表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第二章 これを取りに必ず戻ってらっしゃい
14/127

これを取りに必ず戻ってらっしゃい その6

 やがて食事が一段落すると、男も女も食器を持って立ち上がった。近くの小川に洗いに行くそうだ。僕とTBも手伝おうとしたが、皆から一斉に座っていろといわれてしまった。

 テーブルには僕とTB、バーニィの三人が残った。TBは小さな女の子ふたりにまとわり付かれて困った顔をしている。なぜかすっかりなつかれたようだ。

 誰かが僕のうしろから酒瓶をテーブルの上に置いた。バーニィが声をかける。

「ジェシー、気が利くじゃないか」

 ギターを持った老人が僕の隣に座った。

「リタ、エマ、お母さんが呼んでるわよ」

 バーニィの部屋にコーヒーを持ってきたフランチェスカがやってきて女の子たちに告げると、彼女たちはTBに手を振って走り去っていった。

「あら、先を越されちゃったわね」

 フランチェスカは抱えていたグラスをテーブルに置くと酒瓶に手を伸ばし、酒を注いで皆に渡した。

 老人が僕のグラスに自分のグラスをカチンと合わせる。深い皺の奥で優しそうな眼が光っている。

 ひと口飲んでみた。喉が焼けるように熱い。思わず僕はむせてしまった。

「あんたにはまだ早かったかの」

 確かにそうらしい。正直いって僕にはこれのどこがおいしいのかさっぱり分からない。老人はおいしそうに酒を口に含んだ。僕には見当もつかないけど、マッコイ爺さんよりももっと歳をとっているみたいだ。

「おじいさんも盗賊なの?」

 老人は大きな声で笑った。歯が何本も抜けている。

「私たちは全員が盗賊じゃないのよ」

 フランチェスカが老人のグラスに酒を注ぎながらいった。

「ジェシーは陶芸家よ。あなたが飲んだコーヒーのカップは彼が焼いたの。私たちの多くは何かを作って町で売ったり、荷馬車の護衛をしたり、そうやって生活しているの。この人みたいに無茶やって賞金がかけられているのはほんの数人」

 フランチェスカに指さされて、バーニィは苦笑した。

「義賊といってほしいな。それに、ジェシーだって昔はかなり無茶したらしいぜ」

「さてな。昔のことはもう忘れたわい」

 僕はバーニィに向き直った。

「ここの人たちは何かの目的があって集まっている、そうなんでしょう」

 フランチェスカもバーニィを見た。

「この子には知る権利があるわ、バーニィ」

「だが、知らずにいたほうが幸せな場合だってある。ドクはこいつに何もいわなかった。関わらせたくなかったんだ」

「もう関わってしまっているんじゃない?」

 バーニィは溜息をついた。

「俺たちと奴らとはもともとは同じ集団だった」

「――『アーム』」

 僕がそうつぶやくと、フランチェスカが驚いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ