本気でかからないとつぶされるわよ その8
それから僕たちは全員で墓穴を掘った。
幸い道具には困らなかった。鉱山の裏手の比較的土が軟らかい場所を選んだけど、それでも七つの墓穴を掘り終わったときはもうすっかり日が暮れていた。ヨミも小さい体で、土まみれになりながら一心にシャベルを振るっていた。
夕食後、僕たちは鉱山の広間に集まった。今後の方針を決めなければならない。みんなが椅子に座ると、バーニィが口を開いた。
「俺とTBはこのままドクを追う。坊やを連れて行くかどうかはまだ分からん」
「バーニィ!」
僕が抗議しようとすると、ヨミが口を挟んだ。
「待て。ドクを取り戻すことについては私も賛成だ。だが、本当にドクがファントムに連れ去られたか確証がない。アリソン、何か私に隠していることはないか」
緊張を伴った沈黙が訪れた。
「どういうことだ」
「疑問点がふたつある。私の仲間の傷はファントムの銃によるものじゃない。私たちの、火星の銃によるものだ。襲撃したのはいったい誰なんだ。それと、フランチェスカとクリスはなぜ、そしていつここへ来たんだ」
バーニィは溜息をついて首を振った。
「フランチェスカたちをここへ向わせたのは俺だ。俺たちとは別ルートで向わせたんだよ。お前たちの出方が分からなかったからな。遊撃隊を動かすのはセオリーだ」
フランチェスカがあとを続けた。
「私たちが到着したのは昨日の午後よ。その日の夜にバーニィたちと町で落ち合う予定だった。町に着くとすでにあなたの仲間がファントムに撃たれていた。町の人から事情を聞いてここに向ったの。そのときにはもう……」
「ヨミ。俺たちがここを襲って、いったい何の得がある」
クリスが淡々とした口調でたずねた。
「そんなことはいわれなくても分かっている。だが、襲撃したのが誰なのか分からない以上、お前たちを信用していいか判断ができない」
ヨミが親指の爪を噛む。珍しく自信のなさそうな顔だ。
急にTBが立ち上がって、ポケットから何かを取り出すと、指でヨミのほうに弾いた。ヨミの顔の前で小さな黒い霧が瞬時に発生する。ヨミが差し出した手のひらに落下したのは空薬莢だった。
「これは……」
「二十二口径だな」
バーニィがヨミの手元を覗き込んだ。みんながヨミの周りに集まっている。
「これをどこで?」
フランチェスカがTBを振り向くと、TBは地面を指さした。遺体の側には薬莢がたくさん落ちていた。
バーニィの指示が飛ぶ。
「みんな、銃を出せ」




