君はまだ自分の価値が分かってない その8
目を開けると、ヨミの心配そうな顔が僕を見下ろしていた。あれから気を失って、今はどうやらベッドに寝ているみたいだ。
僕は上半身を起こした。
「気がついたか」
バーニィが椅子に座っている。僕の部屋だった。TB、キャット、フランチェスカ、サキがいた。
「どうやら大丈夫そうね」
サキが僕の脈を診ながらいった。
「すみません」
フランチェスカがヨミに訊いた。
「でも、どうしたの」
「それは――」
そういいかけてみんなのほうを向いたヨミの顔が真っ赤になっている。
それを見て、みんながいっせいに「ああ」という感じでうなずいた。
「まあ、若いからな」
バーニィが真顔でいった。ヨミがますます赤くなる。
「でも、これからいろいろと大変なんじゃないか。ほら――」
といいかけたキャットの後頭部をフランチェスカが思い切りひっぱたいた。
「痛ってぇ。何すんだよ」
TBがキャットのえり首をつかんで、ひょいと持ち上げた。
「わっ、こら」
フランチェスカも立ち上がった。
「あんた、そうやっていると本当に猫みたいよ」
「う、うるせぇ」
「あんまり無茶しちゃだめよ」
僕の手をぽんと軽く叩いてサキも立ち上がり、みんなぞろぞろと部屋を出て行く。
「じゃあ、ごゆっくり」
バーニィはそういってドアを閉めた。
ヨミと僕は顔を見合わせた。
なんだか不思議な気持ちだった。何故か夢で見た地球の青い海が頭の中に浮かんだ。遠くのほうから本当に波の音が聴こえてくる気がした。
僕の顔を見てヨミが首をかしげた。
なんでもない、と僕は首を振った。
ヨミは僕のベッドの端に両手を乗せると、その上にぺたんと頭を預けてこちらを見上げた。
心の中で、波の音がかすかに、いつまでも聴こえていた。




