014 ガーディアン
紹介回も含みますが今話で100回目の更新です。
今章もここから折り返しとなりますので引き続きよろしくです。
「ナッシュさん、ここに来て被ば……体調が悪くなったりはしてない?」
『うん? 潜雲病ならシールド処理で対応はしてるだろ』
「そうじゃなくて……いや、そうなのか?」
『???』
ルッタの要領を得ない問いにナッシュが首を傾げるが、少なくとも何度もここに来ているナッシュにおかしい様子はない。
(似てるだけ……か? まあ問題がないならいいんだけど)
ルッタは遺跡の形状から元の世界のとある存在を連想していたが、少なくとも何かしらソレに準じた症状や問題が起きている形跡がないようなのでその考えを頭から振り払った。
『大丈夫か? それよりもアレを見てくれ』
「アレ?」
ナッシュの機体ノーバックの指差す先では、遺跡の工場地帯入り口前でオーガの群れとアーマーダイバーよりも無骨なロボットらしいものが戦っている光景があった。
「あのオーガを相手にしてるのがガーディアンってヤツ?」
『そうだ。あのタイプはキャプチャーって言われてる。見ての通り、フライフェザーはないから飛んだりホバリングはできないが、四脚でそこそこの速度で移動して、アレだ。僕のショルダーマシンガンに近い銃撃を行うんだ。あの背中のバケツみたいなマガジンポッドと繋がっていて、以前に確認してみたんだけど、あのポッドの中身は全部弾丸だった』
(アレってガトリングガンかな?)
ナッシュはショルダーマシンガンのようだと言ったが、保有弾数の桁が違うようで継続して撃ち続けていて、オーガたちを圧倒している様子がうかがえた。
「欲しいね」
『と思うだろう。一度回収してみたんだけど、アーマーダイバーだと撃てないんだよ。ガーディアン同士では受け渡しできるみたいなんだけど』
「そうなんだ。残念」
(認証システム付き。スマートガンみたいなものか。だったら接続してどうにかして誤魔化せないもんかなぁ)
整備士でもあるルッタはアーマーダイバーに接続してパラメータなどを操作するすべを持っている。であれば、キャプチャーのガトリングガンにも接続してハッキングできないかと少しばかり思案したのだが、ナッシュの次の言葉に意識をガーディアンたちの戦闘に戻した。
『それと連中の頭上を飛んでるのが、タレットドローンだ。名前はサーチャーって言う』
「リリ姉のシルフに似てるね」
パンケーキ型で下部にプロペラを回転させて飛び、上部に銃にも似たカメラが設置されている。形状のスマートさはないものの見た目はフレーヌの専用兵装であるシルフに似ており、リリもその言葉には頷いた。
『多分シルフの下位機種……かな?』
「マジかぁ」
分かっていたことだが、遺跡はあのオリジンダイバーを作った文明が生み出したものなのだ。オリジンダイバーに通じる技術があるのは確かで、油断はできないな……とルッタは改めて考えた。
『サーチャーは周辺の監視と戦闘時の情報伝達を担当しているみたいでね。アレと戦闘になったらまず最初に落とした方がいい。それだけで連中の連携が乱れるんだ』
「サーチャーね。こっちはもうあちらをレーダーで捉えてるけど、あっちは気付いてないの?」
『理由は知らないけど、レーダーの精度に関してはアーマーダイバーの方がかなり上なんだよ。だから基本的にはあちらが先に気づくことは少ないし、今だって見た感じ気づかれてはいないね』
「そりゃ助かるけど。変なの」
オリジンダイバーに準ずる技術で作られている遺跡なら、劣化オリジンダイバーであるアーマーダイバーよりも進んだ技術で作られていそうなものだとルッタは思ったが、そういうわけでもないらしい。
『それで連中がオーガと遊んでいるなら今がチャンスだけど、どうするんだい大将?』
ナッシュがルッタを大将と言った通り、この場の指揮はルッタに委ねられている。
ナッシュは依頼者でこの遺跡に執着しているから決定権は渡せない。リリは自分の興味次第でどちらにでも判断してしまいそうだから論外。となればルッタしかいないという理屈で、それを頼んでいることがギアがルッタを信頼しているという証でもあった。
「まあ、今のところはすべて想定内で問題は起きていないからね。大丈夫。このまま進もう。ナッシュさん」
そのルッタの言葉に従って、彼らは再び進み出し、そしてガーディアンたちがオーガの群れを殲滅した頃にはルッタたちは遺跡内部への侵入を果たしていたのであった。