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015 黒の道

『よし、ここまでは問題ないな。あの瓦礫の裏に入ってくれ』


 ルッタたちはガーディアンとオーガの戦闘があった遺跡入り口から大きく左側を回った先にある崩れた壁の穴を通って遺跡の敷地内へと入っていた。


『ガーディアンたちはキャプチャーとサーチャーのセットで遺跡内を巡回しているんだけど、ここは連中の巡回ルートからは外れてる。ひとまずは安全なはずさ』


 ナッシュがそう言い、一息ついた。


「ナッシュさん、ここは安全ってことはここ以外は違うってことだよね?」


 その言葉に『そうだよ』と返しながら、ナッシュはノーバックの指先を、この場から離れた建物へと向けた。


『特にああいう、灯りの点いた施設は今も稼働中だ。内部には監視用の眼であるサーチャーがかなりの数飛んでいて、入ったらすぐバレるようになってる』

「こんな壁に穴空いて、いつでも侵入出来そうなところなんてもっと監視が厳しくてもいいと思うんだけど」

『あっちの価値基準的には、ここはもう廃棄した場所なのかもね。それに基本的にガーディアンは生きてる施設周辺でないと活動時間に制限があるみたいなんだ』

 

(生きている施設以外では制限が……ワイヤレス給電的なヤツでも動いてるのかな。となれば)


「それで死んでる施設内を移動って話になるわけだ」


 ルッタは作戦前のブリーフィングで、その話をすでに聞いていた。死んでいる施設内であればガーディアンたちの遭遇はほとんどないため、基本的にはその中を移動して中央に向かうのだと。


『そういうことだね。これを見てくれ』


 ナッシュが地図を取り出し、それを水晶眼を通してルッタとリリにも共有する。


『地図、あったんだ』

「共有されてなかったんだけど?」

『この情報だけ取られて放り出されたら僕の五年は無意味になる。ギア団長には説明したし、だから僕が道案内役になったってわけだよ』

「あーそういう。遺跡の全体図? 上空は防空システムが強力って話じゃなかったっけ?」

『だから何度も撃ち落とされてようやくここまで埋めたんだよ』


 それは文字通りの、血と汗と涙の結晶であった。


「遺跡はピザみたいに円形なんだね。地図がところどころ虫食いみたいに黒く塗り潰されてるみたいだけど」

『塗り潰されてるのは明かりがない箇所、つまりは動力が死んでいる施設ってことだ。大体全体の二割ほどある』

「結構多いね」

『老朽化か、天変地異か魔獣の襲来か、ともあれこのノートリア遺跡は現時点でも生きているけど、黒塗りの部分は死んでいて警備も緩い。そこを経由して移動すればガーディアンを無視して移動ができるってわけだ』

「なるほど。でも、その移動もそこまで安全っていうわけじゃないみたいだね」


 ルッタの視線の先にあるのは崩れて穴の空いた施設と、その穴の前で無数に転がっている人型機械の残骸と深獣のものらしき骨の山であった。


「アーマーダイバーの残骸? ちょっと小さい?」

『僕たちが以前に来ていた時にもあったよ。骨は深獣だけど、アーマーダイバー以外も混じってる』

「アーマーダイバー以外?」


 ルッタが首を傾げる。


『サイズがひと回り小さいだろ。アレ、深海層の深海人が使うマキーニって人型兵器だ』

「マキーニ?」


 それはルッタも知らないロボットの名称だった。


『フライフェザーがないから空を飛んだりホバリング走行はできないが、ローラーで高速移動して、飛べない分の魔力を火力に回して深獣に対抗しているんだとか。オリジンダイバーみたいに修復機能もあるらしいけど……僕もあの残骸くらいしか見たことないんだよね』

「へぇ。知らなかった」

『リリも』

『上では見ないからなぁ。飛べないしアーマーダイバーと同様に魔力が濃くないと動かないんだ』

「そりゃあ……使えないね」


 魔力が濃くないと動かないのであれば天領内では使えず、竜雲海を飛べないのであれば用途は限定される。


(火力があるなら雲海船に乗せて砲台にするぐらいしか……けど、だったら魔導砲を積んだほうがいいか)


 ルッタは少しだけ考えて、アーマーダイバーでいいかという結論に至った。


「深海層ならともかく、上では使い道ないよね」

『研究用に引き揚げることはあるらしいよ。バックパックウェポンなんかはアーマーダイバーでも使えるから流用してるものもあるって話だし』

「へぇ。けど深海人? って……潜雲病は大丈夫なの? もしかして巨人だったりする?」

『いや、僕らと同じくらいの身長だけど魔石が生えてる。それで濃い魔力を安定させてるんだとか』

「そうなんだ」


 だから天領に住む人々は深海人を魔獣の一種と言う者もいるし、深海人の魔石を求めて虐殺を繰り返したという歴史も存在する。何よりも楽園のような天空島に住む人々を深海人は憎む傾向にある……というような事情もあるのだが、それは子供に聞かせる話ではないとナッシュは伏せておいた。


『それじゃあ中に入るけど、動力の死んでいる遺跡内も拡張バッテリー付きのキャプチャーとサーチャーが巡回していることがあるから気をつけよう。見つからなければ放置でいい』

「万が一見つかった場合は?」

『サーチャーを優先で破壊。アレは仲間を呼ぶからね。で、キャプチャーを続けて倒す。こっちも素早く倒さないと仲間が寄ってくるんだ。警戒体制に入るから進み辛くもなるし』

「了解。そんじゃ十分に警戒しつつ入ろっか」


 そして周囲にガーディアンや深獣の反応がないのを確認しつつ、ルッタたちは静かに遺跡の施設内へと入っていった。

マキーニ:

 深海人が扱う人型兵器。アーマーダイバーと比較して若干小型で、空は飛べないが火力は高く、脚部のローラーを用いて高速移動を行う。

 イシュタリア大陸と呼ばれる別大陸においては同名の人型兵器が戦場の主力となっているが、それらはデッドコピーされた偽物であり、アーマン大陸のマキーニこそがオリジナルに当たる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マキーニだ! ロボの種類が増えるぞ! [気になる点] そういえばこっちのロボも成長するんやろうか? [一言] こうした地続きの何かって大好き
[一言] マキーニ!! 同じ世界だったんですねえここ いや、懐かしい
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