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パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第三章 馬鹿みたいだって思うでしょうけど
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馬鹿みたいだって思うでしょうけど その9

 ガガガガガ、と荷車が立てる派手な音を背後に聞きながら、僕はチェスに拍車を入れた。

 左腕に巻きつけたロープが食い込む。ロープの先には荷車が繋がれていて、その中にヨミが乗っている。小さな木箱に車輪をつけただけで、乗り心地は最悪のはずだ。振り落とされないように箱の横板に必死にしがみついている。

 チェスの全力疾走は一分が限界だ。それ以上走らせると足と呼吸器がやられる。でも、それだけあればなんとかマックスに追いつけそうだ。僕はロープを握った左手に力を入れた。

 問題は次の光の落下に間に合うかどうかだ。間に合わなければ僕たちもただでは済まないだろう。

 マックスの機体はかなりふらついているけど、なんとか飛んでいる。あともう少し。そう思ったとたん、突然体が浮いた。

 岩場だ。

 しまった。

 チェスは段差を難なく飛び越えて着地したけど、ヨミは? 

 うしろを振り返ろうとした瞬間、バキッと木が裂ける音がして、左手が軽くなった。

 荷車が地面に叩きつけられて、車輪と、ロープが繋がった前面の板が弾け飛ぶのが見えた。

 だめだ。ヨミを受け止めないと。

 チェスから飛び降りようとしたそのとき、僕の視界の隅を黒い影が横切った。

 人? 

 その人影は、空中に放り出されたヨミの乗った木箱をキャッチすると、そのまま猛烈なスピードで走り出した。

 TBだ。

 木箱を左肩に載せたまま、驚異的な速度でチェスと併走している。ありえない速さだ。

 ザン、ザン、ザン、と大きなストライドで地面を刻んでいく。あっという間にチェスを追い抜き、マックスの機体の少し向こう側で急制動をかけた。砂埃が舞う。

 同時にヨミが飛び降りて両手を空に向けて差し出した。彼女の手から黒い霧が奔流となって流れ出し、機体のはるか上空一帯を覆う。

 その直後、再び光の柱が降り注いだ。

 バチバチと耳をつんざくような音が響き渡り、黒い霧の覆いを幾筋もの稲妻が走る。間に合った。あとは機体が無事着陸すればいいだけだ。

 でも、そうはならなかった。機体のふらつきがどんどん大きくなって、光の柱に触れた方の翼が折れた。機体はくるくると回転しながら落下して、あっという間に地面に激突した。

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