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プロローグ 高校を卒業した10年後の未来②

花音がやって来た未来の世界線。

先週は、高校の同窓会だった。

仲の良い蓮やその他の何人かとは定期的に会ってるが、やはり卒業して10年ぶりに会う顔ぶれの数の方が圧倒的に多かった。


幼馴染の美亜とも、久しぶりに会った。

相変わらず綺麗だった。高校の頃はどちらかと言えば可愛いという印象が強かった彼女だが、今ではすっかり大人の女性の魅力を兼ね備えていた。


周りの男どもは、嘆息したように彼女に視線を向けていた。

「いいよなぁ」

「七瀬さんまだ結婚はしてないよな?」

「バカ、俺らが相手にされるわけないだろ」

「そりゃあそうだ」


高校の時にもよく聞いた、周囲の彼女への懸想の声を聞き流して、俺はごまかすように酒を飲んだ。


……酒は弱いし、そもそもあまり好きじゃない。

だけど、飲んだ。どうせなら、俺の余計な頭の中まで忘れさせるくらいにと、友人の心配する声も聞かずに浴びるように飲んだ。



高校時代が、最後の分岐点だったように思う。

大学は離れたし、俺は地元を逃げるように県外に就職した。

美亜とはそれ以来会ってない。



それに結局、同窓会の会場内で美亜と話すことはなかった。


だけどーーーーーー






「伊織さん、もしもーし。私の話、聞いてます……?」

「えっ」


俺は慌てて意識を現実世界に引き戻した。キョロキョロとあたりを見渡して、自分が今騒がしい居酒屋の中に身を置いていたことを思い出した。

カラン、と自分の手の中に握ったグラスの氷が溶けて落ちて行った。


「もう、伊織さんたら」


くすくす、と隣で鈴を転がすような笑い声がした。

水馬(いと)だ。涼やかな一重が特徴的な、お嬢様系の美人。大衆居酒屋にはあまり似合わない気がしたが、彼女がこの店を選んだのだから、案外入り浸っているのかもしれない。


絃とは幼い頃はそれほど親交が無かった。

高校時代に彼女の方から男関係の相談を受けたのがきっかけだった。


それ以来親交を深めて、こうして彼女から誘われては、たまに会っている。


「さっきから伊織さんたら、とてもぼーっとして上の空ですけど。ここ最近、何かありましたか?」

「…………いや、別に」

「ふふ。元カノの目は誤魔化せませんよー?」

「俺は彼女居ない歴イコール年齢の男だぞ」

「まあ、ひどい。伊織さんたら。私の心を弄んでいらっしゃったのね……」

「やめろ、不名誉な」


絃は昔からこの調子だ。特別にリアクションが良いわけでもないだろうに、どうしてか俺をすぐに揶揄おうとする。


元カノ、というのは完全に間違っているわけではないが、少なくとも俺の認識ではそんな相手ではない。

高校時代に、コイツに頼まれてそのような役回りをしていただけだ。


「……で。本当に何があったんです」

「まだその話、続けるのか?」

「ええ。気になりますもの」


絃は興味深そうに俺を見てきたが、俺は無視してグラスに口をつけた。


……だって話したくないのに、俺が話す義理はあるんだろうか。


注文していた焼き鳥がカウンターに置かれて、ありがとうございますと俺は受け取った。机に皿を置くと、俺の手の上に絃が手を重ねた。俺がどかそうとするが、絃は俺より細い指で、俺の手を机に縫い留めた。


俺は眉をひそめる。


「おい、何の真似だ……」

「そういえば、伊織さんの高校。先週が同窓会なんでしたっけ」

「……何で、知ってんだよ」

「先日伊織さんのご実家に伺った時に、伊織さんのお母様……小夜さんに聞きましたから」


あんの母親。余計なこと言いやがって。

ていうか、俺の実家に未だに行ってんのかよコイツ。

まあ、別にいいけど。

未だに実家住みのコイツからすれば、それなりに近所の俺の実家は散歩コースなのだ。


「………会ったんですか、美亜さんと」

「………」


絃が俺の目を見上げる。儚げな目元は、さらに細くなっていた。こちらの余念を許さないように、事実を追及してくる視線だった。


はあ、と溜め息を吐いて、俺は強引に絃の手をどかした。机に肘を立てて、頭を抱えた。


「ああ、会ったよ」

「話はしました?」

「…………」


俺は押し黙った。

どうして、コイツに言わなくちゃいけない。


話はしたか、だって。

まあ、したんだろうな。

そうだな、したよ。


したけど、でもーーーーーー。


俺は頭を深く抱えて、もう一度息を吐き出す。

グラスで冷えた手で、髪をくしゃりと掴んだ。


自分の軽率な行いを悔いて、行き場のない思いに心が暴れる。

どうして酒に弱いくせに、あの日俺は……。


俺の手をもう一度誰かが取った。俺と違って、体温の感じる手だった。

もちろん、隣の絃の仕業だ。

さっき払ったばかりなのに、懲りない奴だなと溜め息を吐いた。


俺は机に下ろしていた視線を、隣に向けた。

おい絃、と見上げると、絃は俺を真っ直ぐと見ていた。


「ねえ、伊織さん」



いつも俺を揶揄っては笑っているような彼女には、到底似合わない真面目な顔だった。

俺は小さく目を見開いた。


「いつまでも初恋を追いかけるのもいいですけど、ここらで区切りをつけて……隣の恋に気付きませんか」



そして、彼女はこんなことを言ってきた。



「伊織さん。そろそろ、私と一緒になりません。もちろん、結婚を前提に」





何でこの主人公は新章開幕早々、プロポーズされてんの?

モテるの?モテるんだな。そうなんだな。許さん。


ブックマーク、⭐︎評価、リアクションどれでも大歓迎です。それがあると、作者はすごく嬉しくなります。是非是非。

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