表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第七章 お前たちなら必ず来ると信じていた
66/127

お前たちなら必ず来ると信じていた その9

「お前たちなら必ず来ると信じていた」

 父さんがバーニィのほうを見ながらいった。

「ちくしょう。なんてこった」

 バーニィが視線を僕たちに向けて、苦しそうに歯をくいしばった。父さんが苦しそうに口を開く。

「ヨミ、ここに来る前に『マクスウェルの悪魔』は解除した。あれはもう使えるぞ」

 ヨミが僕のそばにひざまずいた。

「ドクター、私は……」

「自分の信じる道を進みなさい。レンを頼む」

 唇をかみしめて、ヨミはうなだれた。両膝に置いた握りこぶしが震えている。

「レン」

 父さんが天井を見つめている。たぶんもう目が見えなくなっている。

「ここにいるよ」

「今まで黙っていてすまなかった。母さんの望みでもあったんだ。でも、もうそれも……」

 僕は首を振った。

「レン……トリガーを引け」

 それが父さんの最後の言葉だった。

 これまで僕は父さんの助手として、人が死んでいくところに何度も立ち会った。なぜだろう、死んでいった患者さんたちのことが次々と脳裏に浮かぶ。たぶん父さんは悔しかっただろうな。僕には決してそんなそぶりは見せなかったけど。とても悔しかっただろう。

 くそっ。

 バーニィが僕の隣に膝をついて、父さんの目をそっと閉じた。

「レン、体は大丈夫か」

「え……どういうこと?」

「どこかが痛んだり、熱を持ったりしてないか」

 僕は首をかしげた。バーニィは何をいってるんだ? でも、いわれてみれば……。

「なんとなく、体が熱いような気がする」

「お嬢ちゃん、ファージの効果はどれくらいで出るんだ」

 ヨミはうなだれたまま首を振った。

「分からない」

「おい、嬢ちゃん。あとでゆっくり落ち込んでくれ。ファージ摂取後このまま放っておいて大丈夫なのか」

「数分から数時間だ」

 突然、レッドフィールドが口を開いた。

 バーニィが立ち上がる。

「なんでそんなに幅があるんだ!」

「人体に使用した例がないからだよ。副作用についても不明だ。本当に効果が出るのかどうかも分からん」

「バーニィ、もしかして、さっき父さんが僕に撃った銃のこと? 父さんは何かの薬剤を僕に打ち込んだの?」

「いいか、坊や。あれは――」

 レッドフィールドの叫び声が部屋に響いた。

「カウント! コード・レッドだ。頼む」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ