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パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第十一章 それはとても幸せなことなんじゃよ
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それはとても幸せなことなんじゃよ その3

 窓に新しい建物が映し出された。

「私たちは――いや、ここは君に合わせて地球人テランと呼ぶことにしよう――地球人テランは化石燃料に代わる新しいエネルギーを作り出した。これは原料の枯渇も、温暖化ガスの発生もない、とても優れたものだ。やがてその新しいエネルギーで電気を作る発電所が建てられた。ところで、電気って分かるかな」

 僕はうなずいた。

「水素と酸素から作られた電気の灯りを見たことがある」

「そうか。君たちはメタンと燃料電池を奪っていたんだったな。ともかく、これまでの化石燃料による発電所に代わって、その新しい発電所がどんどん建てられていった。最も多いときで世界に約六百基。誰もがこれでエネルギー問題は解決したと思った。でも、大きな落とし穴があった」

 窓に写真が現れた。白いぶかぶかの服を着て大きなヘルメットを被った人間が作業している。

「この新しいエネルギーは人体に有害な物質を使用している。直接人が触ることさえできない。使用した後もきちんと管理しなければならない非常に危険な物質だった。発電所から有害な物質が漏れないように建物は厳重に造られていた」

 カウントは最初の地球の人口推移のグラフを一番上に移動させた。

「さっき、地球の人口が最も多いときに百八十億人といったよね。これはとんでもない数字だよ。火星では想像できないかもしれないけど、豊かな国と貧しい国の差がどんどん大きくなっていった。そうだ、国って分かるかな」

「東部地区のイースト・オブ・エデンのような――」

「うん、あのお嬢さんはあそこのセブンス・プリンセスだったね。地球にはたくさんの国があったんだ。でも、それだけ多くの人口を養えるだけの水や食べ物や資源が不足していた。火星への移住も打開策のひとつとして挙げられていたんだけど、ようやくテラフォーミングが始まったばかりだった。それになにぶんコストがかかりすぎる。やがて不満を持った貧しい国の人たちが暴走した。豊かな国を攻撃し始めたんだ」

 新しい写真が現れた。それはさっきの発電所が破壊され、煙を上げているものだった。同じように破壊された建物の写真がどんどん増えていく。僕の目の前の空間が破壊された発電所の写真で埋め尽くされた。

「彼らが標的にしたのが、新しいエネルギーを使った発電所だった。最初は、ある貧しい国が以前から対立していた敵対国の数基を破壊したことから始まった。でも、そのあとはいろんな国々が一斉に同じようなターゲットを破壊し始めた。宗教上の理由で紛争を繰り返してきた国や、独裁国家など、たくさんの国が、何の連携も連絡もなしにだよ。まるではやり病みたいに。いまだにその真相は明らかにされていない。当時は複合多発テロと呼ばれていた」

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