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13 各々の見解


『美亜は…今もずっと、そのままの認識でいる……?俺がこれから頑張ったら、変わる可能性を、期待していいか』

『ごめん、なさい』


………フラれたくね?


俺は両手で顔を覆って、うめいた。涙は我慢した。嘘である、ちょっと目尻に熱いものを感じた。


「フラれた……今度こそ、真正面からフラれた……本人に直接ごめんなさいされたぁ!」

「ぱ、パパ………」

「美亜にフラれた……」

「パパ、落ち着いて」

「明日からもう生きていけない……どんな顔すりゃあいいんだ……」

「パパ、一旦落ち着こう。絶対大丈夫だから」

「フラれたっつてるだろうがー!」

「大丈夫だって!」


花音は聞き分けの悪い子供に言い聞かせるように、俺の頭をヨシヨシと撫でた。

この年になって恥ずかしいから、やめていただきたい。安心感より、俄然、羞恥が勝つ。


「何を根拠に……!」

「ほんとに、大丈夫だってば!」

「だから、何でお前はそんな軽々しく『大丈夫』とか言うんだよ!おかげで俺は見事に散ったんですけど!?」

「多分何かすれ違ったんだよ、また!」


俺が完全に八つ当たりしていると、花音が仕方ない父親だなぁと言わんばかりの目を向けて来る。

やめろ、俺の立つ瀬がない。


「とにかく大丈夫だって。それより、伊織くんにはもっと考えなきゃいけないことがあるの!」

「俺が美亜にフラれたこと以上に考えることなんて何もないだろ……それが最重要事項だろ……」

「あー、面倒くさいなっ!だから大丈夫って言ってるでしょー!?理由は口止めされてるから言えないけど、とにかく大丈夫だって!」


口止めされてる…?


誰に?


俺が疑問を覚えていると、花音がタンッとテーブルを叩いた。


「それより、問題は明日」

「は?」

「伊織くんがますます美亜ちゃんから離れる原因となった悪しき事件が起きるんだよ」

「は、い?」


花音は未来人なので、その伊織くんは大人になった未来の俺を指しているのだろうが、いかんせんそんなの別人みたいなものだ。

全然分からない。


「そもそも伊織くんを取り囲む"過去"は、私が来てから……私が生きてる未来線の伊織くんが経験してきた過去と、だいぶ変化してるの」

「そうなのか?」


俺は目を瞬かせた。


「そうなんだよ。ええと、ああややこしいっ!私国語苦手なんだよ!うんと、今の伊織くんが生きてるこの世界を"過去①"として、私がやって来た未来の世界のパパが実際に経験してきた過去の出来事を"過去②"とするね」

「はい」


花音が俺に語ったのは以下の通りだ。

途中で頭がこんがらがったらしく、


「私は①の人間?②の人間?あーっ、わけわかんない!」


と某水曜日のバラエティ番組の芸人名探偵みたいなことを言い出したが、なんとか全部説明してくれた。


・まず、過去②では、林間学校の班は俺と美亜は別々だった。俺ではなく、美亜と笹丘が一緒の班だった。


「え。そうなのか!?」

「うん。これに関しては原因が分からないんだけど。確か美亜ちゃんから、伊織くんを誘ったんだよね?」

「ああ」


笹丘も予想していなかったらしく、美亜が俺と一緒に班を組もうと誘った後、慌てて俺を脅しに来たからな。

本来は笹丘と美亜が同じ班だった……?


「となると、美亜ちゃん側になんか変動要素があったのかな……?」

「ううむ……あっ」


思い当たることがあった。違うかもしれないが、それ以外に変動要素がない。


「俺が教室で話をしていたから?『見知らぬ美少女に逆ナンされた』って、俺が蓮に話してたから…?」


偶然にも、美亜の箸が折れてた気がする。

俺の話、聞いてたのか。


「えへへ。やだー、照れますなぁ。美少女だなんて、テレテレ」


初対面で俺を逆ナンしてきた当の本人は、頰に手を当てて身体をクネクネさせていた。

俺は無視して、顎に手を添えた。


「でもだからって、何で美亜が疎遠になってた俺を誘ったんだ…?」


花音は長い溜め息を吐いた。やれやれと手を上げた。


「かーっ、パパ私言ったよね?鈍感が許されるのは、ラブコメのイケメン主人公だけだって」

「こっちは、10分前にフラれたばっかなんだわ!勘違いできないんだよ!」

「だから、大丈夫だってぇ」


花音は軽い調子で俺をいなし、俺はむっと睨んだ。

何を根拠に。


・過去②では美亜と一言も会話せずに林間学校を終えた。


「マジぃ……?」

「マジですよ、ダディ。信じられませんねぇ」


同じ班でないにしろ、同じクラスなのだから少しくらい接点がありそうだが……

多分、俺が避けたのだろう。無駄に徹底してやがる。


「そして、林間学校の2日目が大事件なんだよ〜」

「な、何が起こるんだ……?」

「美亜ちゃんと笹丘大毅(だいき)のキス騒動」

「…………は?」


俺は、口を半開きのまま停止した。


思考が上手くまとまらなかった。


花音は、あれ?と可愛らしく小首を傾げた。


「だからぁ、美亜ちゃんと笹丘大毅のキーーーー」

「聞こえ"てるよっ!!」


勢いよく立ち上がった。

俺は目頭を押さえて、ふらふらとしゃがみ込む。


あーもう最悪だろ………過去②………




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