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異世界HERO  作者: AZ
9/20

探求の洞窟、レベル上げ(1)

ようやく、ダンジョンデビューです。

「はああああっ!」


袈裟斬りで斬り裂くと、『一角鼠』は真っ二つになって息絶えた瞬間、光の泡となって消える。

一角鼠がいたであろう場所には『魔石』が落ちていた。

指の第一関節ほどしかない小さな欠片だが、淡い赤色をしている。


「これで4匹目か・・」


今、俺たちがいるのはダンジョン『探求の洞窟』の第1階層である。

早朝4時に起きてから戦闘服に着替えて4人でやってきた。

早いのでジュエルにはキツイかと思ったのだが、思いのほかやる気だった。


『探求の洞窟』は、下っていくタイプのスタンダードなダンジョン。

中は思っていた以上に明るく、またそれなりの広さがある。

見て取れる場所は全部が土で覆われている。

しかも1層から5層はモンスターは単体でしか出ないのだから焦りもない。


「さすがは、タケル様です。余裕のある戦いでした。それに、正直驚いております」

「うん?何に驚いったって?」

「剣捌きでございます」

「確かに、素人とは思えない」


どういう意味だろう?

俺は普通に斬ったに過ぎないのだが・・?


「何人かの高ランクとされる冒険者を見てきましたが、全員が屈強な身体つきで、力押しで戦う人ばかりでした。タケル様のように、武器の特性を生かして戦う人をヒューマンで見かけたことがありません」

「非力なヒューマンは力強いことが『強さ』だと勘違いしやすいのに・・。まあ、少しは認めてやるよ」

「あ、ありがとう・・」


あまり褒められているように思えないが、お礼を言っておく。


「でも、力強さも『強さ』に変わりないんじゃない?」

「確かに、力強さも強さの一種ではあります。それにもかかわらず、どうしてヒューマンが一番非力と言われているのか。それには意味合いが違うところにあります」

「どういうこと?」

「魔族はこの際置いておくとして、他の種族がヒューマンより強いと言うのはどう思う?」

「元々の身体の作りが違うんじゃ・・?」

「いえ、ほとんど変わりません。元々の素質の違いはありますが、身体の作りは『違い』と言うほどの『違い』はありません。もしそうなら、他種族を『さらう』と言う行為が出来ると思いますか?」

「あ、確かにそうだ」

「ヒューマンの言う強さは見た目の強さを強調しますが、我々は、戦闘センスこそが個人の強さに繋がり、多人数での狩りなどでは『連携』を使います」

「戦闘センス?」


某格闘マンガで確か言っていたような気がするが、どう言ったもんだったっけ?


「まず、武術は自分の身体をフルに使いますが、一番大事なのはどういう動きが出来、どういう動きが出来ないかを知ることです。自分の手足のリーチや、反応速度などを知ることは得手不得手を知ることで自分の得意な戦い方に相手を巻き込むことが出来ますし、不得意な分野を強化するために何をすればいいかが理解しやすいのです。武器も同様です。使う武器の特性を理解することで戦術は変わります。こういう風に考えて戦うことを私たちは『戦闘センス』だと思っています」

「なるほど・・」


確かに、俺はシルバーブレードを使うとき、ただ、縦や横に振るのではなく円を描く様に遠心力を加えて振っている。

これは、シルバーブレードが切れ味の良い刃で『力で押し斬るタイプの剣』ではないからだ。

どちらかと言えば『引いて斬る』という感じだ。

それを俺は『なんとなくそういうモノ』だと感じて使っていた。

それが、『戦闘センス』と言うことなのだろう。


「じゃあ、次はみんなにそれぞれ戦ってもらうよ。まずは、ジュエルからやってみるかい?」

「やる・・の」


ムンと気合を入れるジュエル。

すると、セレスの耳がピクピクと動いた。


「あの岩の陰に一角鼠がいます」

「気配が分かるの?」

「先程、タケル様が戦った時に気配を覚えました。数は一匹です」

「いや、そう言うことじゃなくて・・ここから岩までの距離はかなり離れているんだけど・・」

「ハイ・エルフの索敵能力は500メートルくらいまでなら余裕で気配を探れます」

「・・・ちなみに、オウカは?」

「アタイは300メートルがやっとってとこね」

「いやいや、それでも十分スゴイよ」


やっぱ、耳の長さで違うんだろうなぁ。

そう言えば、冒険者たちの中に必ずエルフや獣人がいたのはこういう理由もあるのだろう。


「もう少し近づいてから、攻撃しましょう」

「そうだね。距離の調整はセレスに任せるよ」

「分かりました。では、少しずつ近づきます」


オウカの耳が反応したところでセレスが止まる。

と言うことは300メートルくらいの距離だと言うことだ。


「ここでどうでしょうか?」

「そうだね。まずはジュエルの魔法の精度を確かめたいしこの距離なら対応も効くしね。じゃあ、ジュエル。あの岩に向かって掌を向けて『プチ・ファイア』って唱えてみて」

「・・プチ・ファイア!」

「―――え?」


ジュエルの創り上げた『プチ・ファイア』は、ジュエルの半身を飲み込むほどの大きさの炎で、岩を一気に飲み込んだ。

ゴオオオオッと炎が唸るさまに、俺は茫然としてしまう。

俺が前に使った時のプチ・ファイアの3倍くらいの威力はあるだろう。

俺は心眼でMPの消費量だけ見てみると、『MP:32/38』になっていた。

つまり今の魔法に対しMPの消費量は6ポイント使っていたのだ。


「一角鼠が倒されました・・・」

「いや、確かに倒したけど・・」

「タケル様。これは一体・・」


セレスとオウカも驚きを隠せないようだ。

しかし、俺にはこの『現象』の『正体』がなんとなく分かった。


「多分だけど、これはジュエルの持つ特殊能力である『超魔力』が関係しているんだと思う」

「超魔力・・ですか?」

「初め俺は、この能力を見た時ジュエルのMPの高さから超魔力はMPを普通の人より高くするものだと思っていた。でも、今の威力を見て理解したよ。MPはジュエルの素質であって超魔力の影響じゃない。つまり、超魔力は呪文の威力そのものを上げることが出来る物ってことさ」

「ですが、そう結論を出すのは早計では?」

「いや、ちゃんとした『答え』があるんだ。ジュエルがプチ・ファイアを使った時、俺が使ったプチ・ファイアの3倍の威力があった、俺が使ったプチ・ファイアに使ったMPは2ポイント、ジュエルが使ったのは6ポイント。つまり、ジュエル本人は普通にプチ・ファイアを使っただけで、超魔力の能力はそれに反応して能力が発動し魔法の威力が上がったと言うことさ。多分、ジュエルが本能的に『一角鼠を倒したい』と言う思いに超魔力が反応したんだ」

「確かに、今の説明で理解できました」

「そうなると、気になることがあるんだ」

「なんでしょう?」

「もし、倒そうと考えずに相手に魔法を当てることだけに集中したらどうなるかってことさ」


俺の考えが正しければ、ジュエルの『超魔力』はとんでもない能力を秘めていることになる。


「セレス、もう一度一角鼠を探してくれるかい?」

「分かりました」


5分もすると、一角鼠は見つかった。


「ジュエル、倒す必要はないから魔法を当てることだけに集中して魔法を使ってみてくれるかい」

「分かった・・の」


ジュエルは掌を一角鼠に向ける。


「プチ・ファイア」


ジュエルの声とともに掌から炎が一角鼠を襲う。

しかし、威力は俺が使ったプチ・ファイアと同じだった。

心眼で確認すると『MP:30/38』になっていた。

つまり通常通りの2ポイント分だけが減っていた。


「セレス、止めを頼む」

「はい」


焼け爛れた一角鼠が襲ってくるも、その攻撃が届く前にセレスの槍で止めが刺された。


「ありがとう、セレス。それにしても、俺の考えた通りだったな」

「どういうことでしょうか?」

「普通にプチ・ファイアが使えたってことは、威力のコントロールが出来るってことだよ」

「ってことは、MPの消費をコントロールして威力も変えられるってことか?」

「そういうこと。簡単じゃないけど、3パターン・・・通常の威力の場合と2倍の威力の場合と3倍の威力の場合を使い分け出来ればとんでもない戦力になるってことだよ」

「確かに、その3パターンを自在にできるようになれば、もっと強い威力にも、もっと小さい威力にもできると言うことですね」

「だね。でも、今はまだ3パターンの使い分けを出来るように頑張ればいいよ。そのためには、通常の魔法と超魔力の魔法を交互に使うようにしていくのが1番だと思う」

「そうですね」

「分かった・・の」


一朝一夕でできることではない。まずは身体に慣れさせて徐々にやる方が良いと結論付けた。


「じゃあ、セレスとオウカの実力も見せてもらえるかな?」

「喜んで」

「まあ、しょうがないか・・」


結果から言うと、セレスの腕前はLv.1とは思えないほど洗練された動きで危なげなく一角鼠を倒した。

オウカは弓矢でも素手でも一角鼠を寄せ付けることなく倒していた。


「1階層は俺達には物足りないみたいだし、階層ボスを倒して次の階層に行ってみよう」


第1階層を進むと、1番奥に巨大な扉が見えた。

あの奥に階層ボスがいる。


扉に触れると、『ゴガガガガガ・・・』と床を削る様に開いていく。

しかし、中は真っ暗だった。

恐る恐る足を踏み入れると、扉の内側に足が着いた瞬間明かりが点いた。


「凝った仕掛けだなー・・」

「タケル様。います」

「本当だ・・」


緊張感がない感じに思えるかもしれないが、実際目の前にいるモンスターに俺は脅威を感じなかったのだ。


「ゴブリン・・か」


心眼で見ると、『ゴブリン』と表示される。

とりあえず、強さも確認してみる。


―ゴブリン―

Lv.3 HP:27/27 MP:15/15 ランク:F 

筋力:15 体力:19 敏捷:10 器用:3 知力:5 理性:2 幸運:1 

木の甲冑に身を包み、棍棒で攻撃してくる。


楽勝とまでは言えないが、脅威は感じない。

ここはジュエルのレベルUPのために犠牲になってもらおう、


「ジュエル。思いっきりのプチ・ファイアを撃ってみるんだ」

「分かった・・の」


掌をゴブリンに向ける。

すると、ゴブリンが向かってきた。


「――プチ・ファイア!」


ゴオオオオッと炎が唸りを上げてゴブリンを飲み込む。

炎が消えると、光の泡が舞い上がるのが見えた。

ゴブリンを倒したのだ。


「やった・・の」

「うん。よくやったね、ジュエル」

「本当に、よくやりました」

「まあ、余裕だな」


ゴブリンのいた場所には赤い魔石が落ちていた。


「そう言えば、この魔石ってお金に換金できるみたいだけど・・もともとどういうモノなの?」

「魔石は色によって使える用途は違いますが、私たちの生活に役立つものであることは間違いありません」

「街頭の明かりとか、料理を作るときの火の燃料になるとか、水をお湯に変えるとか・・」

「つまり、固形燃料みたいなものか」

「そう考えても間違いじゃありませんが、魔道具の材料にもなります」

「魔道具?」

「簡単なところで言えば、タケル様の身に着けている『ルーンメイル』も魔道具の一種となります」

「あ、そういうことか。通常の鎧に魔石を組み合わせることで『効果』与えるってことか」


この世界の武器や防具の特殊効果がどうやって付けられるのか不思議だったが、これで謎が解けた。

これが『完璧なモノ』を作るものが『魔石』だと言うなら疑ったかもしれない。

だが、そんな完璧なものなどなかなか手に入らないのが普通なのだ。

そして、『ある効果を与える』と言うことは『効果がでない』ものがあるのが『普通』なのだ。

だからこそ、ルーンメイルのように『物理防御』と『魔法防御』を魔石によって『効果』としてつけられたが、鎧がもともと持つ『耐久力』は変わらなかったのだ。

ここで驚くべきは、効果としてついているモノが『防御』であるにもかかわらず、鎧そのものの『防御』ともいえる『耐久力』には影響が出てないと言うことなのだ。

ここから導き出される『答え』は、魔石にある『効果』は決められた『効果』以外の影響は与えないと言うことなのだ。


「魔石の色は数百種類あると言われています。ですが、現在日常的に使われているのはわずか100種類ほどと言うことです」

「じゃあ、探求の洞窟で集められる魔石は・・・」

「20種類ほどですね」

「・・前々から思ってたけど、セレスは物知りだね」

「私の知り合いが冒険者で、顔を見せてくれた時は色んな話を聞かせてくれたんです」

「ああ、それで。じゃあ、1つ聞きたいんだけど、探求の洞窟で高価な魔石ってあるのかな?」

「10階層以降のモンスターの持つ魔石はどれも1つ銀貨1枚で買い取ってくれます。あと10階層の以降の階層ボスの魔石は金貨1枚になりますから、初心者冒険者の最初の目的は10階層で普通に戦えるようになることだそうです」

「10階層か・・レベル幾つくらいあれば良いのかな?」

「パーティ平均レベルは4くらいあれば・・・」

「え?そんなもんでいいの?」

「「あ、あの・・タケル様。レベルはそんなに簡単には上がらないのですが・・・」

「え?そうなの?俺、レベル3だけど・・」

「通常、5階層近辺でレベル1からレベル2を目指す場合、モンスターを100匹は倒さないと上がりません。さらに上のレベルとなると倍以上の数のモンスターを倒さないと・・・」

「・・・マジ?」

「真面目な話です」


・・あれ?おかしくないか?

俺、ボワウルフを4匹倒しただけでレベル2つも上がったんだけど・・。


「1つ聞いてもいいかな?」

「なんでしょうか」

「フィ-ルドのモンスターって、経験値高いの?」

「けいけんち?」

「う~ん・・・と、モンスターによって強さって違うだろう?だから強いモンスターを倒すと弱いモンスターの3匹分くらいの価値があるんじゃないかってことなんだけど・・」

「そうですね。階層ボスクラスと普通のモンスターでは違いがあります。また、ある段階からの階層と低階層のモンスターでも違いはあります」

「じゃあ、ここのモンスターとボワウルフとじゃあ違いがあったってことかな?」

「ボワウルフですか。ここの5階層クラスのモンスターですから変わらないと思います」

「・・・え?そうなの?」


どういうことだ?

セレスは100匹くらいでレベル1からレベル2に上がると言った。

じゃあ、俺は?

何で、ボワウルフ4匹でレベルが2つも上がったんだ?


「・・・『ヒーロー』、オープン」


俺は確かめずにはいられなかった。

可能性としては、これしかなかったからだ。


『ヒーロー』

神々から与えられたギフト。

自分のなりたい自分(ジョブ設定変更)になれる。

ヒーローとして振る舞う行為に対して、全ての能力が5倍に上がる。

 敵を倒すと、敵の持つ100%の経験値を得る。

 仲間が増えると、その仲間もヒーローの能力を得る。

???

???

???


な、なんだよ、このチート能力。

と言うか、「???」の項目も増えてるし・・・どうなってるんだ?

ついでに。ステータスも確認しておいた方が良いかも・・。


「ステータス、オープン」



サトー・タケル


年齢:15歳 種族:ヒューマン クラス:ヒーロー 職種ジョブ:戦士 ランク:G 所持金:10G(金貨)・10S(銀貨)・66C(銅貨)・20M(銅銭)

装備:「頭部:  腕部:ルーンメイルの籠手・力の盾 胴部:ルーンメイルの鎧 脚部:ルーンメイル脚甲 足部:俊足のブーツ 武器:シルバーブレード(銀刀)」


Lv.4 HP:25/25 MP:18/18 Exp:(75/100) アイテムボックス:(20/999)

筋力:18 体力:22 敏捷:14 器用:15 知力:19 理性:33 幸運:10 

アーツ: 剣術Lv,3(10/100)  武術Lv.2(0/100) 槍術Lv.2(0/100) 斧術Lv,2(0/100) 弓術Lv.2(0/100) 棒術Lv.2(0/100) 刀術Lv.2(0/100) 忍術Lv.2(0/100)

マジック:火魔術Lv.1(75/100) 水魔術Lv,1(0/100) 風魔術Lv.1(55/100) 土魔術Lv.1(0/100) 光魔術Lv.1(0/100) 闇魔術Lv.1(0/100) 火法術Lv.1(0/100) 水法術Lv.1(0/100) 風法術Lv.1(0/100) 土法術Lv,1(0/100) 光法術Lv.1(0/100) 闇法術Lv.1(0/100) 精霊術Lv.1(0/100) 召喚術Lv.1(0/100) 錬金術Lv.1(0/100) 薬術Lv.1(0/100)

技:「 ヴァッシュ(疾風斬り) ??? ??? ??? ??? ??? ??? ??? ??? 」

呪文:「 プチ・ファイア(弱火魔法) プチ・アクア(弱水魔法) プチ・ラファール(弱風魔法) プチ・ラピス(弱土魔法) プチ・ヒール(弱風回復魔法) プチ・キュアー(弱水治癒魔法) 」

特殊:「 土の造形 自動翻訳 心眼(Lv.2) 気力開放 武勇 」



お、おかしい・・。

おかし過ぎる。

装備したこともない武器のレベルが上がっている。

技で『???』が7つ。

それに特殊の『気力開放』と『武勇』と言うのが増えていた。


・・・ここで悩んでいても仕方がない。

俺は、3人とともに下の階へと進むことにした。


まだ、ダンジョンの話は続きます。

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