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復讐を決意した俺は、無音銃で犯罪組織と戦う  作者: 一条イチ
第一章

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19/30

血塗られたモーニングスター

 島本さんと鳥谷さんが帰ってきたのは午前2時ごろ。顔は赤く、少しふらついている。


「最高だったよ」


 鳥谷さんはピアニッシモに火をつけ、満面の笑みで言った。


「あいちゃんに会えたんですか?」

「ああ、もう思い残すことはないさ」

「めったなことを言うんじゃねえよ」


 島本さんは鳥谷さんの背中を叩いた。鳥谷さんは苦笑いして頭をかいた。


 男4人、四畳半の部屋で床に就いた。布団は2つしかなかったので、そこに俺と桜井と鳥谷さん、島本さんは畳に直に寝た。




 そして午後11時。俺たちが向かったのは、やけに静かな人通りのない路地。

 目の前には古びた雑居ビル。ここが組織の総本山。

 金田が父さんを撃ったあのときから始まった俺の戦い。それが今日終わる。思えばまだ1か月も経ってないんだよな。

 ここで金田を、神崎を殺す。そして必ず生きて帰る。父さん、白沢、外村にまた会えるように。


「最近ちょろちょろ嗅ぎ回ってるネズミがいると思ってたら、こういうことかよ」


 その言葉とともにビルから出てきたのは、金髪、長身のスーツの男、大和光流。ライトニングガンを持った大和は、けだるげな表情でタバコの煙を吐き出した。


「俺がいるかぎり、何人たりともここは通さん」


 一転、大和は真剣な表情となった。

 お前を倒さなければ神崎にはたどり着けないということか。

 大和は強い、尋常じゃなく。俺の動きを完全に見切って銃弾を避ける男、タイマンじゃ絶対に勝てる気がしない。だがこっちは4人だ。いくらお前が強かろうと、さすがに分が悪いだろ?

 他の組織の連中、大森や金田、米沢が出てくる前に一気にかたをつけてやる。


「大和クン、さすがに4対1じゃあな。俺が力を貸してやるよ」


 現れたのは2mを超える邪教の神父、ガブリエル。今日はスーツではなく、足元まで丈がある黒い上着を身に着けている。

 その手に握られているのは黒光りした鎚。棒の先端の鉄球にいくつもの棘がついた、モーニングスターと呼ばれる武器だ。それをあの大男が振りかざすとなれば、威力は想像に難くない。

 しかし、まさかガブリエルが自ら出てくるなんて。


「ガブリエルさん、あなたにご助力いただけるとは。恩に着ます」


 ガブリエルに近接戦闘を挑むのはあまりに危険だ。あの鎚をガブリエルが使えば、たやすく人を殺せるはずだ。そして生半可な攻撃じゃ傷を与えることすらできないだろう。


 有効なダメージを与えられるのは俺の九六式のみ。だがそれはガブリエルも大和も承知の上だろう。だから大和が常に俺をマークするはず。

 拳銃なら島本さんのグロックもある。だがサプレッサーのない拳銃を使うことはできない。警察に見つかったらすべてが水の泡になるからだ。

 島本さんと佐藤さんならサプレッサーを入手することも可能だろう。しかしおそらく九六式と比べると消音性能は雲泥の差。


 ガブリエルは上着のボタンを外し、薄ら笑いを浮かべた。


「ホストと神父が俺たちを止められるってのかよ!」


 まず口火を切ったのは鳥谷さん。すかさず取り出したバタフライナイフを大和に向けて突き出した。


「そんなもんで俺を殺せると思ってんのかよ、おっさん」


 大和はタバコの煙を吐き出し、鳥谷さんの攻撃を易々と避ける。隙が生まれた鳥谷さんにガブリエルがモーニングスターを振り下ろした。まがまがしい鉄球を鳥谷さんも紙一重で回避した。

 あれをまともに受けたらひとたまりもない。やはりガブリエルは俺の九六式でないと。


 九六式の銃口をガブリエルに向ける。だがそれよりも先に、大和がライトニングガンを俺に向けていた。大和のライトニングガンから放たれた電撃が俺に直撃する。

 動きの止まった俺に、大和が左手でナイフを取り出して向かってくる。

 くそ、避けられねえ。


 だが大和のナイフが俺を突き刺そうとする直前、島本さんが身を挺して俺をかばった。大和のナイフが島本さんの左肩に刺さったが、島本さんは蹴りを繰り出した。

 しかし大和はその蹴りをかわしすぐ後ろに下がった。桜井が顔面を殴ろうとしたが、大和はそれも簡単にかわす。

 そして大和は新しいタバコに火をつけた。そんなに余裕があるとでも言いたいのか? 気に食わねえ。


「大丈夫ですか!? 島本さん!」

「ああ、なんのこれしき」


 本当に何もなかったかのように言う島本さん。大和と初めて戦ったときも、ガブリエルに捕まったときも、俺を窮地から救ってくれた。島本さんがいたから俺はここまで生き延びてこられたんだ。

 そして本格的に島本さんと戦うのは今日が初めてだ。この人がいれば大和もガブリエルも倒せるはずだ。


「おいおい、俺を忘れるんじゃねえよ」


 今度は桜井に向けてガブリエルの鎚が振り下ろされる。だが桜井はそれを間一髪で避けた。そしてガブリエルにローキックからの中段突きを繰り出すが、ガブリエルはそれをものともせず、桜井に前蹴りを放った。

 それを受けた桜井は大きく吹っ飛ばされた。文字通りの一蹴。


「あんたこそ俺を忘れてんじゃないのかい」


 鳥谷さんがガブリエルのわき腹にナイフを突き刺した。それとほぼ同時に、体勢を立て直した桜井がガブリエルの顔面を殴った。

 いっぽう、島本さんは大和にナイフを振りかざす。大和はそれを避けたが、俺をライトニングガンで撃てる体勢じゃない。

 今だ、絶好のタイミング。九六式をガブリエルに向けて引き金を引いた。

 放たれた銃弾――.32ACPがガブリエルの胸を貫いた。


「……ああ~? 効かんねえ、そんな豆鉄砲」


 この連続攻撃、そして銃弾を受けてまったく効いていないだと? 確かに大森にも効かなかった。こんな鎧のような筋肉をまとった連中にはやはり.32ACPは威力不足なのだ。

 だがしかし大森も二発目はダメージを与えられた。そして今回もどんぴしゃで当てられたはずだ。やはり大森より上だと言うのか、この鋼の肉体は。


「よそ見ばっかしてんじゃねえよ」


 その声と同時にライトニングガンの電撃が俺の体を突き抜ける。ちくしょう、何度受けても慣れやしねえ。

 意志とは関係なく硬直してしまう体。だが大和が次の攻撃をしかける前に、なんとか体を動かし大和に向けて引き金を引いた。しかしそれを大和は避け、俺の右腕にナイフを突き刺す。

 激痛が走る右手から九六式がこぼれ落ちた。地面を転がる九六式を大和は蹴りとばした。


 やめろ。俺は桜井や島本さんとは違う。俺には九六式がないと戦えない。

 ふたたび突き出される大和のナイフ。今度は左腕をかすったが、俺はそのまま九六式に向かって走り出した。


 なんとか九六式を拾い上げたが、振り向くと俺に向かってガブリエルが突進してきた。それを桜井が止めようと殴りかかったが、ガブリエルは意にも介さず弾き飛ばした。島本さんもガブリエルの腕をナイフで切りつけた。

 だがそれでもガブリエルは止まらない。


 もうどうにもできなかった。モーニングスターが俺の体にぶち当たる。そして俺の体は宙を舞い、コンクリートの壁に叩きつけられた。

 痛いなんてもんじゃない。この世にこれ以上の痛みがあるのかってくらいだ。どこかしらの骨が折れたのがわかる。モーニングスターの鉄球の棘には赤い血がしたたる――俺の血が。

 そしてまたガブリエルはその鎚を振りかざす。


 それを受ければ、俺は確実に死ぬ。


「やめろぉぉぉぉ!!」


 その叫びとともに鳥谷さんがガブリエルの背中にナイフを突き刺した。だがガブリエルは振り向きながら左肘で鳥谷さんを殴った。そして体勢を崩した鳥谷さんに向けて、そのまま横に、右手に持ったモーニングスターを振り回した。

 それをまともに受けた鳥谷さんの体は吹っ飛び、地面を転がった。

 それに追い討ちをかけるように、ガブリエルはモーニングスターを両手で握り鳥谷さんの顔面に振り下ろした。


 モーニングスターの先端の鉄球が鳥谷さんの顔面を直撃した。

 骨が砕け散り、肉が裂ける音がした。嫌な音だった。


「鳥谷ぃぃぃぃ!!」


 地面に飛び散った血。顔はそれが人間であったことすらわからないほど赤くぐちゃぐちゃに。溢れる血に混じって、割れた頭蓋骨からは脳髄。


 鳥谷さんが死んだ。

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