第8話 また、お人形屋さんに来ちゃいました。
「武器が装備できないお嬢ちゃんじゃねぇか。がはがは」
私とビッチは、護衛の任務につくための装備を整えに、お人形屋さんにきてました。
で、そのお人形屋さんには、店主だけでもアレなのに、がはがは系おやじの武器屋が遊びにきてました。
この人、なんでいつも上半身裸なんだろ?
しかもムナゲがボーボー。ウデゲもボーボー。男性ホルモン、ほとばしってます。
そもそもビッチが王子様からひきうけた依頼なのに、なんで関係のない私まで装備整えるの?
でも、ビッチは私のささやかな疑問もお構いなしに、お人形選びに夢中でした。
「これいいんじゃない? お金もいっぱいあるし」
と、高級そうなフリフリドレスのビクスドールを手にしてました。
いいけど、それ陶器でできてるから、モンスターと戦ってもすぐ割れちゃうよ。
それ以上に抱き心地悪いし。夜になったら、かってにうろうろしそうで気持ち悪いし。
「こっちはモフモフでいねぇ〜」
ビッチ、ワニのぬいぐるみにほおずりしてます。
「むむむ。これも捨てがたい」
今度は、ネコっぽいのにギューってして、ご満悦のご様子です。
しかもわざとらしい「むむむ」が、カンにさわったり、ハナについたりです。
どうでもいいけど、この人、なにしにきたんだろ?
まさか、ヌイグルミにまで欲情しているの?
それにネコのヌイグルミは、はっきりいってもうコリゴリです。
というか、ここでいい考えがひらめきました。ハチベエ、そろそろ退役の時期じゃないかな。
【カンナ。なんか首筋がざわざわするんだけど、変なこと考えてないよね?】
カンのいいお人形は嫌いです。
「べつに……」
【なんだ。返品されるかと思ってビクビクしたよ。安心した】
ドンカンなのもどうかと思います。
「はは〜ん。お前が嫁さんにしたい娘って、あの娘だな。がはがは」
武器屋のオヤジ、人形屋に肘をグリグリしながら、ノーデリカシー爆弾おとしてきました。
人形屋、汗をぬぐいながらあせってます。いいキミです。
ご指名を受けたビッチは、どっち付かずのヨユーのあいそ笑い。完全に手玉に取ってました。恐るべしです。
「お前だって、ギルドの受付嬢に振られてたろっ?」
「ちがうちがう。彼女は忙しいんだよ。この前は急に残業はいったっていうし、その前は妹がひざをすりむいて大変だったそうじぇねえか」
「全部いいわけだ。それにイケメンと町ブラしているところを、この目で見たんだからなっ」
「それ、人違いだよ。がはがは」
おやじ、ビクともしません。
ギルドのビジネスライクなお姉さんの困った顔が浮かびました。
ヘキエキした私はこの人たちを横目でながめながら、いっこくもはやくここからずらかりたいのと、ハチベエを休ませてあげたい一心で、お人形を物色します。
するとフェレットっぽいヌイグルミを見けました。かわいいかも。
手に取ります。すると目が赤くひかりました。
ま、まさか……。
【い、いいかい、カンナ。く、くれぐれも肝に銘じて欲しいんだけど、その人形の言葉を、し、信じちゃダメだよ】
ハチベエ、しどろもどろしながら、あたふたしています。
また呪い? しかも強力なやつ?