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パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第九章 君はまだ自分の価値が分かってない
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君はまだ自分の価値が分かってない その5

 オートモービルは近くの森の中にある小さな湖のほとりで停止した。どうやら集合場所らしい。

 教会からここまでずっと、ヨミはほとんど口を開かなかった。僕が話しかけようとすると、すぐに視線を逸らしてしまう。

 やがて馬に乗った『アーム』の人たちがぞくぞくとやってきた。その数およそ三十人。みんなバーニィの集落で見かけた人たちだった。

「よお、ドクの息子、元気か?」

「姉ちゃん、なかなかかっこよかったぜ」

 僕とTBに声をかけながら、みんなは馬に水を飲ませている。

 ぽん、と背中を叩かれた。振り返ると、ジェシーがにこにこしながら立っている。

「おじいさん! 大丈夫なの? こんなところへ来て」

 それを聞いてバーニィたちが笑う。

「レン、ジェシーは爆弾のエキスパートだ。あの爆薬も全てジェシーが仕掛けたんだよ」

 ジェシーはそんなことはおかまいなしに僕の耳元でささやくようにいった。

「どうだ、ドクのせがれ。少しは飲めるようになったか」

「うん、少しは」

「よし。とっておきのを持ってきた。今晩やろう。でっかい姉さんも呼んでな」

 僕の背中を叩くと、笑いながら行ってしまった。

 バーニィが僕の隣に立った。

「会議の情報が入った時点で早馬を飛ばしていたんだ。砂漠を横断すればなんとか間に合う距離だったからな。砂嵐がなくて助かったよ」

「うん。本当に助かった」

 やがてもう一台のオートモービルが到着した。たぶん追っ手が来ないことを確認してから離脱したんだろう。

 オートモービルからキャットが飛び降りて、ヨミのところに駆け寄った。

「おかしらぁ、水くさいですぜ」

「すまない、キャット」

「まあ、無事でよかったっす。レン、ありがとな」

 僕はうなずいた。

 キャットのあとからオートモービルを降りた人物を見て、ヨミが体をこわばらせた。

「げっ、アサヒナ……」

 サキがつかつかと大股でこっちにやってくる。いきなりヨミの横っ面を思い切りひっぱたいた。ヨミが地面に転がる。

「久しぶりに会って、少しは成長したかと思ったが、お前はまったく変わっていないな、この未熟者がっ」

 サキは手のひらを開いたり閉じたりしている。

「お前ひとりの勝手な行動が、どれだけ多くの人間の命を危険にさらしたと思っているんだ」

「どうしてもファントムに確かめたいことがあったんだ」

 サキのほうを見ずに、地面に尻餅をついたままヨミがつぶやくようにいった。

「なに?」

地球人テランは私たちを――正確にいえば、西部地区を切り捨てるつもりだ」

 バーニィがヨミの側に膝をついた。

「お嬢ちゃん、どういうことだ」

「火星の住環境エリアを縮小させるんだ。それにともなって西部地区の住人は排除されるだろう」

 僕もヨミの側の地面に座った。

「排除って……」

地球人テランは私たちを殺すことになんのためらいも持っていない」

「そんな。どうして」

「火星の住環境を維持するために、地球は多くの手間とコストをかけている。それを減らすつもりなんだろう」

 バーニィが素早く周りを見渡す。ヨミがぶたれたときはみんな注目していたけど、今はだれも僕たちの話を聞いていない。

「その情報は確かなのか、お嬢ちゃん」

「もちろんカウントは明言しなかった。でも、奴の反応から見て私は本当だと思う」

 バーニィはサキを見上げた。

「確かに、昔からそんな噂はあった。たぶんあんたも聞いたことがあるだろう」

 サキがうなずく。

「ある。でも、今になってどうして」

「コーディネーターなら知っているはずだ。確認はとれないのか、アリソン」

「取れないこともない。とにかくいったんデッドウッドまで戻ろう」

 バーニィは立ち上がった。

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