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パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第十三章 僕はそれをいろんな人から教わった
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僕はそれをいろんな人から教わった その5

「被害状況は」

 カウントの指示にシルが報告する。

「『天龍』の居住区が破損。人的被害は不明です。『天龍』のデータがネットワークから隔絶されていきます。詳細が把握しにくくなっています」

「東部地区の奴らめ」

「いったい何を考えてるんだ」

 ブーンとロバートが口々に毒づく。カウントが口を開く。

火星人マーシャンズにステーションまで侵入されたのは初めてだったからね。たぶんパニックになったんだろう」

「それにしたって、自分たちのステーションを攻撃するなんて……」

 といいかけて、イルザは、はっとシルのほうを向いた。

「シル、デブリは」

「四分後に南部地区のステーション『スルガ』に先ほどの攻撃で発生したデブリが接触、破損が発生します」

「『スルガ』に、人は?」

「無人です」

「わかったわ。それで?」

「『天龍』のデブリが『スルガ』に接触、それにともなって大規模なケスラーシンドロームの発生が予想されます」

 さっと、カウントの表情が変わった。

「シル、デブリの『ノード・ワン』到達予想時間と被害予想を」

「デブリ到達予想時間は今より十分後、それ以降は九十分周期で規模を拡大しながら当ステーションに接触します」

 シルが、僕たちの目の前の空間に映像を浮かび上がらせた。

 火星上空三百キロメートルの低軌道上に三つの低軌道ステーションが並んでいる。ここ西部地区の『ノード・ワン』、東部地区の『天龍』、南部地区の『スルガ』。『天龍』で発生したデブリはまず『スルガ』に到達し、そこケスラーシンドロームというデブリ同士の衝突で加速度的にデブリが増殖する現象を起こす。そして、膨大なデブリがこの『ノード・ワン』に襲いかかることになる。

 猶予はあと十分。その後も、デブリは火星の低軌道をぐるぐると周回しながら九十分単位で何度もここに到達する。

「くそっ、なんてこった」

 ロバートがうめく。シルが続ける。

「複合デブリ第一波よる損害予想です」

 またもや空間に映像が浮かび上がり、ステーションの図面のようなものと、被害箇所、被害の度合いが表示された。僕にはよく分からなかったけど、赤い印がたくさんついている。

「ケスラーシンドロームの軌道があまりにも複雑で正確な予測が困難です。六十三パーセントの確率で生命維持問題なし。九十五パーセントの確率で火星軌道周回速度が低下。軌道を逸れて落下します」

 その言葉に、ステーションの中は一瞬静まり返った。

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