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家族の時間


 朝食を食べるために食堂へ向かうと、お母様とイリアの他にお父様もいた。


 「え!? お父様?」


 私が驚いた声を上げると、お父様は嬉しそうな笑顔を見せた。


 「驚いたかい? 今日は仕事を休んだんだよ。さ、席に座って。一緒に朝食を食べよう」


 朝食を食べ始めると、お父様が口を開く。


 「フレイヤ、今日は来月のお茶会で着るドレスを買いに行こうか?」


 今、来月のお茶会って言った? 行っても良いの?

 ナイフとフォークの動きを止めて、本当のことか確認するためにお母様を見た。

 

 「お父様が許可を出してくれたわ」

 「やったーー!!」


 喜んで大声を上げると、私は直ぐにお母様からお叱りを受ける。


 「静かにしなさい! 食事中よ」

 「ごめんなさい。つい嬉しくって」

 「フレイヤがそこまで喜ぶとは思わなかったよ」


 すると、イリアが不機嫌そうに言う。


 「お姉様だけずるいです。イリアも一緒に行きたいです」

 「お茶会に招待されたのはフレイヤなの。イリアは行けないわ」


 お母様はイリアを優しく伝えたけど、イリアは納得していない様子。ムスッとした顔になっている。

 不機嫌な顔も可愛いけど、少し可哀想だ。


 「ずるいです」 

 「ずるくないのよ。分かってくれないかしら?」

 「うー、分からないです!」


 お母様も少しイライラし始めている。これは大変だ。どうにかしないと!


 お父様が優しくイリアに言う。


 「イリア、お茶会には行けないけど、その代わりイリアの欲しい物を何でも買ってあげよう。それで許してくれないかい?」

 「あなた」

 「良いんだよ。フレイヤには新しいドレスを買ってあげるんだ。イリアにも買ってあげないと不公平だよ」

 「分かりました。あなたがそこまで言うなら……」


 反対していたお母様だけど、お父様の言葉に折れたみたい。

 雷が落ちなくて良かった。ほっとする。


 「お父様、ありがとうございます」


 イリアは笑顔になってお父様に抱きついた。


 「こら、イリア。またコルネリアに怒られるよ」


 と言いつつ、お父様はニヤついていた。しかも、イリアを膝の上に乗せようとしている。

 お父様の気持ち、私も分かる。イリアが可愛くてつい甘やかしちゃうんだよね。

 でも、やっぱりお母様から睨まれてしまった。お父様はイリアに戻るように言う。


 その出来事を見て、私は笑顔になった。今幸せだって感じてる。

 家族四人での久しぶりの朝食はとても和やかだった。



 ♢♢♢



 屋敷を出ると、いつも御者をしてくれる執事のヘドリックが馬車の準備をしていた。


 執事をする前、へドリックはガルムお祖父様の騎士をしていた。かなりの剣の腕前だったとお父様から聞いたことがある。

 怪我をしたせいで昔の力は出せないけど、今でも十分に強い。お母様が出掛ける時は護衛役もしている。


 私たちは馬車に乗り込んで出発した。大きな屋敷が並ぶ貴族街を抜けていく。

 私たちが住んでいる帝都グランディアは円形都市であり、帝城(ていじょう)を中心にして三つの区画に街が分かれている。

 中央に位置するのが貴族街だ。貴族街には皇族の住む帝城やミュトス教皇のいる教皇殿がある。

 貴族街は貴族しか住むことができず、平民が貴族街へ入るには公的な許可証が必要になる。貴族御用達の商人くらいしか貴族街へは入らない。

 貴族街の外側は平民富裕層が住む上流街があり、上流街の更に外側は平民街だ。


 貴族街を抜けて上流街に入った。

 私たちの目的地は上流街のお店だ。上流街は下級貴族も利用しており、頻繁に出入りをしている。貴族街よりも人通りが多い。


 あるお店の前で止まった。

 馬車から降りると、見栄えの良い色鮮やかな服を着た若い男性が私たちを出迎えてくれた。

 その男性はお父様とお母様に挨拶をして、私とイリアにも丁寧な挨拶をする。


 「フレイヤお嬢様、イリアお嬢様、お初にお目にかかります。この店の主人をしております、ティッド・レティゲールと申します。本日はよろしくお願い致します」

 

 私とイリアもスカートの裾を少し摘んで挨拶を返す。


 「マルクスの娘、フレイヤ・フォン・ルーデンマイヤーと申します」

 「同じくマルクスの娘、イリア・フォン・ルーデンマイヤーと申します」


 挨拶の後、ティッドさんに店内を案内された。

 凄い! 色んな物がある。

 このお店は家具や雑貨、食料品など様々な商品を扱っているそうだ。

 店の商品が気になって覗き込もうとしたら、お母様に睨まれてしまった。


 ティッドさんはルーデンマイヤー家の領地ラヒーノの出身らしい。

 ラヒーノに割安で色んな商品を販売して、お父様の領民支援にも協力してくれている。

 

 ドレスの陳列されている場所まで着くと、お母様が率先して私のドレスを選び始めた。


 「フレイヤの銀髪に合いそうなのはこれかしら」

 

 ドレスを取っ替え引っ替えして、あっという間に決める。

 お母様、動きが速い。


 「これが良いと思うわ。青のドレスよ、フレイヤの銀髪に良く似合っている。可愛いと思うのだけれど、フレイヤはどう?」


 ドレスを試着して姿見で自分の姿を見る。良く似合っているし、控え目な感じもした。

 公爵令嬢のアンジェリーナ様とお茶会をするから目立つことがないように配慮をして選んでくれたんだと思う。

 お母様は色んなことに気を配れるから見倣(みなら)いたい。


 「お姉様、良く似合っています!」

 「イリア、ありがとう」


 ドレスが決まったので、ティッドさんにお礼を言ってから店を出た。


 「イリア、次は君の番だね。何が欲しいのかな?」


 お父様が質問すると、イリアは満面の笑みで答える。


 「イリアは顕微鏡が欲しいです!」

 

 お父様とお母様、そして、私は同時に首を傾げた。


 「「「顕微鏡?」」」


 お父様が不思議そうな表情でイリアに質問する。


 「顕微鏡って何だい?」

 「物を拡大して観察する科学器具のことです。小さな生物も観察することができるとても便利な物です。イリアは顕微鏡で色んな物を観察したいんです!」


 お父様は困った顔をしている。どうしようかと迷っているみたい。イリアに買ってあげて欲しいな。


 「それは多分専門的な物だろうね。普通の店では扱ってないよ、科学ギルドに問い合わせる必要があるね。もう直ぐイリアの誕生日だから、それまで待っててくれないかな?」

 「もちろんです。買っていただけるなら、イリアは誕生日まで待ちます」

 「ありがとう、イリア」


 お父様とイリアの話が終わり、馬車まで戻ると、私たちは分かれて行動することになった。

 お父様と私、お母様とイリアに分かれて、お母様たちにはへドリックが護衛として同行する。どうやら事前に分かれることは決めていたようだ。

 お父様と二人きりになった。

 

 


 

 

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