奴らのやり方が正しいとは思えねぇ その5
帰り際、団長がヨミに声をかけた。
「お嬢さん、あんた東部地区の出身だね」
「そうだが」
「もしかして、イースト・オブ・エデンの一族じゃないのかい」
ヨミは視線を逸らした。
「いや、詮索するつもりはないんだ。人探しを頼まれていてね。ファー・イーストの女の子なんだが。あんたよりももう少し年上で、名前は――」
「すまない。故郷のことはあまり聞きたくないんだ」
「いや、こちらこそ悪かったね。ファー・イーストの人間はこのあたりでは珍しいもんだから」
団長は僕たちに手を振った。
「じゃあ、みなさん、お元気で。ニキをよろしくお願いします」
「すっかり遅くなっちゃったね」
静まり返った町の中を僕たちは歩いていた。TBとヨミが僕の前を歩いている。ヨミが何かを問いかけて、TBがうなずいたり、首を振ったりしている。
「でも、TBのことが分かってよかった。それに父さんのことも」
隣を歩くバーニィがうなずいた。
「バーニィ、父さんたちがライブラリにいた頃、何があったの。なぜ父さんはコーディネーターをやめたの」
「ドクたちがこっちに来て二年後、ファントムがTBの引渡しを要求してきた。ドクとエレナはそれを断ったんだ。その頃ふたりはコーディネーターの仕事に疑問を持ち始めていた。結局TBはファントムの手に渡らなかった。当時コーディネーターを束ねていたのがジェームズ・レッドフィールド、ビル・レッドフィールドの父親だ。彼のおかげだとドクはいっていた。彼がファントムと交渉してくれたらしい。ただし、TBはほかの人間の手に委ねなければならなかった。俺がドクと知り合ったのはその頃だ」
「じゃあ、そのときに別れて以来、父さんとTBは会ってないのかな」
「恐らく会ってないな。俺も最近は頻繁にドクと会っていたわけじゃないから何ともいえないが」
「そうなの?」
「表向きドクは『アーム』と接触してはいけないことになっていたからな。もちろん、あくまでも表向きだが。ファントムはドクが『アーム』の旗頭になることを恐れていたんだと思う」
父さんにそんな影響力があったなんて。
「僕は何も知らなかった」
「いずれはドクもお前に話すつもりだったんだろうがな」
「バーニィ、僕はもっと父さんのことを知りたい」
「また話してやる。明日は早いんだ。今日はもう寝ろ。ジェイダが心配しているぞ」
それから僕たちは案の定ジェイダにこっぴどく叱れて寝床についた。




