表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/28

6、一人の部屋


 ドアノブを回して、優太はアパートの二階にある、自分の部屋に入った。

 手探りで電気のスイッチを探し、押す。途端、カーテンで閉め切られた暗い部屋が、明るく照らされた。

 玄関を入って、一歩進んだ右手にトイレとお風呂がある。その先は六畳のフローリング。そこには折り畳み式の小さなテーブル、ベッド、本棚、クローゼット代わりに使っているプラスチック製の引き出し、そしてテレビが配置されている。

 さらに進めばカーテンのかかった窓があり、その向こうは狭いベランダだ。

 部屋にキッチンはあるが、一人分の大きさしかない。キッチンの下に小さな収納スペースと、同じく小さな冷蔵庫。

 これが今優太の住んでいる部屋だ。

 幼い頃両親が他界し、優太は伯父と伯母に引き取られた。だが高校入学を機に、一人暮らしすることを提案したのだ。

 部屋に入り、優太は鞄をベッドの上に放り投げた。肉じゃがは一旦テーブルの上に置く。

「ふう……」

 優太は無意識に息を吐く。自室に戻ってきたことによる安堵だろう。

「今日は『幽霊さんと仲良くなろうの部』略して幽霊部に入部したよ。まあ部って名乗ってるけど、実際は同好会扱いにもされてない、非公式のものらしい」

 自分一人しかいないはずの部屋で、優太は説明口調でそう口にする。

「あと柚莉香のお母さんが肉じゃがくれた。正直助かるや」

 制服のブレザーを脱いで、これもまたベッドに放り投げ、優太はそこで振り返った。見つめる先は本棚。もっと詳しくいえば、本棚に飾ってある、写真立て――。

 優太は優しく微笑むと、ネクタイごと、カッターシャツの襟を握った。その下にあるのは、隠すように着けた十字架のネックレス。

「ただいま、姉さん」

 優しい声音は、一人きりの部屋に、静かに響き渡った。


* * *

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ