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16、幽霊の正体は?

 その日の『幽霊さんと仲良くなろうの部』略して幽霊部の活動は、空き教室で行われた。雪が使っていない教室を見つけてきてくれて、桃音がその教室の場所を調べてこっそり職員室から鍵を拝借したらしい。

 空き教室には、普段優太達が学校生活を送っているのと同じように机と椅子が並べられている。その中で優太と桃音は、窓際の黒板から一番近い席に、隣同士になるようにして座っていた。ちなみに雪は、桃音の後ろの席の机の上に、腰を下ろしている。

「三日間ずっと、同じ幽霊さんが出てるの?」

 閉めきった窓の向こうから聞こえてくる、グラウンドで部活動をしている生徒の声をBGMに、桃音が首を傾げて尋ねた。

「ああ!」

 優太は興奮を隠し切れないのか、鼻息荒く頷く。

「あんな遅い時間に、同じ格好で同じ女の子が現れる。幽霊以外に何がある?」

 ちなみに現れる時間は午前二時だ。きちんと時計で確認した。

「うーん……」

 優太に聞かれ、桃音は唇をへの字に曲げて、腕を組んだ。体を横に傾ける。

「幽霊なんだ、あの子は。しかもあいつは……」

「まるで知っているみたいだな」

「え?」

 冷静な雪の声に、優太は振り返った。

 見れば机に腰掛けた雪が、目を細めて優太を見つめていた。まるで表情から、優太の考えを読み取ろうとしているかのように。

「あいつって言い方は、親しい間柄でしか使わないだろう?」

 指摘され、優太の心臓が、焦りの音を立てた。

「それは……」

 自分を見つめてくる雪の視線に耐え切れず、優太は顔を背ける。

 幽霊に会えたことが嬉しくて、気が緩んでいた。というかわざわざ二人に報告しなくてもよかったのではないか。

 今さらながらそんなことを考えて、優太は自分が、思っている以上に浮かれているのだと気が付いた。

「三日連続で会ってるんだもん。もう親しい間柄だよねー」

 黙り込んだ優太に代わって、のほほんと言ったのは桃音だった。

「優太君はずっと幽霊さんに会いたかったんだもん。興奮しちゃうのも無理ないよー。ねっ」

「あ、ああ」

 にこにこと桃音に言われて、つられるように優太は首を縦に振る。

 雪は桃音の説明に納得していない様子だったが、だからといって否定するようなことはせず、難しい顔で眉根を寄せていた。

「というわけで!」

 突然桃音が、イスから立ち上がった。満面の笑みを浮かべる顔の前に両手を持ってきて、パン! と叩く。

「今回の幽霊部の活動は、新しい幽霊さんと友達になろうです!」

「え、それって……」

 今の話の流れから、桃音が言おうとしていることを悟って、優太は頬を引き攣らせる。

 まさか……。

「優太君の家の前に出る幽霊さんと、仲良くなりましょー!」

「やっぱり!」

 予感が的中して、優太は思わず叫ぶ。

「わざわざいいですよそんなの!」

「えー、どうして?」

「どうしてって……」

「まるで追求されるのが嫌みたいだな」

 言葉に詰まる優太に、さらに追い討ちをかけるように雪が言う。

「不都合でもあるのか?」

「それは……ない、けど……」

「幽霊さんと仲良くなろうの部は、どんな幽霊さんとでもまずは仲良くなろうがモットーなのですよ!」

 俯きかけた優太の動きを遮るようにして、桃音は優太の顔を覗き込むように顔を近付けてくる。

「それにその幽霊さんが悪い幽霊だったら困りますし。もし悪い幽霊さんだったら大変だから、ユッキーにどうにかしてもらわなきゃなのですよ」

「ユッキー言うな」

「というわけで、今夜は優太君のお家で幽霊さんを待ちましょう!」

 雪のツッコミをまるで気にせず、桃音はにこにこと話す。

 優太は桃音の言葉を聞き流そうとして。

「……は? 俺の家?」

 聞き流してはいけない単語に、眉を動かした。

 幽霊が出る時間は、夜中の二時。優太の家で幽霊が出るのを待つということは……。

「みんなでにこにこ! 仲良く楽しいお泊り会ですよ!」

 優太の反応に気付いているのかいないのか。桃音は楽しそうに、笑顔を浮かべているのだった。


* * *


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