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010 少年の始まり

「うぉっとぉお!?」


 最大出力の魔法刃を纏わせた魔導剣同士の衝突は衝撃波を発生させ、魔法光を散らしながら双方の機体を吹き飛ばした。


「やっぱり斬り合いは操縦が難しいなぁ」


 機体が倒れそうになるのをどうにか堪えながらルッタはジハルド機へと視線を向ける。


「それに、このコンディションの機体で格闘戦は流石に無謀か」


 調整されていない現在のブルーバレットの操作感は劣悪なもので、ルッタもギリギリで踏ん張って戦っているというのが実情だ。

 またアサルトセルは銃撃戦がメインで格闘戦はオマケに近かったので、こうした戦い方のレパートリーは比較的少ない。一応この四年間は顧客の機体の試運転がメインで銃を撃つことはほとんどなかったため、格闘戦も想定した訓練も行っていたのだが、それはまだ実戦で馴染ませようという段階だ。


「次に打ち合えばぶっ倒れるかも。ま、打ち合わなきゃいいだけなんだけどさ」


 そんなことを口にしながらルッタはブルーバレットに魔導剣を構えさせて一歩踏み込んだ。対してジハルド機も同様に前傾姿勢で魔導剣を構える。


『なるほど……強い。風の機師団の新人は警戒するに値しない相手だと聞いていたが』


 ジハルドがそんなことを口にしたが、その意味はルッタには分からない。先日の遭遇戦で死んだ新人のことなどルッタは知らないし、ジハルドも負けた部隊とは合流していないので新人が死んでいることを知らなかった。


「別に俺は風の機師団じゃあないんだけどね」

『子供のような声をしている? 風の機師団のメンバーでないなら何故我らの邪魔をする?』

「何でって、火の粉が舞ってきたら払うよね、普通。あとせっかくのファーストミッションだし? そりゃあやるしかないでしょ」

『我らが容易に払える火の粉だとでも? 巫山戯たことをッ』


 激昂するジハルドが剣を振り上げながら突撃してくる。


(まあ、怒っていようがなかろうが、そう来るしかないわけだけど)


 魔導銃の残弾もゼロ。バックパックウェポンも近接で使えない以上、敵が使用できるのは魔導剣のみ。機動性重視のイロンデルタイプに対抗するためか、ジハルド機はバックパックウェポンのロケットランチャーをパージしてさらに速度を上げる。


『我が刃にて沈めイレギュラー!』

「嫌だよ」


 そして間合いに到達したジハルド機が上段からの一撃を振るうも、ルッタはまたしても変則的なフライフェザーの機動によってそれを躱し、ジハルド機の横を一気に駆け抜けた。


『外した!?』


 直後、ジハルドは己の足元が大きく揺らいだのを感じた。


『な、なんだ? グアッ』


 そして次の瞬間にはグラリとコクピットが動いて機体が地面に叩きつけられるのを感覚で察した。その意味するところはひとつだ。


『これは……まさか斬られた?』


 そのジハルドの認識は正確であった。

 魔法刃を形成して斬り払う魔導剣は魔導銃メインとなるアーマーダイバー戦での使用頻度は低いものの、装甲をも斬り裂く切断力と高いコストパフォーマンスを兼ね備えた強力な近接武器だ。ルッタはそれを用いてすれ違いざまの横薙ぎでジハルド機の腰部を最大出力で両断していた。

 その証拠にジハルド機の水晶眼には目の前に転がる自機の下半身が写っていた。


『クッ……これでは、もはやどうにもならんか』


 己を含めてゴーラ武天領軍の機体はすべて大破した。であれば勝敗は決したのだとジハルドは理解し、歯軋りしながらその場で俯いた。


「ふぅ、終わった」


 対して再び動き出しそうな機体がないのを確認してからルッタは、ただ一機その場に立っているブルーバレットの中で大きく息を吐いた。戦闘は終了。滴る汗を拭いながらもルッタの顔は充足感に満ちていた。


「ファーストミッションクリア。これで四年かかったチュートリアルモードもようやく終了ってところかな」


 ルッタ・レゾン十二歳。転生者。元プロゲーマー。

 現世における彼の最初の戦績は非武装、未完成の量産機の操作による一対四からの完全勝利であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] お見事! 華々しいリザルトでのチュートリアルクリアでしたねえ!
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