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パンプキンとカカオ  作者: Han Lu
第十二章 俺たちに残されたただひとつの道だ
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俺たちに残されたただひとつの道だ その8

 さらに三日後。

 僕とヨミはアナサインド・テリトリーの中心地にいた。ドーム型の都市がいくつもあった。どれもかなり痛んでいて、透明なドームが崩れているものもあった。もちろん、人の気配はまったくしない。大昔に打ち捨てられた地球人テランたちの街。そのなかに、ひときわ大きなドームがあった。それだけがなぜか植物に覆われている。そこが目的地なのに、僕たちはその手前数ヤードのところで立ち往生してしまった。透明の膜のようなものがあって、先に進めない。

「ファントムのめぐらした防御壁だな」

 ヨミが目の前の見えない壁を触りながらいった。

 しばらく待っていると、ドームの入り口が開いて、カウントが現れた。こちらに歩いてくる。難なく壁を通り抜けて僕たちの前に立った。

「ようこそ。ここがセンターの入り口だよ。これを胸に付けて」

 カウントは僕たちに薄いカードのようなものを手渡した。胸に当てると、それはぴたりと服にくっついてしまった。

「ここはいろんなセキュリティシステムがあるからね。それがないと面倒なことになる。ちなみに、効力は今日だけだよ。さあ、行こう」

 僕たちはカウントのあとについていった。今度はすんなりと見えない壁を通り抜けることができた。

 建物に入ると、僕たちは長い階段を下りていった。しばらくすると、トンネルのような場所に出た。そこには楕円形の形をした乗り物が置かれていて、僕たちはそれに乗り込んだ。向かい合わせのシートに座る。僕とヨミが並んで、向かい側にカウント。四人乗りらしい。入り口が閉まり、乗り物は音もなく動き出した。

 フィーンという風を切る音のほかには何も聞こえず、振動もしない。まるで何かつるつるしたものの上を滑ってるみたいな感じだ。

「これはどうやって動いているの」

 ライブラリでカウントの話を聞いてから、僕は動くものを見るとそれがどういうエネルギーを使っているのかが気になるようになっていた。

「MAに載っているのと同じ発電機で電気を作って、磁場を発生させているんだ。だからエネルギー源は水素と酸素だよ」

「速い……」

 外は真っ暗なトンネルだったからよく分からないけど、たまに通り過ぎる灯りが一瞬で後方に過ぎ去っていく。

「ほんのわずかに地面から浮いて滑っているんだよ。リニアっていうんだ。もう何百年も前からある技術なんだけどね」

 やっぱり地球人テランの技術はすごい。こんなものを何百年も前に作っていたなんて。

 乗っていたのは十分ぐらいだろう。リニアを降りた僕たちはいくつもの扉を通り、長い廊下を歩いた。扉を通るたびに、緑色の光線が僕たちの胸に付いたカードの上を照らした。たぶんこれで認証を行っているんだろう。やがて、真っ白い壁の小さな部屋に通された。

 そこにはふたりのファントムがいた。どちらもヘルメットを被っている。

「そこで立ち止まって」

 ひとりが手に持った機械を僕の体に向けた。機械から音がして、ファントムが僕に手を差し出した。

「ポケットの中のものを」

 僕は上着のポケットからドクター・マチュアにもらった懐中時計を取り出した。

「すまないが、念のため預からせてもらうよ」

 僕がためらっていると、カウントが側に来て、懐中時計に手を伸ばした。ほんの一瞬、ヨミと視線を交わす。下手に動くな。そうヨミの目はいっていた。

 カウントはそっと僕から時計を取り上げると、機械を持っていたファントムに渡した。

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