本気でかからないとつぶされるわよ その10
「コーディネーターって?」
僕の質問にヨミが答える。
「地球人と私たちの間に立って、交渉を行う人たちだ。多くは医者で構成されている。地球人の意向に対して、なるべく私たちに害を及ぼさないように調整する。お前の父親も元コーディネーターだ」
またか。父さんはいったい何をやってきたんだ。
「そして、西部地区のコーディネーターを束ねているのがビル・レッドフィールド」
「まさか、レッドフィールドがわざわざ出向いてくるなんて」
つぶやくフランチェスカにバーニィが二十二口径の薬莢を手渡した。
「こめかみに至近距離から二十二口径の銃創。一発だけ排莢された薬莢。どういう意味か分かるか?」
バーニィは自分の銃を抜くとシリンダーから弾を全て抜き取って一発だけ装填した。銃身を元に戻して、シリンダーを回転させる。
「この状態でふたりの人間が交互に自分のこめかみに向けて引き金を引く」
「イースタン・ルーレットか。弾が出れば死とともに終わる、命を賭けたゲーム」
淡々とクリスが告げる。
「うげっ」
キャットが顔をしかめた。
「そうだ。レッドフィールドはそいつがお気に入りなのさ」
でも、それって――。
「それって、半分の確率で自分も死ぬってことだよね」
「その通り。だが、レッドフィールドはこれまで負けたことがない。たぶん銃に仕掛けがしてあるんだろう。それはともかく、俺は奴がここに来たと踏んでいる。それだけ重要なものがここにあったからだ。お嬢ちゃん、あんたはとんでもないものに手を出したんだよ」
「ドクター・マーシュ」
ヨミの瞳が暗さを増す。
「あんたいったいどこまで知っている、お嬢ちゃん」
「お前と同じくらい。そして、今回の襲撃についても、たぶんお前と同じ推論を立てている、バーナード・アリソン」




