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パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第二章 これを取りに必ず戻ってらっしゃい
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これを取りに必ず戻ってらっしゃい その1

 それにしても、大きい背中だなぁ。

 前を行く馬上のTBを見ながら、僕はぼんやりとした頭でそんなことを思っていた。

 思いがけないことが一度にたくさん起こって、僕の頭は正常に動いていなかった。考えなきゃいけないことがたくさんあるはずなのに。

 出発してからどれくらい経ったんだろう。太陽はかなり傾いているから、かれこれ三時間くらいだろうか。並足で進むチェスの規則正しい歩みが僕をまどろみに誘う。


 黒髪の少女たちが去ってから、僕はいったんマッコイ爺さんのところに向うことにした。爺さんの容態は心配していなかったけれど、このまま何もいわずに父を追いかけて行くわけにもいかない。それに、必ず戻ってくるっていったんだ。

「まず知り合いのところに行きたいんだ。心配してると思うから。いいかな」

 僕がそういうと、TBはうなずいて外に出た。

 このとき、ようやく僕は彼女が銃を持っていないことに気が付いた。銃を持たない賞金稼ぎなんて。

 さらに家の外に出て戸惑った。チェスしかいない。てっきりTBの馬もそこにいると思ったのに。

「TB、君の馬は?」

 TBは首を横に振った。

「馬に乗ってない? じゃあどうやってここまで来たの?」

 僕の問いかけに、TBは自分の足を指差した。

「まさか走ってきたんじゃ……」

 なぜか嬉しそうにTBがこくりとうなずく。

 馬車駅からここまでチェスの速歩トロットで三十分はかかる。距離もそうだけど、彼女が馬車駅に着いてからここに来るまでの時間が短すぎる。

 でも、さっきの人間離れした跳躍。あり得るかもしれない。

 とはいっても、まさかTBだけ走らせるわけにはいかない。いちばん馬格のいいフリッカを馬装して、TBと引き合わせた。

 TBがフリッカの額をなでると、フリッカはおとなしくされるがままにしている。気が合いそうでよかった。


「レン! 大丈夫なの?」

 爺さんの家の前で馬を降りると、ジェシカがほうきを持って飛び出してきた。

「僕は大丈夫。でも父さんが連れていかれた。今から追いかける。マッコイ爺さんは?」

「奥で休んでるわ。ちゃんと固定してるから大丈夫。レン、その人は?」

 TBは馬から降りて帽子を脱いだ。

「僕を助けてくれた、TB。怪我をしていて喋れない」

 ジェシカはTBを見上げた。

「あなた、もしかして……」

 TBは首をかしげる。

「とにかく中に入って。まだ散らかっているけど」

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