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パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第十一章 それはとても幸せなことなんじゃよ
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それはとても幸せなことなんじゃよ その2

 二の句が継げず呆然としている僕に構わず、カウントは「これもうっとうしいんだよね。ちょっと失礼」といってボディスーツも脱いでしまった。ほとんど下着のような格好で部屋を出て行くと、コーヒーの入ったサーバーとカップをふたつ運んできた。コーヒーをカップに注ぎ、ひとつを僕に手渡すと、自分も椅子に座って飲み始める。

「君も座ったらどうかな。無理にとはいわないけど」

 この人が『先祖返り』。僕たちと同じ火星の人間――。

「僕もあなたに訊きたいことがある」

 なぜ地球人テランは火星に移住したのか。そして、なぜ『先祖返り』が必要なのか。僕もカウントの隣に座った。ラオスーの訓練のおかげでなんとかカップを割らずに持てている。

 隣に座った僕を見てカウントはうなずいた。

「君にはすべて話すつもりだよ。シル、さっきのやつ、いいかな」

 カウントが声をかけると、僕たちの前の空間に画像が現れた。何かのグラフだ。

「これは、地球に来たTBの累積数の推移」

 その数はどんどん増えている。

「ちなみに、君は火星の人口がどれくらいか知っている?」

 僕は首を振った。そういう情報はファントムによって伏せられていた。

「今、火星には約六千万人が暮らしている。ひとつの大陸にほぼ二千万人くらい。これが火星の人口推移。ここ数百年増えも減りもしていない。一方、地球の人口は――」

 カウントが空中に浮かぶボードを操作すると、新しいグラフがふたつ現れた。ひとつは横ばい、もうひとつは右肩下がりでどんどん減少している。

「ここ数百年、地球の人口は減り続けている。最も人口が多かったときの百八十億人から、今では十億人にまで減ってしまった」

「昔、地球に災厄があったって聞いたけど」

 カウントは再びボードを操作して、空中に新しい窓を開いた。建物の写真が映し出された。

「人が暮らしていくには様々なエネルギーが必要だ。最も原始的なものは木を燃やして火を熾すこと。さらに地球では色んなエネルギー資源が利用された」

 空間に開いた窓には地球の様々な映像が現れては消えていく。火を囲む人々、炭のようなものを燃やして煙を出している建物、道を行き交うたくさんのオートモービル。

「これらはいずれも有機物に含まれる炭素という物質を動力や電気などの二次エネルギーに変換しているんだ」

 それについては以前少しシルに教えてもらっていた。

「石炭や石油」

「なんだ、よく知ってるじゃないか。話が早い。そういうのを化石燃料と呼んでいたんだ。でも、色んな問題があった。まず燃料の枯渇。化石燃料は無尽蔵にあるわけじゃない。しかも簡単には作れない」

 確かヨミがいってた。

「石油ができるまでに何億年もかかる」

 カウントは僕たちの側に立っているシルを振り返った。

「シル、彼はなかなか優秀な生徒だな」

「ええ。私もそう思います、カウント」

「さらに、化石燃料を燃やすと発生するガスが地球に悪影響を及ぼす可能性があった。地球がどんどん暖かくなって、環境が破壊されると示唆されていた」

「じゃあ、それが原因で……」

「いやいや、そうじゃないんだ」

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