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灰かぶり姫に憧れて……  作者: はるあき夢逢
4/8

第4話【カラオケにて】


 そしてカラオケ当日……事件が起こる。

 

「だからシツコイって! 陽菜、ゴメン。アタシ帰るわ」

 

 そう言うと美穂ちゃんは、カラオケ代にと二千円を手渡し、部屋を飛び出していった。 

 

「ちょっと、待ってよ桑原さん! 源人わりぃ立替えといて? 矢杉さんもゴメン、また明日」

 

 矢継(やつ)(ばや)にそう言い残し、美穂ちゃんの後を追っていく川内クン。

 わたしと郡司は突然の事に、呆気(あっけ)に取られてその場から動けず、ただただ見送るしかできなかった。

 なんでこんな事に?

 

 ことの発端(ほったん)は川内クンが、美穂ちゃんに唄う曲を進めたのが始まりだ。

 

 何故か川内クンは、美穂ちゃんの好きなバンドとかアーティストに詳しく、彼の唄った曲も全部そうだった。

 会話もそのバンドのアルバムとかアーティストの話で、詳しくないわたしは(うなず)くだけ。

 そうなると知っているであろう、美穂ちゃんにばかり話かけていく。

 きっと彼女はわたしに気遣ってくれたのだろう。川内クンが話しかけてきても美穂ちゃんは、言葉数少なめに話を切り上げて、話題(わだい)を変えようとしていた。

 

 それに気づかず同じ話を続けるもんだから、どんどん変な空気に……。

 

 挙げ句に川内クンは美穂ちゃんにと勝手に曲を予約して、「これ、桑原さん好きでしょ? 唄ってよ?」とマイクを渡したけど、美穂ちゃんは気分じゃないからと断った。なのに川内クンは「良いじゃん、聞かせてよ?」と再プッシュ。

 そうして美穂ちゃんは爆発してしまった。

 なんでこんな事に……あまりに空気読めなさすぎでしょ。

 

「…………そっか。川内クンって、美穂ちゃんが好きなんだ」

 

 不意(ふい)に出た言葉だったけど、妙に納得してしまった。

 ああ……そうなんだ。マジですかぁ……わたしの恋のライバルは、美穂ちゃんなのですかぁ。

 

「恒星が桑原をか……知らなかったな」

 

 そういえば郡司……あんた居たんだ。存在忘れてたよ。

 

「そして矢杉さんは、恒星の事を好きだったのか……」

 

 どれだけ直球ですか! てか顔に似合わず(さっ)し過ぎでしょ? 

 むしろゴリならではの、野生の勘ってヤツですか⁉︎

 

「そうか。あの桑原が、用もなく誘ってくるから変だと思っていたが、矢杉さんを応援したくってって考えれば理解だな……」

「ねね? わたしが川内クンの事、好きって言ってない」

 

 好きでいて良いのか分からないけど、少なくともこのまま郡司なんかに、わたしの気持ちを知られたくない。

 すると郡司はおもむろに、棒付きキャンディーをわたしに差し出してきた。

 

「すまん。赤の他人が(かん)ぐる事じゃないよな? 忘れてくれ。これは()びだ。辛い時は甘い物を食べると、少し気分が楽になるらし──」

「────だからっ! 好きとか言ってないじゃん。なんで勝手に決めつけて、(なぐさ)めようとすんのよ? ツラいとか意味わかんないし!」

「だって、矢杉さん。………………泣いてるから」

 

 その言葉に驚き、自分の顔に手をあて確認する。

 ──嘘でしょ?

 わたしは指で受け止めれない程、めちゃくちゃ涙が(あふ)れ出ていたのだ。

 

「辛いよな……。好きな相手が、自分じゃない誰かを見ているのって……」

 

 なんなの? 郡司のクセに、郡司のクセに……!

 ここがカラオケルームで良かった。

 だって……ビックリするくらいの大声で、泣きだしちゃったと思うから……。

 

 多分、二時間くらいかな?

 郡司は何も言わず、ずっと一緒に居てくれた。

 

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