表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第三章 馬鹿みたいだって思うでしょうけど
25/127

馬鹿みたいだって思うでしょうけど その10

 僕には手のほどこしようがなかった。

 背骨の骨折、内臓の損傷、そして、木材が右胸に突き刺さって、出血が止まらない。たぶん肺まで達している。

 地面に横たわったマックスはぜいぜいと濁った息を吐きながら、胸元のポケットから手帳を取り出すと、側にひざまずいているヨミに渡した。

「この機体の設計図……あとに続く者に渡して……」

「喋っちゃだめだ」

 僕はなんとか傷口からの出血を抑えようとしていた。バーニィとキャットの乗った馬がやってきて、ふたりが降り立った。僕はバーニィを振り返った。

「バーニィ、この町の医者を」

「道具を持って、今こっちに向ってる」

 バーニィとキャットが僕のそばに立っているTBの隣に並んだ。

 マックスは僕を見て微笑んだ。

「ありがとう……でも、分かってる……ジ・エンドだ」

 僕には何もいうことができなかった。

「バーニィ、一発で楽にしてくださいっていいたいところなんですけど……銃は苦手なんです」

 そういうと、マックスは右手をヨミのほうに差し出した。

「頼む」

 だめだ。僕はそういいかけた。僕はそういうべきなんだ。でも、何もいえなかった。

「これでもう思い残すことはないから」

 ヨミはマックスの手を握りしめた。

 キャットがうしろを向いて、ガッ、と地面を蹴った。

 やがてマックスの手から力が抜けた。ヨミは握っていた彼の手を胸元に置き、もう一方の手もその上にそっと重ねた。

 ヨミは涙を見せるでもなく、怒りをあらわにすることもなく、ただじっとマックスの胸に重ねられた手を見つめていた。

 黒い瞳がいつもよりも暗さを増している。

 彼女はつぶやいた。

地球人テラン、許さない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ