君はまだ自分の価値が分かってない その2
教会での会議は翌日の夕方からと伝わっていた。MAの速度なら明日の朝には着くだろう。ヨミが会議の時間に合わせて今晩休息を入れていれば追いつけるかもしれないけど、罠と分かっているならその可能性は低い。
「罠だとしたら、レンを連れて行くのはますます危険だわ」
サキがバーニィにいった。
「レンの体はどうなるんだ」
「たぶん、断続的にTB化したあと、完全に『先祖返り』に変化すると思う」
「こいつの体から、ファージを回収できるのか」
「それは不可能よ。すでにファージの役割は終わって、レンの体の中で消滅しているわ」
「それでも、奴らにとって『先祖返り』は価値があるはずだ。確かにリスクはあるが、こちらの手札としても有効だ。レンには悪いが」
僕は運転席からバーニィを振り向いた。
「僕なら大丈夫」
オートモービルは僕が運転を代わっている。ヨミに追いつくために夜通し走らなければならないからだ。MAの操縦よりも簡単だから、すぐに覚えられた。
「バーニィ、お願いがある。僕のことよりもヨミのことを優先して。ファントムは『先祖返り』が欲しいんでしょ? 最悪の場合、僕の身柄と交換してもいい」
「待て。そう焦るな。まだ奴らの出方も分からないんだ。作戦も立てられない。出たとこ勝負で行くしかないが、無茶はさせないぞ」
「レッドフィールドの屋敷で、ヨミの黒い霧が効かなかった。もし、今度もあれがあったら……」
父さんはあれのことを何ていってたっけ。
「『マクスウェルの悪魔』ね」
サキが答える。
「閉鎖された空間でなら使用される可能性はあるわ。まあ一種の結界みたいなものね。用心にこしたことはない」
僕はうなずいた。
「レン、気持ちは分かるが、リーダーは俺だ。俺の命令に従ってもらう。いいな」
隣の席のバーニィの表情からはいつもの苦笑が消えている。
「わかった。バーニィの判断に従う」
「レン。約束を守れなくてすまなかった」
バーニィは父さんのことをいっているんだ。僕は強く首を振った。
「バーニィが謝ることじゃない。僕は誰も恨んでないよ」
「……そうか」
あのとき、父さんはわざとレッドフィールドの女給に撃たせるように仕向けた。最初からそうするつもりだったんだ。誰にも父さんを助けることはできなかっただろう。
僕はバーニィの肩をぎゅっとつかんだ。




