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言葉を考える

皆さん。『間違い』がわかりますか?

作者: 鶴舞麟太郎

 高校時代、自習監督にやってきて、いつもコンクリートの壁を殴っている先生がいました(※趣味の空手の訓練だそうです)。その先生は数学の先生だったのですが、口癖は「十個」でした。





 さて、いきなりですが問題です。



Q 次の文から間違いを探しなさい。


『私の職場では、栃木とちぎ県出身者と茨城いばらき県出身者が、どちらの方が田舎いなか者かみにくい争いをしているけれど、都民の私からしたら五十歩百歩ごじゅっぽひゃっぽだ。』




 あ、「鉤括弧かぎかっこがあるのに句点(。)がついている(※問題()だからです)」とか、「人を馬鹿にするような話は倫理的に間違っている」とか、「そもそもお前都民じゃないだろ!」とかいうのは、やめてください。















A 『五十歩百歩ごじゅっぽひゃっぽ


「当たり前だろ」と思った方や、前振りからピンと来た方。流石です。


 まだよくわからない方。ヒントです。違っているのは漢字でも、故事成語の用例(意味)でもありません。












 これ、正しくは、『五十歩百歩ごじっぽひゃっぽ』なんです。




 ○ ごじっ(●●)ぽひゃっぽ


 × ごじゅっ(●●●)ぽひゃっぽ




 嘘だと思ったら、辞書を引いてみてください。

 ついでに言うなら『十』の読みに、『じゅう』『じっ』はあっても、『じゅっ』は存在しないはずです。




 実は、ここは言葉の変化が完了しようとしている最前線なのです。


 実際、辞典ではまだ認められていませんが、ワープロでは『ごじゅっぽひゃっぽ』と打っても『ごじっぽひゃっぽ』と打っても『五十歩百歩』と変換されます。しかも、最近よくありがちな『(○○の誤用)』などという注記も出てきません。


 ですから、私は辞書の表記が改訂される日は相当近いのではないかと考えています。

 ただ、『現在はまだ正則になっていない』ということは知っておいたほうがよいでしょう。



 まあ、こんなの、ほとんどの人にとってはどうでもいいことなんですが、中には「どうでも良い」では済まない人たちがいます。


 それは誰でしょう?




 受験生です。




 受験に出される漢字は紛らわしいものばかりです。


『自分が間違えた漢字が受験に出る漢字。間違えなかった漢字は受験に出ない漢字だと思え』なんて言葉もあるそうです。


 受験ではすごく意地悪な漢字の読み書きがたくさん出てくるのですが、出てくるものは全て常用漢字なので文句も言えません(※知人の国語教師によると「読みの方がより凶悪だ!」そうです)。


 特に『五十歩百歩』なんか、全て小学校の2年生までに習う漢字です。

 間違うわけがないと自信満々に答えて間違える。国語の入試問題制作者が最も喜びそうなツボを突いています。



 皆さん。『十個』は『じっこ』で、『五十歩百歩』は『ごじっぽひゃっぽ』ですよ。





 似たようなヤツで『雰囲気』(○ふんいき ×ふいんき)なんかもありますが、これは迷ったら『雰』が『分』と同じ読みをすると考えれば、間違いません。


 ちなみに、これも変化の途中にあるんですが、こちらは漢字がはっきりしている分だけ、『正しい』とされる時期は遅れそうです。


 でも、可能性がないわけじゃないんですよ。


 例えば、冬を代表する花の1つ『サザンカ』は漢字で書くと『山茶花』です。これは、1文字ずつ分解すると『さん』。


 そうです、昔『山茶花』は『サンザカ』だったのです。それがいつの間にやら変化して現在に至ります。


 だから『ふいんき』だって、正しいとされる日が来るかもしれませんよ。



 残念ながら、これを読んでいる人のテストには間に合いそうにありませんが……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あ〜私が大好きな誤用の話ー‼︎ 山茶花がたとえにでてくるとは!そこは私知りませんでした! 言葉は生きてるから仕方ないんですよね。そして変わるからこそ私たちは楽しいのですが、受け入れられない…
[一言]  ウナギの話からマイページを経由して飛んできました。  この手の変化の中で私が気になってしまうのが「話し(名詞)」です。名詞なら「話」で、動詞は語幹が「話(はな)」のサ行五段活用だから「話す…
[良い点] いつも楽しいエッセイありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ 当然余裕なのです(*´艸`*) でも雰囲気はずっと、ふいんきと発音していて、間違いと知った時はショックでしたね(^_^;) 変換…
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