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14 分岐点

美亜に恐らくフラれた傷心の身の俺に、娘は追い打ちをかけてきた。


「過去②の伊織くんの2つ目のトラウマ・林間学校の美亜ちゃんと笹丘大毅のキス騒動〜っ!」

「やめてくれ……想像してまう……」


俺は頭を抱えて、こんちくしょうと涙を浮かべた。

よりによって笹丘とか、最悪だ。


ちなみに、過去②とは"未来の俺が"経験してきた過去のことを指している。

なので、俺のことではあるが、一応俺のことではない。しかし、ダメージは負った。


「笹丘大毅が、美亜ちゃんに片想いしてるのは知ってるよね?」

「ああ……」

「で、林間学校2日目のキャンプファイヤーで告るんだよ笹丘大毅が」

「うわ……」


いつかはやると思ってたけど、明日来るんか……!


「なまじ顔だけはいいからさぁ、当時すっごい盛り上がったみたいでね?笹丘大毅が告白したとたん、周りの生徒からキスのコールが起こったらしいよ」

「最悪……」


てか、美亜の返事は!?


「あー大丈夫大丈夫。美亜ちゃんは笹丘大毅の告白を断ってるはず。でも、当時の伊織くんにはそれが聞こえなかったみたい。離れたところに居たらしいから」

「なるほど……」


友人がちょっと目立つ部類なのを除いては、クラスでひっそり生きている俺が、そもそも美亜や笹丘といった華やかなメンツの近くに居るはずがない。


距離を取っているから、騒ぎは聞こえてきたが、美亜の声が拾える場所には居なかったと。


「でもそれならまだ良かったんだけど、不幸なことが起きたんだよねぇ」

「え、」

「キャンプファイヤーの火がね、()()()()()()()()()

「突然……?」


俺はロビーから見える、キャンプファイヤーの薪を見た。あそこに立ったら、人が小さく見えるんだろう。

格子状に何段も積み上げられた巨大なキャンプファイヤーについた火が、突然消えるなんてあるのだろうか……?


「夜だったから、あたり一面真っ暗になって」


花音は俺と同様に、外へと目を向けた。


「再び火がついた時、美亜ちゃんと笹丘大毅の周りで歓声が上がったらしいの」


歓声?


俺は、浅い呼吸をした。

肺に上手く酸素が送られなくて、息苦しかった。


「それって………」


花音の肩を掴む。縋るように。

俺は安心したかったのだと思う。


「ごめんね伊織くん。パパと話してたら、ママが来てさ。一旦中断したんだよねぇ。ほら、ママはやっぱり嫌じゃないこういう話は?それで、その後にパパにその続き聞こうと思ってたんだけど………」


俺はごくりと唾を飲んだ。

ま、まさか。ショックのあまり、未来の俺は………


「ソロキャンの準備で浮かれてて、私聞くの忘れてた!てへっ」

「ちゃんと聞いとけよぉぉ!!!」


俺は花音の肩を揺さぶった。えへへごめん〜と腕をバシバシされたが、まったく他人事のように言うのでムカっとした。

一番大事なとこじゃねーか!


「大丈夫大丈夫ー。私が来たからには虹色の林間学校の思い出を作らせてあげるよ!」

「お前の大丈夫は根拠がないんだよ!根拠がぁ!」



トラウマ療治といい、未来のヒントといい、ただ脳破壊されただけなんだが!

もう明日を生きるのが嫌だ………。




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