俺たちに残されたただひとつの道だ その6
次の日、バーニィは僕、TB、ヨミ、キャット、フランチェスカ、クリスを集めて作戦の最終確認を行った。
「バーニィ、サキの姿が見えないけど」
「ああ。彼女には東部地区に行ってもらっている。今回の作戦の成否は彼女にかかっているといっていい。それと、お前だ。レン」
バーニィの作戦の全容は『アーム』全員には知らせない。どれだけ人が多くても、ファントムには太刀打ちできないからだ。可能性が低くても確実に対抗できる手段でいくしかない。たぶん『アーム』のみんなからは不満が出るだろうけど、仕方がない。あとはバーニィがみんなを説得できるかどうかだ。
その日の夜、バーニィは『アーム』全員を集めた。アレンの店には入りきらなかったから、町で一番大きな酒場を貸し切った。酒場の主人はまだ町に残っていたけど、どうせ客は来ないから好きに使ってくれといってくれた。それでも、酒場は満員になった。
「俺たちはいったん西部地区を離れる」
みんなの前に立ったバーニィがそう告げると、いっせいに不満や抗議の声が上がった。
「どういうことだ、バーニィ」
「このまま黙って見てろってのか」
みんなが口々に叫び始める。
「静かにしろ、てめぇら!」
バーニィの一喝で、みんな口を閉ざした。
「いいか。俺たちの力では絶対にファントムには勝てない。奴らの拠点にもぐりこむことさえできないんだ。だからここはいったん退く。別の地区に渡って再起を待つ」
「本当にこのまま何もしないつもりなのか」
誰かが声を上げた。バーニィは何もいわない。
「手は打ってある」
みんなが一斉に声のしたほうを向いた。沈黙を破ったのはヨミだった。部屋のうしろのほうで僕の隣に座っていたヨミが立ち上がる。
「私が母の息の根を止めに行く」
ざわめきが広がっていく。
「いったいどうやって……」
「バーニィ、説明してくれ」
両手を広げて、バーニィが話し始める。
「隣のレナード・マーシュがファントムの拠点に入る手はずを整える。みんな知っていると思うが、レナードはドクター・マーシュの息子だ。そしてTBでもある。今はこれ以上詳しいことは話せない」
「しかし、子供たちだけにすべてを託すなんて……」
誰かが声を上げて、バーニィがそれに答える。
「ああ。そいつはあまりも情けない話だ。だがな、残念ながらこの子たちに託さなければならないのが現実なんだ。これを成功させるためには俺たちがここを引き上げると奴らに思わせなければならない。ここを救いたいと思うのなら、俺のいうとおりにしてくれ」
みんな黙り込んでしまった。
「バーニィ」
ジェシーが立ち上がった。
「ほかに方法はないんじゃな」
バーニィがうなずく。
「これが俺たちに残されたただひとつの道だ」




