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私の目の前には、鬼の形相をしている斗鬼がいた。

「あんな意味不明な留守電残して、連絡絶つってどういう事」

ちなみにここは、姉が通っている学校の生徒会室である。あの後、無残な姿になった携帯を平岡さんに見せる。ぷっ。と噴出した。

その綺麗な顔に拳を減り込ませてやりたかったが、自重した。そして、ずるずると文字通り引き摺られ、ここに連れてこられたのだ。そして、連れてこられた先に鬼の形相で、斗鬼が待ち構えていた。

「……携帯を壊されちゃったんだよ…っ」

腹を抱えながら笑う平岡さんの背中にぜひとも「僕は男が好きです」と書いて、貼ってあげたい。

「誰にやられたんです?」

「阿澄先生…っ…」

まだ笑いを抑えられない平岡さんを放っておいて、斗鬼に向き直る。

「……まぁ、会長は放っておくとして、あの留守電は何?」

「…星宮、凛音先輩って言って、凄く綺麗な人なんだけど、斗鬼に紹介してほしい、みたいな…」

「萌は、どう思ってんの?その事に対して、何か思う事ある?」

「………私は…。甘い事言うかもしれない。けど、そんなコネで掴んだ夢で、先輩に何か意味があるのかなって、思った」

モデルが夢ならオーディションでもなんでも沢山受けてみればいいのに。

「萌ちゃんは、何か思い入れでもあるのかな。その話し方だと昔に何かあったみたいな喋り方だよね」

笑いがようやく収まったのか、平岡さんは優雅に紅茶を飲みながら焼き菓子に手を出している。

「…私、受験に落ちてるんだよね」






本当の本当に、中学の時に出した進路希望調査の紙に書いた、第一希望はこの学校だった。

制服が可愛くて、学校のイベントも面倒臭そうだったけど、楽しそうで、ここで友達作って、彼氏なんかも作っちゃって、なんて夢を見ていた。夢を現実にする為に勉強を頑張った。苦手な数学も、頭の良いお父さんに教えてもらって、一度だけの受験で、なんとか全教科が合格点ラインに行って、後は合格発表を待つだけだった。

けど、落ちていた。何度探してもなかった私の受験番号。

どうして…。

疑問に思った私は、すぐに学校側に問い合わせて、受験の時のテストを見せてもらったら、なんにも問題なかった。解答欄を、一つずらして書いた訳でもなく、名前や、受験番号を書き忘れたわけでもなかった。どうして?

「……この点数って合格ラインじゃないんですか?」

顔を青くした教師は、それでもすまなそうな顔をしていた。

「す、すまない事をしたと思っているよ。けどね、しょうがない事なんだよ、ここの学園長の孫が二人入る事になったんだ。それで、枠が無くなってしまってね…」

そう言い続ける教師の言葉はもう耳に入らなかった。

コネなんて、ずるい。こんなに頑張ったのに、努力したのに、点数だって、悪くなかった。合格ラインにギリギリだったけど、いけたじゃないか。

入学する生徒数は、300人。その大人数の中に私は入らなかった。






お菓子を摘まむ手が止まった平岡さんは、そのまま手を動かす事を再開したらしい。

「受験って、どこの高校受験したのかな?」

「ここですけど」

「……?僕の目がおかしくなければ、萌の頭ならここの受験はギリギリラインで受かってるはずだけど」

「あぁ、そういえば、コネで入学してきた生徒が二人居たね」

紅茶カップを置いて、生徒会長の机だと思われる場所に腰を下ろし、手慣れたようにパソコンを操作している。その姿に、斗鬼は目を丸くして見ていた。

「斗鬼、」

「え、ん?」

「さっきの話の続きしていい?」

コクリと頷く斗鬼を確認して、口を開く。

「斗鬼は、コネで夢が叶ったら嬉しい?」

「……それでも、チャンスを貰えたんだと思って努力を積み重ねるよ。例えコネでも、僕の実力が認められるんなら、頑張るしかないと思ってるから」

「…そう、だよね。けど、もしも、もしもね、コネで夢が叶って、努力もしないで安穏とした生活を送っていたら?」

「もったいないと思うし、悔しいと思うし、ムカつくよ」

真っ直ぐに見てきた斗鬼の顔は、苦々しげだ。

そっか、そうなんだ。コネで入ったとして、その人達がちゃんと努力しているなら、認める事が出来るんだ。納得も出来るし、私も胸の蟠りが消える。

「ま、僕は学園長のお孫さん嫌いだけどね」

「え?」

パソコンを触っていたはずの平岡さんが、普段は見せないキリッとした真面目な顔でこちらを見ていた。

「忘れてたんだけど、その学園長のお孫さんって、中学の時に問題起こして、うちの学校に来たんだよね。頭も良くて、喧嘩も強くて」

机から離れた平岡さんはブレザーを脱いでそれを私に掛けてすぐに、事は起きた。

バンッと強く大きな音を立てて入ってきたのは、二人組の男だった。

「元気だったー?平岡さん」

「佐賀は居るか?」


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