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パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第五章 あの日以来一日も忘れたことはない
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あの日以来一日も忘れたことはない その10

 町外れの広場に大きなテントが張られていた。

 松明がたくさん焚かれている。

 中から大勢の人の歓声や拍手が聞こえてくる。

 僕たちが中に入るかどうかためらっていると、人影がテントの裏のほうから転げ出てきた。うしろを振り返ってよろめきながら走っていく。

 大きな人影がそのあとから大股で近づいていく。TBだ。手にナイフを持っている。

 前を走っていた人影が転んだ。弱々しく上半身だけ起き上がると手を掲げた。

「待ってくれ。お前を見捨てたわけじゃないんだ」

 男の前に佇んでいるTBの表情は見えない。

「確かに彼らから連絡はもらっていた。でも私は断ろうと思っていたんだ。いや、勘違いしないでくれ、お前がうちの稼ぎ頭だったからじゃない。ヤーナのためにもお前を手放したくなかった」

 TBが男の前にしゃがむと、男はぎくっと身を引いた。

「ほ、本当だ。だが、あの事故があって気が動転してしまった。だから彼らに全てを委ねてしまった」

 僕たちはTBの背後で立ち止まった。

「TB!」

 ちらっと僕たちを振り返ったけど、TBはまた男のほうを向いた。男が僕たちに視線を向ける。

「あんたたちは……」

「TBの――ニキの仲間です」

 TBは持っていたナイフの柄のほうを男に差し出した。

「これは……まだ持っていたのか」 

 男はナイフを受け取った。TBは手のひらを広げて両手を掲げた。そしてゆっくりと首を横に振る。男はがっくりとうなだれた。

「そうか……。お前に謝らなければいけない。そう思っていた。ずっとだ。あれからずっとそう思って生きてきた。あの日以来一日も忘れたことはない。ニキ。すまなかった」

 TBはもう一度首を振った。

 顔を上げた男は僕たちに視線を移した。僕の顔を見て何かを思い出そうとしているようだった。

「あんたとはどこかで……いや、気のせいか。もしよかったら、ニキのことを教えてくれないか」

 といわれても、僕もTBのことはあまりよく知らない。

「それは俺が話そう」

 テントのほうから苦笑いを浮かべた人物が近づいてきた。

「バーニィ、どうしてここに」

「リーダーは常に仲間のことを把握しているんだよ。TBは子供の頃、このサーカスにいたんだ。あんたは団長のセルゲイ・ボーリンだね」

 男がうなずく。

「彼はTBの育ての親だよ」

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