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パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第五章 あの日以来一日も忘れたことはない
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あの日以来一日も忘れたことはない その4

「うわわわ、落ちる!」

 僕は慣れない操縦桿とペダルに悪戦苦闘しながらMAの姿勢を必死で制御しようとしていた。

「男のくせに情けない声を出すな」

 後ろの座席からヨミの罵声が飛ぶ。

「そんなこといったって――」

 ぐらぐらと左右に大きく揺れながらも、MAはなんとか着地した。どうやら自動的に姿勢をアシストしてくれる機能があるみたいだ。

「うまいじゃないか。よし、もう一回やってみようか」

 ヨミのハードなコーチのおかげで、昼頃にはなんとかMAの基本操作はマスターすることができた。MAは二機あるから、戦力として使わない手はない。別に武器を積んでいるわけではないけど、使い道はありそうだ。

 僕とヨミはいったん練習を切り上げて鉱山に戻った。鉱山の中にはMAを格納しておくスペースが設けられていた。床にはそこかしこによく分からない機械や道具が無造作に置かれている。

「これは何?」

 僕は棒の付いたお面のようなものを拾い上げた。

「溶接といって、鉄と鉄を溶かしてくっつける。そのときに使うマスクだ」

 なんだかよく分からないけどすごそうだ。でも、一番驚いたのは、この鉱山には火を使わない灯りが使われていたことだ。『電気』というらしい。

「そんなに珍しいか?」

 僕がその『電気』で灯っているランプをじっと見ているとヨミがたずねた。

「いや、便利だなぁと思って」

「まあ、油は貴重だからな」

 普段、僕たちは菜種油から抽出したオイルをランプの燃料に使っているけど、それはとても貴重でなかなか手に入らなかった。

「そうだな。これを使えればみんな喜ぶだろうな。なかなかそういうわけにはいかないが」

「ファントムが黙ってないから?」 

「それもあるが……。『電気』を作るにはその元となるエネルギーが必要なんだ。でも、この星で私たちが手に入れることができるエネルギー資源は少ない。せいぜい、植物油のバイオ燃料があるくらいだ。石油どころか石炭さえない」

「セキユ?」

「燃える液体だ。大昔に死んだ生物の死骸が変化してできる」

地球人テランが移住する前は、この星には生物がいなかったとバーニィがいってた。でも、いつかこの星にもその石油っていうのができる日がくるんだよね」

 ヨミが笑った。

「まあ、いつかはな。石油ができるには何億年もかかるんだよ」

「何億!」

 僕には見当もつかない単位だ。

「じゃあ、この『電気』はどうやって作っているの?」

「この星の北半球の地下に氷の層があって、そこに大量のメタンという物質が蓄積されている。そのメタンから水素という気体を取り出して、それを燃料にしているんだ。正確には水素と酸素を反応させる、燃料電池という方法なんだが――」

 僕の表情を見て、ヨミは苦笑した。

「まあ、細かなことはまた追って教えてやる。問題は、この星で唯一の天然資源であるそのメタンをファントムが握っているということだ」

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