恋の始まり?
そして学校が始まって数日。
「ん」
「はい?」
とある日の放課後、帰ろうと準備をしていた私の目の前に現れた男に、いきなりアドレスを渡された。
アドレスとはこれいかに。今ならLI○EのIDとかでいいのでは。…っていうか!
「私に?」
「そう」
私に春が訪れてしまった。誰だろうかこの人。同じクラスじゃないのはわかるけど。
「あの…」
「友達になってよ」
にっこりと微笑む素敵なイケメン。しかし話を遮られたことには真顔になる私。
「なんで私に?」
接点なんてないと思うんですが。
「気になったから」
ニコニコと笑い続ける彼。どこかで見覚えが…。
「沙百合 帰るよ!」
「え!?」
後ろから声がしたと思ったら、急に亜美に腕を引かれ何故か走ることに。
「ちょっと、亜美?!」
混乱する私を尻目に、腕を掴んだまま走る亜美。
「あの人やばい人だよ!隣のクラスの、危ないって噂の蒼井!」
やばい、危ない。…うん、何かとても危なそう。へぇ…そんな人がいたんだ。確かに茶髪で不良って感じだけど。…というか、この方向って…。
「亜美、何で靴箱行かないの!」
亜美は靴箱とは反対方向に向かっていた。遠回りするつもりかな?
「今は逃げようと思って!とりあえず教室から離れてるの!」
嗚呼、なるほど。
と、教室から一番遠い校舎端の階段を降りていくと、
「やっほ」
にっこり笑顔の不良の2人が待ち構えていた。あれ、この2人…前にキャンプで会った人達…1人は確か、ケイタ。
「うわっ、卑怯じゃない!蒼井!」
亜美が怒ったように叫ぶ。
ん?アオイ?
「え、亜美。アオイって…さっき私に話しかけてきた人だよね?」
「え?」
「あの人と違う人でしょ?」
だってアオイって人は、長すぎる髪を束ねてて…でも茶髪で…見たことある笑顔で…。あれ?
「ケイタ?」
亜美が『アオイ』と呼んだ人を良く見てみる。あ、うん、あの時のケイタだ。
「髪束ねただけで気づかないとか馬鹿かよ。つか、同じ学校なのに…」
どこが苦笑いで馬鹿にしたように笑うケイタ。どうしていいかわからないといった様子の男友達。困惑する亜美。そして、真顔の私。
これが、素敵な恋の物語の始まり………にはなりませんでした。
「おい」
Fin.