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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

『醜い怪物』

むかし、あるところにそれは醜い怪物がいました。

怪物は町外れの森にある岩の洞窟をねぐらにし住んでいました。


とてもおぞましい姿をしたその怪物は、人の肉が大好きでした。


怪物は町にやってくると骨や石で作った鈍器を使い、男、女、子供、老人と見境なしに生け捕りにし、ねぐらに運んできてはおいしく焼いて食べていました。


残った骨は武器や飾りに、剥がした皮膚は縫い合わせて衣服に使いました。


怪物は、おぞましく醜い容姿のせいで物心つく前から親に捨てられ、家もない、食べ物もろくに食べられない貧しい生活をしていました。


怪物が町の人たちに近づこうとすればモノを投げられ、《こっちに来るな、醜いケダモノが!》と酷い罵声を浴びせられました。


いつしか怪物は町を抜け出し、人のいなくて静かな、森の洞窟に住むようになりました。


最初、怪物は森の動物たちや湖の魚たちを食べながら生活していましたが、だんだんそれにも飽きてきてしまいました。


もっとおいしいものはないかと、森を歩いていた怪物は森で迷子になった女の子を見つけました。


もう何日も立っているのが迷子の女の子はへとへとになっていました。


怪物が草影から見ていると、ついに女の子は力尽きて倒れてしまいました。


ガサゴソ、草影から出てきた怪物はゆっくりと女の子の方へ近づいていきます。


「…じゅるり」、女の子が死んだことを確認すると、怪物は恐る恐るその小さな腕にガブリッとかみつきました。


「おいしい!」

怪物はさらに女の子の肉にかぶりつき“モグモグムシャムシャ“と女の子を食べ始めました。


気が付くと、女の子は骨だけになっていました。


「もっと、このおいしい肉を食べたい」、怪物はそう思いました。


こうして怪物は、町に出ては人を”狩り”始めました。


しかし、そんなある日、怪物にとって最後の時が訪れてしまいました。


警官の銃撃を受け、瀕死の重傷を負ってしまったのです。


寒い冬の日の事でした。


脇腹を抑え、血を滴らせながらよたよたよろめき歩いていると石造りの大きな家が目に入りました。


窓から家の中を覗くと親子が暖炉の前で子供達と遊んでいるのが見えます。


今日はクリスマス、子供たちは親から受け取ったプレゼントを嬉しそうに開けています。


子供の内一人は怪物と同じくらいの年齢でした。


怪物はあの暖かそうな暖炉をしばらく眺めるとまた歩き出しました。


――――あぁ…血が止まらないよ。


もうろうとしていく意識の中、懸命に歩いていた怪物はついに固い敷石の上にうつ伏せになって倒れてしまいました。


もう起き上がる気力は残っていません。


やがて怪物は空から冷たい霙が降る中、誰にも見送られず息絶えました。


産まれてたった10年の生涯でした。


次の日、怪物の死体は埋葬もされず、森の中へボロ布に包まれたまま捨てられてしまいました。


――――Fin


2017.08.30.本文修正

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