幼い戦士の噂だ。
「なるほど。最年少のドラゴンスレイヤー。私のお客さんは君かいルッタ・レゾンくん?」
「はい、そうです。ここでチェーンソーを組み上げてくれると聞きまして、直接お願いに来ました」
ルッタがにこやかな笑顔でそう返す。
アキハバラオー最強レアロボ武器商店、通称アキレア店。それは独自の技術を売りにアーマーダイバーなどの強化パーツや改造を請け負う店であった。
そして昨日のジアード天領に着いてからすぐにコーシローはアキレア店がこの天領にあることの確認をとり、一旦はパーツを送って見積もりをお願いしていたのである。
ちなみにラダーシャ大天領でもコーシローはこのアキレア店か、この店のパーツを取り扱っている代理店を探していたのだが、結局見つからなかったためにチェーンソーはここまで組み上げることができていなかったという経緯がある。
「パーツは届いてますよね?」
「まあね。確認してみたが見積もりも大体一致してるし、気味が悪いくらいに分かってる書き方だったから気になってたんだけど、元従業員が書いたんなら納得さ」
「そいつはどうも」
コーシローが肩をすくめて笑う。
「ま、積もる話もあるが今は仕事だ。明日以降に付き合えるかなジンナイくん?」
「問題ないですね。船も一週間ぐらいは駐留してるみたいですし」
その返事にアマナイがうんうんと頷いて、それから奥から出てきた別の店員に店番を任せると「とりあえず工房に行こうか」と言ってルッタたちを連れて店の奥へと向かい始めたのである。