第5話【体育祭にて①】
そして次の日……体育祭当日。
本当は休みたかったけど、あれから何度も美穂ちゃんからメッセージ来ていたのに、既読すらする気が起きなかった。
このままだと合わせる顔がない。
だって美穂ちゃんは何一つ悪く無いんだもん。
直接会って謝んなきゃ……。
「────陽菜!」
教室に入るやいなや、美穂ちゃんの呼び止める声。
わたしは気づかれない様に、顔を伏せて挨拶する。
「…………ごめん、怒ってるよね? アタシ……本当にごめん」
聞いた事の無い彼女の声のトーンに、わたしは慌てて言葉を口にする。
「違うよ美穂ちゃん! 美穂ちゃん何も悪く無いじゃん! だって──?」
美穂ちゃんの驚く表情に、わたしは話す言葉を失ってしまう。
「陽菜…………ごめんね? こんなに…………」
そう言うと美穂ちゃんは下唇を噛み締め、「本当にごめん」っと呟いて教室を出て行ってしまったのだ。
ええっ、なんで?
──考える間もなく、答えが知らされる。
「どうしたの、その顔⁉ ヒナちゃん、まぶたパンパンじゃん!」
彼女が差し出した鏡には、まるで土偶みたいな腫れあがった目をした、ボロボロの自分が映っていた。
有り得ない。すっごいブスじゃん!
とはいえ、それもそのハズ。昨日は一睡もできず、朝まで泣いて過ごしたから……。
そしてギリギリまで悩んで、急いで用意して学校に来たから、自分がどんな顔をしているか気づいていなかったのだ。
「わたし……出る競技って団体だけだから、午後まで保健室で休ませてもらうよぉ。申し訳ないけど、ガンちゃんに伝言お願いしてもいい?」
気軽に引き受けてくれた彼女を後に、途中首にかけていたタオルを水道で濡らして、保健室のベッドに潜りこんだ。
本当はすぐにでも美穂ちゃんの後を追いかけたかったけど、こんな顔のままじゃきっと困らせちゃう。
運動神経の良い美穂ちゃんは出場競技を決める時、ガンちゃんに頼られてポイントが高い競技ばかりエントリーしていた。責任感の強い彼女の事だから、どんな状況でも出るだろうけど、少しでもフォローできればと短いメッセージとスタンプを送る。
濡れタオルでまぶたを冷やしつつ、教室から出ていく美穂ちゃんの事を思い出していた。
見たことないくらい悲しげで辛そうな表情だった……。
────ダメだダメだ!
涙がこみ上げてくるのをグッと我慢し、違う事を考える。
ああ……実はすごく疲れていたんだな。その後の記憶がまったく無かった。




