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復讐を決意した俺は、無音銃で犯罪組織と戦う  作者: 一条イチ
第二章

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親友と友だちと恋人

 夕飯と風呂をすませ、英語の単語帳、速単必修編を読んでいると桜井からラインが来た。今から公園に来てくれとのこと。


 午後11時、いつもの公園。最近やや肌寒くなってきた。パーカーを羽織ってきて正解だった。

 桜井はベンチに座っていた。


「まー座れよ」


 俺はやや距離をあけて桜井の隣に腰かけた。


「俺を避けんなよ」


 桜井は俺の目をまっすぐ見据えた。その視線に俺は少したじろいだ。


「だって俺はお前を……裏切ったんだぞ」

「俺が外村さんを好きって言ったから遠慮してたんだろ?」


 俺は何も言えなかった。確かに桜井への遠慮もあった。だが一番の理由は傷付くのが怖かったから。


「最初は正直ショックだった。でも今じゃ自分でも驚くくらい、祝福してやりたい気分なんだ」


 桜井は少し切ない笑みを浮かべた。しかしそれはおそらく嘘偽りのない笑顔。


「で、その……し、したのか?」


 急にもじもじと視線を泳がせながら桜井は尋ねた。


「ああ」

「ぐああああ!!」

「自分で聞いといてダメージ受けんなよ」


 もちろん多くは語らない。俺は紳士だからな。


「このやろぉぉ!!」


 桜井は俺の頭をぐりぐりと撫でた。

 島本さんが死んで以来、桜井と話すことは少なくなった。茜と付き合ってからはなおさらだ。でもようやく、桜井の前で心からの笑顔を作れた。


「……纏、外村さんのこと絶対幸せにしろよな」

「もちろん」


 茜を一生かけて幸せにする。その自信はある。


「……ま、浮かれてばかりじゃいられないな」


 俺がそうこぼすと、桜井も一転表情を引き締めた。

 九六式は持ってきている。この時間帯のこの公園、大和や大森との戦いを思い出す。


「そうだな。俺たちは島本さんの仇を取らなきゃならねえ」

「ああ。大和も大森も神崎も、ぶっ殺す」


 桜井と目を合わせハイタッチを交わした。




 昼休み。茜と二人屋上に。

 今日もチョコチップを二人で食べた。

 軽くキスをして、教室に戻ろうとしたときに茜に止められた。


「ここでしちゃいます?」


 茜はその場にしゃがんで、俺を上目遣いで見上げた。


「いやダメだろ!?」

「なんでですかー、どうせ誰も来ないのに」


 この屋上に来る可能性があるとすれば桜井だけだ。だがあいつはもう来ない。俺と茜がいる限り。


「そういう問題じゃ……」

「いーからいーから」




 放課後、父さんから電話がかかってきた。


『今日は残業で終電になりそうだ。夕飯は先にすませておいてくれ』


 父さん、最近忙しそうだな。

 でも父さんがいないということは茜を家に呼ぶチャンスだ。しかし茜は部活がある。2時間待たなきゃならない。

 ドトールにでも行って時間を潰すかと考えていると、白沢と目が合った。


「黒木君、今日は物理にしましょうか」


 白沢が持ってきたのは物理の薄い参考書、物理のエッセンス。

 俺が返事を返せずにいると、白沢は俺の顔をじっと見てきた。


「もしかして外村さんに遠慮しているのかしら。私たちは勉強をするだけよ、何もやましいことはないでしょう?」

「そ、そうだな。よろしく頼むよ」


 白沢に勉強を教えてもらってたと言ったら、茜は妬いてくれるだろうか。


 白沢に勉強を教えてもらうとき、俺はいつもドキドキしていた。だが今日はいたって平常心だ。

 自分でも現金なやつだと思う。


「物理のエッセンスって正直理解するの難しくね? 漆原に変えようと思ってんだけど、どう思う?」

「参考書をころころ変えるのは、落ちる受験生の典型的パターンよ」

「いや確かにな……。でも俺はもう漆原と心中するから!」

「あなたは漆原のなんなのよ」


 いやいや、ドキドキしてちゃ茜に申し訳ないからな。振り向きざまタッチももう封印だ。

 いやいや、誓って故意じゃないけどな。


「そういや白沢、俺と茜が付き合い始めたって打ち明けたとき、あのとき茜になんて言ったんだ?」

「『したの?』と聞いただけよ」

「てめっ、何聞いてんだよ」

「私は何をしたかなんて言っていないのだけれど?」

「言ったも同然だろうがよ」


 まったく桜井といい白沢といい、思春期の少年少女はそれしか頭にないのかね。俺が言えた義理じゃないけどな。


「桜井君とは仲直りしたのね」

「ああ、普通なら嫉妬にまみれてもおかしくはない。けどあいつは俺を祝福してくれると言った。とんだ完璧超人だよ」

「彼ならそうでしょう」

「さすがに桜井もショックだとは言ってたけどな。そりゃ俺も逆の立場ならそうだ」

「……私も思うところはあるのだけれど」


 そう言って白沢は目を伏せる。


「何にだよ?」

「あなたには教えてあげないわ」


 白沢はつんとそっぽを向いた。




 6時、白沢と道場に向かった。

 部活を終えた茜と桜井が出てきた。


「桜井君、邪魔者は消えましょう」

「そうだね。それじゃ纏、外村さん、あとはごゆっくり」


 そう言って白沢と桜井は去っていった。

 茜は俺の横に並び、じっと俺の顔をのぞき込んだ。


「白沢先輩とずっと一緒にいたんですか?」

「ああ、今日は物理を教えてもらってた」


 それを聞いて茜は頬をふくらませる。


「纏先輩、やっぱり巨乳好きなんでしょ!?」

「だから俺はおっぱい星人じゃないって何度も言ってるじゃねーか。白沢には純粋に勉強を教えてもらってただけだ」

「信じられませんっ! 白沢先輩は綺麗で頭よくて優しくて……おっぱい大きくて。あたしがもし男だったらたぶん好きになっちゃうし」


 茜は瞳を潤ませながらまくし立てた。

 ごめん、茜。君を傷付けるつもりはなかったのに。


「わかった、もう白沢に勉強を教えてもらうのはやめにする。俺が好きなのは茜だけだからな」


 涙と鼻水を流しながら茜は黙って聞いていた。


「でもさ、茜、最近大きくなったんじゃないか?」

「はあ!?」


 茜は怒声を上げてしばらくして、少し心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

 実際茜の胸は1か月前と比べても大きくなっている。大きくなったといってもせいぜいAからBだが。


「き、気付きました?」

「そりゃ気付くだろ」

「あーやっぱり女性ホルモンってあるんですね、纏先輩!」

「これからもっと大きくなるかもな」

「えー、でも頑張ります」


 茜は目と鼻をこすりながら、かわいらしく微笑んだ。

 機嫌直してくれて一安心だ。


 でも、少し情緒が不安定だと、一瞬思った。




 茜とともに俺の家に帰ってきた。


「なあ、俺のこと纏って呼んでみてくれよ」

「ええっ!? 呼び捨てってことですか!? 無理ですよそんなの!」

「いいからいいから」

「ま、纏……」


 そう言った茜の顔は真っ赤だった。


「やっぱり無理ですー!」

「じゃあ今度はくん付けで」

「……ま、纏くん。うう、纏先輩は纏先輩ですよ!」

「わかったわかった、そのうちな」


 リビングで二人分のコーヒーを淹れて部屋まで持ってきた。


「ねえ、纏」

「うわっ! 不意打ちやめろ! こぼしそうになったじゃねえか!」

「纏先輩が頼んだんじゃないですか。ささ、座って座って」


 言われたとおりにベッドに腰かけると、茜は俺の目の前に立って冷めた目で見下ろした。


「今日はあたしが上。いいでしょ、纏?」

「は、はい……」


 まだ怒ってるじゃねえか。

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