第7話【体育祭にて③】
最終競技、クラス対抗リレー。
足の速い遅い関係なく、クラス全員強制参加のムチャぶり競技。
女子はグラウンド半周の五十メートル、男子はグラウンド一周の百メートル、アンカーは二百メートルとグランド二周も走らなきゃならない。とはいえクラスによって男女比率も人数も違うので、距離を合わせるために二回走る人を作って調整している。
当然早い人達にその役が任され、美穂ちゃんや川内クンは二回、わたしは遅い方なので一回だ。
クラス全員参加と言うだけあって、どこのクラスも応援の熱がすごい。
どんどんみんながコースを走り出していく中、わたしはアンカーから二番目とドキドキしながら順番を待つ。
本当ならプレッシャーがかからない早目の順番を選ぶんだけど……悲しいかな。
川内クンからバトンを受け取りたくて、この順番を選んだのだ。
せめて緊張しない順位でバトンを……と願ったが、神様はイジワルだ。
どのクラスも抜きつ抜かれつの、ちょーデッドヒートの大混戦。
バトンは川内クンへと手渡され、次はわたしの出番。心臓バクバクでコースに立つ。
もう何も考えられない。
腕を後ろに伸ばし、川内クンからのバトンを受け取り走り出す。
一並びに走り出したはずなのに、わたしだけがどんどん遅れていく。
たった五十メートルの距離だというのに、まるで水中を走ってるみたく、身体が前へと進んでくれない。
そしてクラスのみんなが、一生懸命応援してくれる中……やってしまった。
足を取られて大コケしたのだ。
聞こえてくる落胆の声に、笑い声やわたしを憐れむ声……。
後続の人達がどんどん抜いていき、三位だった順位は八位と最下位にまで落ちてしまった。
死にたい……。今すぐ、死んでしまいたい。
「────矢杉ぃっ、諦めるなっ!」
すべての雑音をかき消す、一際大きな叫び声。
それはアンカーで待つ郡司のものだった。
他のクラスのアンカー達はこの間に、バトンを受けとってスタートしていて、コースには郡司一人が届かぬバトンを待っていたのだ。
わたしは痛みを堪えて立ちあがると、一心不乱に郡司へと向かって走りだした。
「ごめん、郡司!」
精一杯腕を伸ばしバトンを手渡す。
「──任せろ、全員抜いてやる!」
そう言い残すと郡司は、風を切るように駆け出していった。
わたしは美穂ちゃんに肩を支えられ、彼の姿を目で追い続ける。
最終ランナーはトラック二周の二百メートル。すでに先頭とはトラック半周もの差がついていた。
だけど郡司はその大きな身体を前傾姿勢に、グングン他のランナーに追いついて行く。
一人……また一人抜いていく姿に、クラスなど関係なく歓声が湧き起こり始める。
先頭ランナーはすでに最後の周回。
どう考えても追いつくはずが無い。
なのに郡司は諦めずに走り続け、先頭が最後のカーブを抜けた時には、背中に手が届くまで追いついていた。
レースを実況している放送部の人も、我を忘れて雄叫びを上げるほどヒートアップする中。
彼は宣言通り全員を抜き去り、一位でゴールテープを切ったのだ。
他のクラスがまだ走っているにも関わらず、狂喜乱舞で郡司に駆け寄り喜びあうクラスメイト。
人生最悪の日を迎えるはずだったのに、彼の頑張りがわたしを救ってくれたのだ。
美穂ちゃんに抱きかかえられ、悔しさと恥ずかしさと感動で涙が止まらないわたしは、
「どうしよう…………郡司の事、ちょーカッコよく見えるよぉ」
無意識に、そう呟いていた……。
次回「灰かぶり姫に憧れて……」は、5/12(日)に更新予定です!
ブログには更新の際に4コマも載せているのでよかったらそちらも併せて見てみてください!
ブログはユーザーページのサイトから見ることができます。
また、5/9(木)には「伝説の鍛冶師」の更新もします!
お楽しみに!




