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4 彼氏持ちでナンパしてくる女子の心情について

俺は幼馴染の七瀬美亜に、昔『恋愛対象じゃない』と言われた。にも関わらず、脈なし確定の不毛な片想いをしているわけだがーーーーー


昨日、突然謎の美少女にナンパ(?)された。

花音である。

苗字は、何故か教えてくれなかった。


先天の霹靂である。

その手の経験がゼロの大人しい系の俺に、そんなことが起こるなんて誰が想像できよう。


しかも控えめな美亜とは対照的な元気印のような彼女だが、とある共通点があった。

俺が「美亜の見た目でどこが好きか1つ挙げよ」と言われれば絶対挙げるであろう特徴ーーーー小さい顔に釣り合わない真ん丸の大きい目ーーーーそれによって花音からクリティカルヒットを食らい、一緒にカフェまでしてしまった。

くそう、あの目で見られて誘いを断れるわけがなかろう……


『伊織くんの子供だよ、なんて言ったらどうする?』と見え透いた嘘で、花音には揶揄われたりもした。

そんなことはあり得ない。

もしそうだとしたら、俺は美亜への想いを()って、別の女性と結婚したことになってしまうではないか。


…いや、まあ、花音のあの大きい目……

俺が美亜の見た目で好きな部分を、他の女性にも求めていたのだとしたら、やや説得力はあるけど。

あるけど、あるけどさ……


俺には、この恋愛感情に、人生のどこかで区切りをつけられるほどの潔さがあるとは思えない。

不毛に終わるだけな気がする。


だから、そんなSFじみたことはあり得ません。

未来から自分の子供が来るなんて、馬鹿か?

考えるだけ、それこそ不毛な時間だ。


それより、俺には気になることがあった。


昼休みに弁当をつつきながら、俺は友人の斉藤蓮に相談をしていた。


「……なあ、彼氏持ちなのにナンパしてくる女子ってどういう心情なんだ…?」

「………え、おいちょっと待て。お前、ソレ、自分がされたんじゃないだろうな?」

「そんなまさかあり得ないだろみたいな目、やめてくれる…?………まあ、されたというか……」

「されたんだな!?」

「ちょ、声でかい…っ!…」


蓮が教室中に響き渡る声で言うもんだから、ちらほらとこちらを見てくるクラスメイト。

俺は色恋沙汰とかそんなタイプではないと自負しているので、この相談を友人にするのだけでもだいぶ葛藤したのに、何でこんな辱めを受ける羽目に……!


「え?雰囲気枯れてる系の如月くんが?嘘でしょ笑」みたいな感じになるじゃないかっ!


やめてくれ!

なんかナンパかどうかもよく分からん美少女との邂逅を相談しようと思っただけなのに!

恥ずかしいから、やめてくれろこの友人は…!


「されたのか!?どんな女だ!?七瀬さんより可愛いとか言わないよな!?」

「だから声抑えろお前はぁっ!?恥ずかしいからマジでやめろ!?」

「じゃあ可愛くないのか!?」

「何か各方面に失礼な言い方はやめろ!いや、まあ………か、可愛いかったですけど……」


どんがらがっしゃーんっ!!


と椅子が床に倒れる音がして、教室の離れたところが軽く大騒ぎ。何だ何だと思っていると、美亜が椅子から落っこちたらしかった。床に尻餅をついて、「痛たた…」とスカートについた埃を払っていた。


俺も心配になり、大丈夫か?と駆け寄りたかったが…


一緒に昼を食べていたグループの1人である、例のハンド部イケメンが美亜に、

「もう美亜は。大丈夫?」

と優しく声をかけて、美亜の手をさらりと取っていた。

周りの友人が彼の王子様らしい行動に、きゃあきゃあと囃し立てる。


美亜は恥ずかしかったのか、彼の手をやんわりと払って、自分で立ち上がっていた。


昔はそれは俺の役目だったのに……なんて、思って遠くなった幼馴染の距離を嘆いている自分に気付く。

やめよう、不毛はこうやって始まるのだ。


「で、伊織はその可愛い女子にナンパされたわけだ。で、その女子が彼氏持ちだったと」

「まあ、そんな感じだな。ナンパと言っていいのかは分からんが、本人は一応ナンパと言ってたかな。2人でカフェに行ったんだがーーーー」


パキッ。


ヒュゥーーン。


「美亜ちゃん、箸!?箸折れてる!?」

「廊下飛んでったー!」


何だ何だと思ってると、また美亜のグループが騒がしくなった。対照的に、美亜は箸を弁当の中に立てたまま、固まっていた。ぼうっとしているが、確かに彼女の手の中にある箸が1本と0.5本になっていた。

彼女の友人が代わりに残りの0.5本を廊下に拾いに行っていた。


大丈夫か、割り箸貸そうか?なんて俺も言ってやりたかったが。


スマートにも、美亜の隣に居たハンド部イケメンが、美亜に割り箸を渡していたーーーー


ーーーーのではなく、自分の箸で美亜の弁当の中身をすくいあげて、美亜の口元に持っていてあげていた。

「はい、あーん」としている。

様にはなってるが。

なってるんだが。


え、それは。

き、きも………。


すぅーーー。あれぇ?

あれ、俺がおかしいのだろうか?


付き合ってない、よな?

それとも超絶悲報案件で、俺が知らないだけで美亜とハンド部イケメンは既に付き合っていたのだろうか…?


俺の感性とは裏腹に、周りの友人たちは、ニヤニヤと見守っていた。


これは、あれだ。「イケメンだからいい」とかいうやつだろうか?

両片想いならアリでしょ!みたいな流れなのだろうか。


しかし、美亜はまた恥ずかしかったのか、流石に困惑したのか、「ううん大丈夫」と言って、自分の鞄から割り箸を取り出した。

そして、ハンド部イケメンの箸がついた部分のおかずを綺麗に切り取って、ハンド部イケメンの弁当箱に入れていた。

「私の弁当に自分の箸を突っ込むな」という静かな意思表示である。


おおん……これは、流石に美亜も嫌だったのか。

どっちかというと、美亜って潔癖症だしな…。

幼馴染なので、美亜の気持ちはよく分かった。


しかし、ハンド部イケメン本人は嬉しそうな顔をして、周りの人間はひゅうひゅうと再び囃し立てる。

「彼女からおかずのお裾分けじゃーん」的なノリが聞こえてきた。


いや、それはちょっと違うような……?


状況は合ってるけど、何か違うような。

ううーん?


美亜は笑いながら、どこか困った顔をしていた。



俺の……気のせいだろうか?


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― 新着の感想 ―
こちらの作品も面白いです!設定面白いし、花音についてわかっていないこと(なぜ過去に来たのか、どう来れたのか、etc...)が多いし、距離感をミスってる某作品と違ってあまり主人公が暴走しなさそう(笑)な…
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