奴らのやり方が正しいとは思えねぇ その3
「ある晩、私たち夫婦が話しているのをヤーナが偶然立ち聞きしてしまったんだ。私にはそんなことをいった記憶がないんだが……。ニキをもっと早く引き取っていたら、子供は作らなかったかもしれないな――私はそんなことをいってしまったんだ。私のその言葉をヤーナが聞いてしまったんだよ」
たぶんそのこともあったんだろう、そのあとすぐ、珍しくヤーナとニキが喧嘩をした。原因はささいなことだったけど、ニキはヤーナに自分のほうがこの家の娘にふさわしいといってしまったそうだ。
「ニキは賢い子供だったから、良くも悪くも自分の立場と周りに与える影響をちゃんと知っていた。普通なら決してそんなことはいわなかったはずだ。それに私はそんなことはどちらでもいいんだ。悪いのは私なんだから」
TBは首を横に振った。
「わかったよ、ニキ。でも私はお前に恨まれて当然だと思っているんだ」
ニキといい争った日の翌日、ヤーナはひとりで綱渡りに挑み、落下した。
団長がヤーナからすべてを聞いたときには、すでにTBは父さんたちに引き取られていったあとだった。
TBは声を失ってしまったけど、傷自体は順調に回復していた。そして、団長はTBを引き取りたいという父さんたちの申し出を受け入れていた。
「ヤーナの話を聞いて私は後悔した。そしてその思いは日が経つにつれて大きくなっていった。私は取り返しのつかないことをしてしまった。実は、妻には黙って決めたことだったんだ。あとでそのことを知った妻にひどくなじられてしまったよ。ただ、あのときの私にはふたりを育てる自信がなくなっていたんだ」
団長はそこでいったん口を閉ざした。沈黙を破ったのはそれまで黙って話を聞いていたヨミだった。
「あんたたちはヴェレチェンニコフを探さなかったのか」
団長は弱々しい笑みを浮かべてヨミを見た。
「探したよ。それ以来、以前にも増して興行に精を出した。東部地区だけでなく、海を渡ってほかの地区にも足を伸ばした。人も使った。でも、ニキは見つからなかった」
「そこから先は俺がニキの代わりに話そう」
バーニィがいった。
「ニキが見つからなかったのは当然だ。彼女を連れてドクたちは西部地区に渡った。もともとドクたちは西部地区の人間だ。そして、彼らはある場所に腰を落ち着ける。アナサインド・テリトリーの中だ」
「まさか、そんなことが――」
「そんなことができる人間だったんだよ、彼らは。あんたも仕事柄いろんな噂は聞いているだろう」
「ファントムとの仲介者……」
恐る恐る口にされた言葉に、バーニィの右頬が歪む。




