タケル、パーティ『ヒーロー』を結成する
ダンジョン回、次回になりました。すいません。
奴隷買いが終わり、奴隷引き渡しのための一室。
俺は、8組の買い手とそれぞれに奴隷を伴ってこちらの『提案』を話した。
初めは不審がられたが、イノエやルードの手伝いもあって最後のは快く『提案』を飲んでくれた。
表立っては『情報』や『買い物での便宜』などという風にしたが、そこはあくまでも『種蒔き』であるため徐々に絆を深めていこうと思う。
まあ、これは買い手だけでなく『奴隷』も同じわけだが・・。
やっと、8組との話は終わり、自分の奴隷となる3人を待つ。
そう言えば、それなりの出費はあったが、金貨8枚が戻ってきていた。
自分のお金から金貨5枚と銀貨70枚出したので、金貨2枚が増えた形となった。
まあ、ハイ・エルフとダーク・エルフの2人で金貨90枚使ったので、予算の金貨100枚からすると赤字になってしまったのは申しわけなく思った。
窓の外にふと視線を移すと夕日が見えた。
「今日はもう、ダンジョンには行けないな・・。明日早朝から潜ってみるかな」
思わず考えを口にする。
ある意味、今日は疲れ切っていた。
この世界に来た初日にしては濃い1日だった。
それにして時間がかかっているみたいだけど・・どうしたのだろう?
「お待たせしました、タケル様」
「あ、はい」
ドアノブが開き、イノエが3人を連れてきた。
1番最後にルードも入る。
「あれ?3人とも・・」
見て気づいたのは、3人とも綺麗な服を着ていたことだ。
先程までの奴隷たちはオークションに出た時の姿のままだったのに・・・どういうことだ?
「お3人には、私から服をプレゼントさせていただきました」
「え?いいんですか?」
「見事な落札に、このルード、感動させていただきましたので」
「大袈裟ですよ。シュバイン公爵の予算がもっとあったら太刀打ちできなかったですから」
「2人様には、こちらから事情を話しておきました。快くタケル様の奴隷となることを承諾していただきました」
「エリシュオン・セレニティです。セレスとお呼びくださいご主人様」
「ジュエルはジュエルなの。お兄ちゃん様、よろしくなの」
「俺の名前は、サトー・タケルです。よろしくね、二人とも」
まあ、色々と言っておきたいことはあるけど、後で身内だけの時に話せばいいだろう。
それよりも・・・だ。
俺はちらりと『オウカ』を見る。
こっちを思いっきり睨みつけていた。
そう言えばヒューマン嫌いだったよな。
「えっと、オウカで良いかな?俺はサトー・タケルです。よろしくお願いするね」
「・・・・・」
握手のために右手を出すと、無視された。
まあ、叩きに来ないだけマシか。
この後無事契約を結び、俺は四葉亭に戻ることした。
後で知ったのだが、戦闘用の装備品も一通り渡されていたのには感謝しかなかった。
夕日を背に歩く4人。
俺はもう一部屋借りなくちゃなと思い歩く、3人の美女を連れて歩くのを周りに冷やかされながら。
帰り道、ジュエルは俺の左側でズボンを掴みっぱなしで、セレスは俺の右側に寄り添う形で一緒に歩いていた。
オウカは俺の真後ろを歩く。背中に突き刺さる視線が痛かった。
四葉亭に戻ると、オヤジさんとアリカさんに驚かれた。
まあ、当たり前かと思ったが、俺が考えていた理由と違っていた。
「こんな綺麗どころを3人も連れてくるたぁ・・ハーレムでも目指すのか少年だぜ」
「ちゃんと、3人を平等に愛さなとダメですよ、タケルさん」
・・・え?その態度おかしくない?
ちなみに、俺の部屋は303号室から4人部屋の501号室に移ることになった。
さっそく部屋に戻り、夕食の時間までにゆっくり話すことにした。
「まず初めにこれだけは言っておくけど、名目上は3人とも俺の奴隷だけど、俺は仲間として・・家族として扱うつもりだからその辺は理解してほしい」
俺の発言にセレスとジュエルは笑顔で応える。
多分、ルードからにでも聞いていたのだろう。
ただし、オウカの表情はさらに険しいものになっていた。
「アタイは信じない」
初めて声を聞いたが、可愛い系の感じの声だった。
「態度で示していくつもりだからゆっくりと俺のことを分かってくれればいいよ。あと、基本は俺と同じ生活をしてもらう。各々ベットで寝ること。食事も同じ席で食べること。後、名前で呼んでほしいかな」
「では、タケル様とお呼びさせてもらいます」
「いや、敬語じゃなくてもいいからね」
「いえ、これは私なりの敬意の現れですから」
「タケル・・お兄ちゃん」
「ん。ジュエルはそれでいいよ。じゃあ、俺はセレス、ジュエル、オウカって呼ぶから」
「かしこまりました」
「はい・・なの」
もう一度、お互いの呼び方の確認をする。
こういうところをきちんとしておかないと後々問題になるしね。
そこで、オウカをちらりと見やる。
「じゃあ、『オイ』で」
「さすがに酷くないか?」
「奴隷がそのような態度をとっているとバレると処刑の対象になります」
「チッ。分かったよ。じゃあ、タケルって呼んでやる」
「うん。それでいいよ。さて生活ルールはその時その時で決めていくとして、私服はもう少し欲しいし武器や防具も揃えないと・・」
「タケル様。戦闘用の装備一式は貰っております」
「え?そうなの?」
「はい」
「2人も?」
「ある」
「貰った」
至れり尽くせりすぎるだろう。
まあ、助かったけど。
「時間もあるし、冒険者カードを作りに行こうか」
「それがよろしいかと思います」
「行く」
「まあ、付き合ってやるか・・」
部屋を出て、冒険者ギルドに向かう。
もちろん、冒険者として戦闘装備に着替えてもらって。
俺は部屋の外で待っていたのは言うまでもない。
「タケルさん。どうしたんですか?」
「えっと、冒険者カードを作りに来ました。この3人なんですが・・・」
「では、こちらに記入をお願いします。それとタケルさん。こちらの方たちとパーティを組むのですか?」
「はい。そのつもりですが?」
「でしたら、『パーティ登録』をなさってください。こちらの用紙に記入して、3人のカード発行が出来次第タケルさんのカードと一緒に提出してもらいますので」
「分かりました」
え~と、パーティ名にリーダー名に仲間の名前を書き込む・・と。
「とりあえず、リーダーは俺の名前で、後は3人の名前を書き込んで・・と」
用紙を記入する3人を見る。
セレスとオウカはすでに書き終わっていて今はジュエルに付き添っている。
微笑ましいなー。
うん。この3人となら良い関係を築けると俺は確信した。
ジュエルが用紙を渡したところで、俺は3人と向き合った。
「パーティを組みにあたって、リーダーは俺がやるつもりだけど・・」
「もちろんです」
「はい・・なの」
「まあ、いいんじゃない」
満場一致で可決された。
オウカが認めてくれたのがちょっと驚いたが・・。
「ありがとう。それで、パーティ名を決めたいんだけど何が良いかな?」
「それは、タケル様がお決めになってよろしいかと・・」
「お兄ちゃんが決めて・・なの」
「面倒くさいから、タケルが決めていいぞ」
「そ、そう・・」
俺が決めてもいい・・か。
そういうことなら・・・。
「じゃあ・・・」
俺は用紙に書き込み、3人のカード出来上がったところで俺のカードも一緒に渡す。
「冒険者カードをお預かりします。リーダーはサトー・タケル様で、メンバーはエリュシオン・セレニティさん、オウカさん、ジュエルさんの3人。パーティ名は『ヒーロー』でよろしいでしょうか?」
「お願いします」
捻りもないが、これは俺の意思表示みたいなもんだしな。
「あの・・タケル様。パーティ名の『ヒーロー』とはどういった意味なのでしょうか?」
「そうか、ここでは『ヒーロー』って言葉は存在しないのか。そうだな・・『正しいことをする者』って感じの意味かな」
本当の意味は違うけど、完全に違うわけじゃない。
俺が俺の信じる正しい道を進む。
その道が『ヒーロー道』なのだから。
「では、パーティ『ヒーロー』はランクGからのスタートとなります。ソロクエストと違い、パーティクエストは決められた数のクエストを達成しないとランクは上がりません。大討伐クエストや緊急クエストなどの幾つかの例外のあるクエストによってはランクの上限が変わります」
「次のランクFになるにはいくつのクエストを達成すればいいんですか?」
「ランクGのクエストを5つ達成することが条件となります。またクエストはあちらの掲示板に貼ってあるものの中から選び、受付で受諾の許可を取ってください。また、一度に受諾できるクエストは3つまでとなっています。ランクが上がるに従い受諾できるクエストも増えますので、頑張ってください」
「一応、聞きますが、パーティランクより上のクエストは選べないんですよね?」
「はい。選ぶことはできません」
「じゃあ、クエスト中に高ランクのクエストに遭遇して達成した場合・・なんて時は?」
「ありえない話ではありませんから結果から申しますと、冒険者カードを所持しているだけでモンスターの討伐だけでなくクエストに関係する項目の全てが記録されます。これは不正を防ぐための処置になっておりますが、クエスト達成の合否も分かるためのものですので・・」
「なるほど・・分かりました。後、ダンジョンに入れる時間帯とかあるんですか?」
「ダンジョンは基本いつでもは入れえますが、夜間はモンスターの発生が増えたり、強さも増しますのでお勧めしません。また、中級用のダンジョンである『天魔塔』は早朝5時から夕夕刻の6時までしか入れません。時間外に塔内にいた場合は強制転移させられます。これは『塔』に施された魔法によるものなのでご了承ください」
「夜間強くなると言うことですが、早朝なら何時くらいからなら通常の強さに戻りますか?」
「春から初秋は早朝4時から、秋から初春までは早朝5時からとなっております。今はギリギリ初春と思われますので早朝5時からがよろしいでしょう。また午前9時くらいからダンジョンに入るパーティは多いですのでこちらもご記憶ください」
「何から何までありがとうございます」
「また、分からないことがありましたらなんでもお聞きください」
「そうさせていただきます」
パーティ登録を済ませ、カードも返してもらい冒険者ギルドを後にした。
これからの行動とすれば、まだ夕食まで少しは時間がある。
みんなの私服と下着を何着ずつ買うのが良いだろう。
明日は早朝からダンジョンに潜るから回復系アイテムも欲しい。
パウエルを見受けした雑貨屋のブライアン商店に行くとしよう。
しかし、その前に皆の『ステータス』を確認しておきたい。
あれ?なんで、ステータスなんだ?見れるわけないのに・・・。
まあ、『心眼』で確認しておくか・・・。
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―エリュシオン・セレニティー
年齢:17歳 種族:ハイ・エルフ クラス:隷属奴隷 職種ジョブ:槍士 ランク:G パーティランク:G 所持金:0G
装備:「頭部: 腕部:皮の盾 胴部:皮の鎧 脚部: 足部:皮のブーツ 武器:銅の槍」
Lv.1 HP:18/18 MP:18/18 Exp:(0/100) アイテムボックス:(1/99)
筋力:10 体力:14 敏捷:14 器用:12 知力:12 理性:12 幸運:5
アーツ: 剣術Lv,1(045/100 槍術Lv.2(0/100)
マジック:風魔術Lv.1(70/100) 風法術Lv.2(0/100) 精霊術Lv.1(55/100) )
技:「 ヴァッシュ(疾風斬り) ヴァニッシュ(疾風突き) 」
呪文:「 プチ・ラファール(弱風魔法 プチ・ヒール(弱風回復魔法) シルフ(風の精霊) 」
特殊:「 瞬動術 」
―ジュエル―
年齢:5歳 種族:ダーク・エルフ クラス:隷属奴隷 職種ジョブ:魔法使い ランク:G パーティランク:G 所持金:0G
装備:「頭部: 腕部: 胴部:皮の鎧 絹のマント 脚部: 足部:皮のブーツ 武器:ダガー 」
Lv.1 HP:7/7 MP:38/38 Exp:(0/100) アイテムボックス:(1/99)
筋力:2 棒術Lv.1(0/100)
マジック:火魔術Lv.1(0/100) 水魔術Lv,1(0/100) 風魔術Lv.1(0/100) 土魔術Lv.1(0/100) 光魔術Lv.1(0/100) 闇魔術Lv.1(0/100) 召喚術Lv.1(0/100) 」
技:「 」
呪文:「 プチ・ファイア(弱火魔法) プチ・アクア(弱水魔法) プチ・ラファール(弱風魔法) プチ・ラピス(弱土魔法) ルース(照明魔法) ロゼール(黒霧魔法) シュヴァルフ(黒狼召喚) 」
特殊:「 超魔力 」
―オウカ―
年齢:15歳 種族:キツネ獣人族 クラス:隷属奴隷 職種ジョブ:拳士 ランク:G パーティランク:G 所持金:0G
装備:「頭部: 腕部:皮の籠手 胴部:皮の鎧 脚部: 足部:皮のブーツ 武器:狩猟の弓・矢筒(20本入り)」
Lv.2 HP:17/17 MP:12/12 Exp:(0/100) アイテムボックス:(1/120)
筋力:20 体力:22 敏捷:19 器用:18 知力:23 理性:20 幸運:12
アーツ: 剣術Lv,1(0/100) 武術Lv.2(80/100) 槍術Lv.1(0/100) 斧術Lv,1(0/100) 弓術Lv.2(20/100) 棒術Lv.1(0/100) 刀術Lv.1(0/100)
マジック:妖魔仙術Lv.3(20/100) 召喚術Lv.1(0/100) 薬術Lv.1(0/100)
技:「 連続拳 連射 」
呪文:「 妖炎 幻桜 」
特殊:「 妖魔仙術 熱冷ましの薬 下痢止めの薬 咳止めの薬 」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ステータスが見れた。
一体どうなってるんだ?
もしかして、見たいと思うものが見れるってことなのか?
、まあ、使えるし良いんだけど・・。
しかし、ハイ・エルフとダーク・エルフってやっぱ凄いんだなと改めて思う。
どっちもLv.1とは思えない。
オウカはジョブが拳士なのに弓矢を装備してるけど・・。
「オウカは、狩人になりたいの?」
「・・どういう意味だ?」
「だって、オウカのジョブって拳士だろう?」
「!?・・何で知っている」
「えっと・・」
俺の言葉に、セレスとオウカが反応する。
何かマズイことでも言ったっけ?
「あの・・タケル様は私たちの冒険者カードの確認はしてないはずでは?」
「・・ああ、そういうことか。実は俺は特殊能力で心眼を持っていてね。その能力で確認したんだよ」
「心眼と言うと見た相手の全てを見抜くことが出来ると言う?」
「そう言う使い方もできるとは思うけど、俺が見たのはみんなの能力値だけだよ」
多分、俺の心眼は俺が見たいと思うモノに合わせて見させてくれるのだろう。
だからプライベートの深い部分は見れないのだ。
俺が望まないから。
「そういうことか。なら教えてやる。技や呪文は見たか?」
「見たけど?」
「技や呪文を習得すると、『常時使用』と『限定使用』の2種類がある。常時使用の技や呪文はジョブが違っても使用することが出来る。しかし、限定使用のモノは定められたジョブでないと使用できない」
「つまり、今の状態で技や呪文の部分に書かれているモノなら使えるってわけだね」
「簡単に言えばそう言うことだ」
なるほど、俺が魔法を使えたのはそういう理由だったのか・・。
まあ、何にせよステータスを確認できたのはデカい。
「ところで、皆は自分の技や呪文を把握しているのかな?」
「私は、ヴァッシュとヴァニッシュ。プチ・ラファールとプチ・ヒールに精霊魔法でシルフを呼べます」
「アタイは、連続拳と連射だ」
「あれ?妖魔――――」
「それ以上言うな」
口を塞がれ、オウカから殺気が・・・。
tりあえず、理解を示すように頷いた。
「ジュエルはどうだい?」
「??」
「分かってないみたいですね?」
「まあ、5才だしなぁ。じゃあ、教えてあげようね」
「はい・・なの」
「ジュエルが使えるのは、プチ・ファイア(弱火魔法)とプチ・アクア(弱水魔法)、プチ・ラファール(弱風魔法)にプチ・ラピス(弱土魔法)、ルース(照明魔法)とロゼール(黒霧魔法)に、召喚術のシュヴァルフ(黒狼召喚)と言う黒い狼を呼び出すものだね」
「召喚術まで使えるのですか?それは凄いですね」
「まあ、魔法の系統は戦闘の中で教えるからね」
「うん」
とりあえず確認は取れたし、まずは、服屋から行くか。
ジーナの店に向かうことにする。
3人とも、黙ってついてきてくれた。
「あの・・タケル様。ここは?」
「服屋だよ。みんなの下着と私服を買うから」
「ですが、すでに私服は・・・」
「俺は綺麗好きだから。我ままになっちゃうけど皆にも普段は身綺麗でいてほしいんだ」
「そう言うことでしたら・・・」
正直なところ綺麗どころである彼女たちに汚らしい格好はしてほしくないんだよね。
まあ、1時間くらいで買い物は終わるだろうから、俺はブライアン商店に行くことにしよう。
セレスに金貨1枚を渡し、下着の上下のセットを4着と私服を3着ずつ買うように言う。
見立てはジーナにも参加してもらいたいと話すと快く快諾してくれた。
「じゃあ、1時間もしたら来るから・・」
それだけ言うと、俺はブライアン商店に向かった。
1時間後戻ると、ホクホク顔の3人が待っていた。
ジーナも満足げだったことから、お得意さんとしてこれからは接してくれるだろう。
「じゃあ、帰って食事にしよう」
今日はささやかながら『出会い』と『パーティ結成』のお祝いをしよう。
明日は、ダンジョンでレベル上げだ。
本格的に『ヒーロー』のための強さを手に入れるために・・・。
次回が本当にダンジョン回です。