お前たちなら必ず来ると信じていた その7
こちらに向って差し出された父さんの手の中には小ぶりの黒い銃がすっぽりと納まっていた。銃口はぴたりとヨミに向けられている。
父さんが銃を構えるのと同時に、背後にいた少女が父さんの後頭部にファントムの銃を向けた。レッドフィールドは父さんを完全には信用していないということだ。
僕のうしろにいたキャットが動く気配がしたけど、僕はなんとか先んじてヨミの体の前に立ちふさがることができた。
「おい、カカオ」
「いいから。今回は僕にまかせて」
小声でヨミに告げる。
父さんの銃口は僕の左胸をぴたりとさしたままだ。
TBと視線が合った。しっかりとこちらを見返している。
バーニィは周囲の少女たちに素早く目を走らせている。たぶんうしろにいるキャットも同じことをしているはずだ。彼女たちは全部で四名。四つの銃口は微動だにしていない。
「どきなさい、レン」
視線を戻す。照星の向こう側で父さんの目が細くなっていく。
「嫌だ」
「お前はコーディネーターの責任の重さを分かっていない。残念だ」
ここだ。
この形勢をひっくり返すにはたぶんここしかない。
――もしも何か気になったり、なんとなくおかしいと思ったら、原因を徹底的に調べること。父さんの教えが脳裏をよぎる。
これはフェイクだ。父さんは絶対に何かをしようとしている。
でもそれは何だ?
ついに父さんの右肩の筋肉が動き、引き金に添えられた人差し指に力が入っていく。
「許してくれ、レン」
パシュッという独特の音を残して、父さんの放った弾は僕の左胸に命中した。




