お前たちなら必ず来ると信じていた その1
「レッドフィールド様が屋敷でお待ちしております」
少女のひとりが僕たちに告げた。感情のこもっていない冷たい声だった。
僕たちは顔を見合わせた。
「ご招待痛み入る。ところであんたたち、その銃を本当に撃てるのかい?」
バーニィが皮肉な笑みを浮かべて、少女たちの構える銃口に目を向けた。
僕たちの体ではファントムの銃の反動を受け止めることができない。撃てたとしても、標的にはまず当たらないだろう。まして、見るからに華奢な女の子には到底扱えないはずだ。
でも、さっき口を開いた少女は構えた銃をすっと横にずらすと、無言で引き金を引いた。ガウン、という独特の重い銃声を響かせて、銃が火を噴く。
百メートルほど向こう、砂交じりの風を受けてきりきりと回っていた風車が吹き飛んだ。
少女は平然と立っている。再び僕たちに銃口を向けた。
「バーニィ、あの右手」
最初、僕は彼女たちが右手に手袋をしているのだと思っていたけど、そうじゃなかった。銃を握る指が金属の色をしている。
「どうやら右腕だけ機械で強化されているようだな」
ヨミが眉間に皺を寄せる。
こちらにはヨミがいるから、いざとなれば銃弾は防げる。でも、バーニィは両手を上げた。
「わかった。じゃあ、案内をお願いしようか」
砂嵐の中、僕たちは少女たちが運転するオートモービルで移動した。もちろん武器を持つことは許されなかった。
分乗したのは、僕、バーニィ、TB、ヨミ、キャットの五人。フランチェスカは万が一のために残った。『アーム』の人たちはさすがに尻込みしていた。
走ること2時間、シルバーレイクの町に到着した。しばらく大通りを行くと、湖のそばに建っている大きな建物が見えてきた。レッドフィールドの屋敷だ。
「屋敷というよりも、城だな」
隣に座っているヨミがつぶやく。
「城?」
「東部地区にある建物だ。その地域の有力者が住んでいる。要塞のようなものだな」
大きな壁をくり抜いて作られた門を入ると、開けた広場のような場所に出た。僕たちはそこで降ろされた。
銃を持った少女たちに囲まれて、建物の中に入っていく。どうやら石やレンガで建てられているらしい。中の空気がひんやりしている。
突然、いいようのない不安が冷たい空気とともに僕の足元から這い上がってきた。この先にいったい何が待っているんだろう。
「どうした」
僕の顔をヨミが見上げていた。僕はぐっと歯を食いしばって首を振った。
「ううん。何でもない」
「心配するな、カカオ。お前は私が守ってやる」
僕はうなずいた。素直にうなずいてしまう自分もどうかとは思うけど仕方がない。少なくとも僕はひとりじゃないんだ。みんなの存在がこれほどありがたいと思ったことはなかった。
やがて、大きな扉の前で僕たちは立ち止まった。少女のひとりが扉をノックする。
「どうぞ」
中から男の声がして、少女が扉を開けた。




